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なぜ原油安が世界の株価下落要因となるのか②

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なぜ原油安が株価下落要因となるのか

原油市場は、「なぜ原油安が世界の株価下落要因となるのか①」で解説した理由で暴落し、わずか1年半という短期間のうちに、価格は1/3になってしまった。

さて、ではなぜ原油価格の下落が世界各国の株価下落の要因となっているのだろうか。普通に考えれば、原油価格の下落はコスト安につながるハズなのに、である。

とりわけ米国株式市場では、WTI原油価格の上下動に株価が引っ張られる格好となっていて、株価が下落すれば「下落要因は原油安」と言われることが多くなっているのは何故か。

 

こちらも結論から言えば、答えは1つ。
資源バブルの崩壊に伴う、金融危機再来不安が頭をもたげているため」である。

 

リーマンショックを彷彿とさせる金融危機再来リスク

2008年9月、世界経済全体をどん底に突き落とした金融危機「リーマンショック」が起きた。これにより、欧米のみならず日本の景気も一気に冷え込みを見せたことは、誰の記憶にも新しいハズ。

リーマンショックの要因は、欧米各国の不動産バブルに乗じて拡大したサブプライムローン証券が同バブルの崩壊に伴って値崩れを起こし、金融機関が連鎖倒産したためであった。

その後、日本も含めた主要各国の中央銀行は、リーマンショックによってどん底に落ち込んだ経済を支えるため、いわゆる金融緩和策を一斉に実施した。

 

結果的に世界中がカネ余り状態となり、行き場を失った投資マネーは、高価格を維持していた原油や鉄鋼、穀物等といった資源に向かう。

直接的に原油相場や穀物相場に投資する金融機関やファンドもあれば、将来的な利益獲得を目論んで、資源インフラ開発プロジェクトに投資するものもあった。

当時は「原油相場を始めとする各資源価格は、当面高値を維持する」との見通しが多勢を占めており、投資マネーが集まることも相俟って、世界各地で鉱山開発や油田開発プロジェクトが目白押しだったのだ。

そこへ2014年夏から始まった原油価格の暴落が直撃する。

※資源の代表格である原油安に連れ安する格好で、鉄鋼や穀物等の他の資源相場も大きく値を崩している。

 

直接的に資源相場に投資していた金融機関やファンドは大きな損失を被り、現に、既にいくつかの小規模投資ファンドは破綻に追い込まれ、破綻こそ免れたファンドもその規模を大きく縮小している。

また、資源開発プロジェクトはその多くが撤退や停止に追い込まれているのが現状だ。何せ、原油が1バレル=100ドル前後で推移していた頃に、「将来的にも同程度の価格かそれ以上で売れる」ことを見越して始まったプロジェクト達である。

せっかく多額の開発資金を投じて掘削工事を行っても、今や、計画立案時の1/3の価格でしか売れないとなれば、儲けを出すどころか大赤字となる。今すぐ開発を止めて損失を最小限に食い止めたほうがイイ。

そうして、資源開発プロジェクトに向かった投資マネーも、事実上の焦げ付き(投資が含み損を抱えている)状態となってしまっているわけだ。

 

株式市場が恐れているのは、こういった、資源に投資していた金融機関やファンドが資源相場の下落によって被った損失で破綻し、それが他の金融機関等にも連鎖していくこと-金融危機なのである。

ついこの前に恐怖体験をしたリーマンショックも、サブプライムローン証券を取り扱っていた小さな金融機関の破綻から連鎖が始まり、やがて世界恐慌を引き起こした歴史的金融危機となった。当時と今との違いは、投資マネーの投資対象が不動産か資源かだけだ。

これが、最近よく見受けられる、原油価格が下落するたびに動揺が広がって弱気派が多勢となり、株式市場が下落する背景である。

 

日本経済と原油安

日本では長期化してきた原油安の影響で、少しずつではあるがガソリン価格が下がり始める等、メリットの部分も出始めてきてはいる。

ただし、原油安を始めとする資源価格の下落が及ぼす悪影響は、日本国内の金融機関にとっても対岸の火事ではない。

以下の日経新聞記事は、2015年10月中旬に欧米市場を震撼させた、スイスの大手資源商社の経営不安観測に関するものだ。

スイスに本社を置く資源商社「グレンコア」を巡る経営不安観測が日本の金融界も揺さぶり始めた。金融庁は9月28日のグレンコアの株価急落後、3メガバンクや野村ホールディングスなど大手金融機関に同社向け投融資を緊急調査した。
(中略)世界50カ国に資源を供給するグレンコアは鉱山の開発やトレーディング業務で大量の在庫を抱えているもよう。中国経済減速などで資源需要が落ち込む予測から経営不安説が浮上した。
(中略)3メガの与信残高は合計で30億ドル(3700億円程度)に達する。いずれも正常先に分類し、貸し倒れに備えた引当金をほとんど積んでいない。野村も株式や債券を保有している。
グレンコア以外にも邦銀が高格付けを根拠に与信を拡大した資源関連事業は多い。金融庁は埋蔵量などを担保にするプロジェクトファイナンスの採算性を今事務年度の検査で総点検する見通しだ。(引用元:2015年10月11日付け日経新聞)

 

如何だろうか。

2016年1月現在、日本の株式市場は原油安で金融不安が台頭して値を下げるというよりも、原油安を背景に米国株式市場が下落することに連れ安していると言ったほうがマトを得ている。

それほど、日本では原油安が世界経済のリスクとなっているとの認識が広まっていないのだ。

それどころか、「原油安は企業業績にプラスに働く」と考えて好意的に受け止めている向きの方が多勢を占めているようにも移る。

確かに、その考え方も決して間違いではないだろう。

 

だが、繰り返しとなるが、資源価格の下落が金融機関に及ぼす悪影響は、国内金融機関にとっても他人事ではない。

株式市場へ投資を行っている投資家であれば、このことを留意しておく必要があろう。

 

本記事は、2016年01月05日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
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