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なぜ原油安が世界の株価下落要因となるのか①

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原油価格が大暴落

2014年半ば、ガソリンや火力発電燃料、果てはプラスチックの原材料ともなる原油の価格が突如として大暴落を開始した。2014年6月までは1バレル=90ドル台半ばで推移していたのが、同7月頃から値を下げ始め、あれよあれよという間に足元では30ドル台まで下落してしまったのだ。

※バレルとは、石油製品の計量に用いられる単位で、1バレル=42ガロン=約159リットルとなる。語源は「樽」。

以下のチャートは、世界の原油価格の指標として注目を集めているWTI(West Texas Intermediate、米国南部産出原油の呼称)原油先物価格の推移を表したものだ。

wti20151229

※画像はクリック・タップで拡大

画像引用元:CME Group|LIGHT CRUDE OIL FUTURES, NYMEX(3月限・月足)

 

このチャートに描かれているのは2011年から2015年の価格推移である。ぱっと見でも、ある一点(2014年7月)から”カクン”と値崩れを起こしているのがお分かりいただけることだろう。

原油価格は、実にたった1年半のうちに約1/3になってしまったのだ(参考高値:2014年7月1日94.07ドル→参考安値2015年12月21日35.35ドル)。

 

さて、一見すると、原油価格が下がることは世界経済に大いにプラスに働くことだと思われがちだ。確かに、”世界経済の基礎燃料”たる原油が下がることで、個人も企業もコスト安の恩恵を受けることが出来るハズ。

数年前に”留まる事を知らない原油高”が、個人の生活や企業の生産活動をアレだけ苦しめたのだから、安くなればその逆に、多くの恩恵を享受できると思うことは自然なことだろう。

ただし、原油が暴落した今の現実世界では、この原油安が「世界経済の低迷要因となっている」と騒がれている。

米国株式市場を始め、世界のどこかでその国の株価が下落すると、「原油価格低迷」が下落要因として真っ先に挙げられるようになってきているのだ。何故だろうか。

 

原油価格が暴落した理由

まずは原油価格が暴落した背景から見ていこう。結論から言えば、問題は需要と供給の関係にある。

物の値段は需要と供給のバランスで決まる。物が余っていれば、価格は下がる(需要<供給)。逆に物が足りなくなれば、価格は上がる(需要>供給)。

現在は原油の供給が増えているにもかかわらず、中国を始めとする新興国経済の失速で需要が減退している。それが原油安の要因である。

 

■米国のシェールオイル:供給増要因
2014年後半、原油価格が値を崩し始めた頃にさかんに言われていたのは、原油にかわる代替エネルギー(太陽光や風力、バイオエタノール等など)の台頭である。

その代替エネルギーの中でも特に原油価格の下落にインパクトを与えたのが、米国やカナダのシェールオイル・シェールガス革命だ。

シェールオイルというのは、硬い岩盤の中に存在する原油のこと(石油の一種)。その存在は遥か昔から知られていたものの、いかんせん、それをエネルギーとして利用するとなると、多大な採掘コストがかかってしまうために採算がとれず、見向きもされていなかった。

ところが、2000年台に入って原油価格自体が急騰したことで、相応の採掘コストを支払ってでもシェールオイルを利用すれば、より高い金を払って他国から原油を買ってくる必要がなくなった。つまり、採算があうようになったわけだ。

これを弾みにシェールオイルの開発はどんどん進み、開発が進んだことでより採掘技術が進歩して、採掘コストも徐々に下がっていった。そうして、シェールオイルの開発を進めた米国は、中東の名だたる産油国を抜き去り、2014年の世界1位の産油国となった。

ついには2015年12月、米国議会で、およそ40年ぶりに原油の輸出解禁が決定されている。これは世界の原油市場から見れば、当然の”超”供給増要因となる。

 

■OPECの減産見送り:供給増要因
中東の産油国12カ国が加盟するOPEC(Organization of the Petroleum Exporting Countries:石油輸出国機構)は、中東産原油の生産調整等を通じて、団結して加盟産油国の利益を保護する機関。

通常、原油価格がOPECの意図しないところで下がれば、OPECは産油量を減産して供給を絞り、価格上昇を狙う。

ところが、ここ最近のOPECは原油価格の下落が本格化してもなお、減産を見送りし、供給過剰の状態を続けている。まことしやかに聞こえてくる理由は2つ。

1つ目は、原油価格下落時には生産量を絞っていたにもかかわらず、2000年初頭の原油価格急騰時には利益欲しさに明確な減産をしてこなかったため、国や王族は大いに富んだものの、いざ原油価格が下落してもそれまでの高収入を維持したいがために減産せず、価格下落を販売増で補おうとしている-というもの。

2つ目は、急激に台頭してきたシェールオイルへの対抗策として、意図的に原油価格を低迷させ続け、一般的な原油よりも高い採掘コストがかかるシェールオイル開発を息切れさせて、シェールオイルを原油市場から退場させようとしている-というもの。

いずれにせよ、OPECは原油価格がここまで下落してなお、減産には舵を切っていない。

 

■イランの経済制裁解除:供給増要因
イランは紛争が事絶えない中東において抑止力を持つべく、禁断の核開発に手を染めたために、先進諸国から経済制裁を受けている。各国が連携して、イランとの貿易取引やイランへの投資を制限しているのだ(2016年1月現在)。

この制裁で経済が疲弊したイランは2015年7月、欧米主要国と核開発施設への査察受け入れ等を含む、開発抑止交渉に合意。これによって、イランは水面下で勝手に核兵器を作れなくなった。

平和的解決への双方合意により急速に台頭してきたのが、イランに対する経済制裁解除見通しだ。イランへの制裁が解除されれば、これまで制限されていた同国産原油の輸出が再開されることとなろう。

土地柄、イランは指折りの一大産油国である。そのイラン産原油が市場に復活することは、紛れもない供給増要因だ。

 

■中国を始めとする新興国の経済停滞:需要減要因
一方で、これまで多大な資源需要を生み出してきた新興国経済には、顕著な停滞機運が立ち込めている。

新興国筆頭で、世界の資源を”爆食”してきた中国は、実態経済とかけ離れた過剰な投資がいよいよ焦げ付きを見せ始めている。例えば過剰投資の中心にある不動産市場では、雨後の竹の子の如く各地に商業施設やマンションを乱立させた結果、実需がまったく追いつかなくなったのだ。商業施設に客は来ず、マンションは一向に売れない。

不動産を建設しても採算が合わないのだから、当然、新たな不動産の建設は手控えられる。そうすれば、鉄鋼を始めとする建設資材はいらなくなるし、それを運ぶエネルギーも、居住・利用する人達が消費するエネルギーも必要なくなる。

世界の需要の担い手たる中国の低迷の影響は非常に大きい。

その他の新興国でも規模の違いはあれど、同じような事象が起きている。例えば目覚しい発展を遂げた東南アジア地域では、各国とも、都市部は近代的なビルが立ち並ぶようになった一方で、これが地方経済に波及していない。

一部に富裕層が生まれて新たな需要が生じたものの、これが大勢に波及しない。どの国も国民の生活レベルは飛躍的に底上げされたものの、概ね需要は一巡し、新たな成長ドライバーがないまま、国全体では過剰投資や消費の停滞が経済成長を妨げているのだ。

 

上述した点が絡み合った結果、原油市場における供給は需要を遥かに上回る規模となり、先行きでもその受給バランスが変わらないとの見通しが多勢となって、大きく値を崩したわけだ。

因みに価格下落のメカニズムは、株式等の他の金融商品と同様だ。「いずれ値下がりする」と見込んで買い手が買い控えれば、売り手のうち早く売りさばきたい者が他者よりも安値を提示する。

もしその時点で、売り手側も多数が「いずれ値下がりしてしまうかもしれない」と思っていれば、自身も早く売りさばくために安値に追随する。これが雪崩式に起きると、安売り合戦となるわけだ。

原油市場で起きた価格暴落は、これが1年半かけて続いた結果である。

 

なぜ原油安が世界の株価下落要因となるのか②へ続く

 

本記事は、2016年01月04日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
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prof Kasiko編集部

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