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どうなる?未成年者が起こした交通事故の責任

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はじめに

危険運転致死罪の導入等によって交通事故の発生件数自体は減少しつつあると言われているものの、TVやネットのニュースから流れ聞こえてくる悲惨な交通事故はまだまだ後を絶たない。

「幼い子供達の列に車が突っ込んだ」だの、「幼子を連れた妊娠中の女性が轢かれ、母子ともに死亡した」なんていうニュースを読み上げるアナウンサーの声には耳を塞ぎたくなるものだ。

そういった悲惨な交通事故に関するニュースの中で、加害者が無免許の未成年だったケースや、運転免許証を取得したばかりの未成年だったケースが多いことが頭に残る(メディアが積極的にそれらを取り上げているからかもしれないが)。

日本の法律では満18歳で普通自動車の運転免許を取得することができる。
※二輪車のケースは後述

高校卒業を機に、自動車教習所の講習に足しげく通い、晴れて免許を取得。
自分の写真が貼られた免許が嬉しくて嬉しくて、すぐに親の車で遠出をする。
すると、途端に自分の世界が広がったような感覚を覚え、車のトリコになった。
・・・なんて人も少なくないハズ。

しかしながら、免許証を保持しているとはいうものの、運転初心者なうえに舞い上がっている彼らの運転には危険がつきまとっているのだ。

ましてや、18歳にも満たない無免許の少年が、運転技術や交通ルールを学ばないままに遊び半分で運転する自動車は、まさに「走る凶器」でしかない。

翻って、大人ではなく、自身の行為に対する責任が限定されている未成年者は、自身の過失で起こした交通事故の責任をどうやってとるのだろうか?

また、その交通事故の被害者は、その事故で被った損害を誰に請求すればよいのだろうか?

そこで未成年者が人身事故の加害者となった場合の、その未成年者に生じる民事(損害賠償)責任についてまとめた。

未成年の定義と未成年者の不法行為

少年法ではその第2条1項で「少年」を「二十歳に満たない者をいい、「成人」とは、満二十歳以上の者」と定義している。次いで、同2条2項にて「保護者」を「少年に対して法律上監護教育の義務ある者及び少年を現に監護する者」としている。

言うまでもなく「20歳未満は未成年(=少年)であり、その保護者(=親)は自身の子供を監督し、保護し、教育する義務がある」ということだ。

そして、未成年者の責任者能力については、民法第712条で「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」とされている。

ここでポイントとなるのが「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったとき」の判断基準。

以下で、事故を起こした未成年者の年齢や運転資格状況別に解説する。

交通事故の加害者が18歳以上20歳未満の場合

自動車保険の多くは20歳未満でも加入できる。20歳未満が加入できない保険であっても、親が保険契約者(保険料を支払う者)、子である未成年者を記名被保険者(保険の対象者)とすることができる。

また、1台の自動車を複数人の家族が利用する場合などは、運転者年齢条件(運転者の年齢を設定する特約)に設定している下限の年齢を下げることで、未成年者が交通事故を起こした場合のリスクをカバーすることができる。

他方で、18歳以上で免許証を保有している(=運転能力がある健康な者と認めらているため)のであれば20歳未満の未成年者であったとしても、少年法で言うところの「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えて”いる”」と判断されるのが一般的であり、自身の過失で起こした不法行為の責任は、自分自身で負うこととなる。

よって、交通事故(=不法行為)を起こした加害者が未成年ながら18歳以上であれば、事故の責任は加害者本人が負わねばならず、事故の被害者は自身が被った損害を加害者本人に請求することとなる。そして、未成年者の加害者がなんらかの自動車保険に加入しているケースであれば、成人で自動車保険に加入していた場合と同様に、被害者が被った損害は自動車保険会社が補償することとなるのだ。

※ただし、加害者の自動車保険が自賠責保険のみで任意保険未加入の場合は、自賠責保険が物損事故を補償対象外としていることから、被害者車両の修理代等は相手方に支払わせることができない場合もある。

さらに、人身事故の場合では、自賠責保険の補償限度額が死亡した場合で「3000万円」、傷害を負った場合で「120万円」、後遺障害を負った場合は等級に応じて「75万円〜4000万円」とされているため、被った損害の状況によっては、治療費や障害者用のバリアフリー化に伴う家屋改造費等、本来、損害賠償として請求しうる全額が補償されない場合もある。

※未成年の加害者がアルバイト等の仕事の一環として自動車を運転していて起きた交通事故の場合、その加害者が成年であった場合同様、民法第715条の「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」とする使用者責任に則り、使用者(雇い主)が事故の損害賠償責任を負担することとなる。

交通事故の加害者が18歳未満の場合

万一、18歳未満の未成年者が自動車を運転して起こした交通事故であった場合、上述したそれとは状況が異なってくる。

加害者が18歳未満となると、その加害者は当然に無免許であり、無免許の運転者が交通事故を起こした場合は一切の理由を問わず、重過失と判定される。
成人の場合でもあっても、自身の重過失で人身事故を起こした加害者は「交通違反」や「反則金の納付」では済まされず、前科のつく「犯罪」として扱われ、「罰金の支払い」や、事故被害の度合いによっては危険運転致死傷罪等に問われて懲役刑が下されることもある。

未成年者も家庭裁判所での審判となり、保護観察処分や鑑別所送致、少年院送致のいづれかは免れないだろう。
※14歳未満の場合は、児童福祉法に基づいて児童自立支援施設(旧称:教護院)に収容される。

一方で、この交通事故の被害者に対する補償責任はどうなるのだろうか。

18歳未満の未成年者が加入できる自動車保険はあるはずもなく、ましてや自動車保険会社を含む損害保険会社は犯罪行為に基づく不法行為の損害を補償しない。従って、この場合、否応なく保険は適用外となる。

この交通事故で発生した損害賠償責任は、未成年者本人と保護監督義務があるその親が負う(未成年者には支払いを全うする”責任能力はない”ため、実際の賠償金の負担者は親となることがほとんど)こととなるのだ。

さらに、その未成年者に自動車を貸した者も自賠責法に定められる運行供用者責任に問われ、損害賠償を負担する義務を負う(貸与ではなく窃盗等であればこの限りではない)。また、事故を起こした際に同乗者がいた場合は、その同乗者およびその同乗者もまた未成年であった場合は、その同乗者の親が責任を負担しなければならない。

交通事故の加害者が二輪車を運転する未成年だった場合

本稿は主に未成年者が自動車を運転して起こした交通事故について書かいてきたが、法律上、16歳以上になれば原付(原動機付き自転車)および自動二輪の運転免許証を取得することができる。

そして、二輪車の交通事故に伴う損害を補てんするバイク保険は、保険料が高くなりがちではあるが、16歳から加入できるものがほとんどであるため、16歳以上20歳未満であっても、運転免許証を保持していてバイク保険に加入していれば、その未成年者の民事上の責任(損害賠償責任)は、自動車の場合の18歳以上20歳未満のそれと概ね同様となる。

ただ、自動車に比較して手が届きやすい原付や自動二輪の場合、遊び半分で背伸びをした未成年者の無免許運転が横行していて、実際に彼らが起こす事故は非常に多い。

16歳以上でも無免許であったり、そもそも16歳未満の運転者が原付や自動二輪による交通事故を起こして、他人を死傷させ、さらには捕まることを恐れて逃亡(ひき逃げ)等しようものなら、家族ともども一生を費やしても払いきれないような損害賠償を請求され、文字通り「一生を棒に」振りかねない。

運転免許証の取得を志す未成年者本人のみならず、その親も、これらのことをしっかりと肝に銘じなければならない。

 

本記事は、2014年02月21日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
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