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アルゴリズムの法的保護

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アルゴリズムとは

 アルゴリズムは、一般的には、何らかの問題を解く場合の手続き(解き方・解法)のことです。ソフトウェアは、プログラムにより作動しますが、プログラムは、アルゴリズムをコンピュータ上で実際に実行可能な命令として具体的に記述したものです。

 

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 アルゴリズムに法的保護が及ぶかという問題が、ソフトウェアの法的保護に関する論点の一つとしてあります。

 アルゴリズムに法的保護が及ぶかどうかを検討するにあたっては、さしあたって、著作権法特許法不正競争防止法との関係を考える必要があるでしょう。

 

著作権法による保護?

 著作権法10条1項9号は、著作物の例として「プログラムの著作物」を挙げていますが、同条3項において、「プログラム言語、規約及び解法」に法的保護は及ばないとしています。

 「解法」は、「プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法」とされており、いわゆるアルゴリズムはこれにあたると解釈されています。

 そのため、著作権法上は、アルゴリズムは著作物として保護されません。

 

 アルゴリズムが具体的なプログラムとして記述された場合には、当該プログラムは「プログラムの著作物」として保護されることになります。

 しかし、著作権は表現を保護するものであって、アイディアを保護するものではないため、第三者が、当該プログラムに依拠することなく、同様のアルゴリズム及びこれを用いたプログラムを独自に開発することは著作権法上許されることになります。

 

特許法による保護?

 特許法は、特許を受けることのできる「発明」の要件として、「自然法則の利用」を必要としています(特許法2条1項)。

 この「自然法則の利用」という要件を必要とする意味としては、①経済学上の原則やスポーツやゲームのルールなどの人為的な取決めなどの自然法則とは言えないものを利用した創作を「発明」から除外する意味、②自然法則、自然現象、抽象的概念そのものを「発明」から除外する点にあると考えられます。

 アルゴリズムそのものは、何らかの問題を解くための解法にすぎず、抽象的概念にすぎないことから、「自然法則の利用」をしたものとはいえず、「発明」とはなりません。

 

 アルゴリズムを具体的に記述したプログラム(ソフトウェア)はどうでしょうか。

 特許法2条3項1号及び同条4項は、「物の発明」として「プログラム等」についても「発明」が生じる場合を認めていますが、「プログラム等」について常に「発明」が生じるものではなく、やはり「自然法則の利用」という要件が必要です。

 より具体的には、抽象的概念の域を越えて、「物の発明」といえる程度にまで、そのプログラムに利用可能性・活用可能性があるかということがポイントと考えられます。プログラムの形になっていたとしても、そのハードウェアにおける実現方法が明確になっていなければ、アルゴリズムという抽象的概念の域を越えてはいないでしょう。

特許法第2条4項(定義)
この法律で「プログラム等」とは、プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下この項において同じ。)その他電子計算機による処理の用に供する情報であつてプログラムに準ずるものをいう。

 

 プログラムを用いて作成されたソフトウェアが「発明」となるかに関する判例は、これを肯定する例、否定する例があります。単なる数学的課題の解析方法自体や数学的な計算手順が示されているだけでは「発明」にあたらず、ソフトウェアとして処理方法や処理結果がどのように具体的に実現され活用されるのかが「発明」として成立するか否かの分かれ目となっています。

 なお、特許庁の特許・実用新案審査基準によると、「ビジネスを行う方法、ゲームを行う方法又は数式を演算する方法に関連するものであっても、ビジネス用コンピュータソフトウェア、ゲーム用コンピュータソフトウェア又は数式演算用コンピュータソフトウェアというように、全体としてみると、コンピュータソフトウェアを利用するものとして創作されたものは『自然法則を利用した技術的思想の創作』に該当する可能性がある」とされています。

参考リンク:特許庁「特許・実用新案審査基準」(5-6頁参照)

 

著作権法による保護と特許法による保護

 なお、プログラムは、著作権法による保護、特許法による保護のいずれも受ける可能性があります。

 著作権法による著作物としての保護は、①登録手続等が不要であり、②保護期間は公表又は著作者の死後50年、③表現を保護するものであってアイディアは保護されない、という特徴があります。

 一方で、特許法による特許としての保護は、①特許出願手続が必要であり、②保護期間は出願後20年、③プログラムとして表現されたものに限らず、特許発明の技術的範囲に保護が及ぶという特徴があります。

 

不正競争防止法による保護

 アルゴリズムが事業者の開発にかかるものである場合には、当該アルゴリズムが不正競争防止法2条6項に定められる「営業秘密」として保護される場合もあります。

 「営業秘密」として保護されるためには、①秘密として管理されていること、②生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること、③公然と知られていないこと、という3つの要件を満たす必要があります。

 もっとも、不正競争防止法による「営業秘密」の保護は、アルゴリズムが③公然と知られていない状態でしか保護がされない点で、特許法・著作権法による保護と相違します。

 また、その不正使用・開示行為が、「不正競争」行為として差止請求・損害賠償の対象となるということにとどまり、著作権法・特許法におけるような排他的使用権・利用権までは認められない点に注意が必要です。

 

本記事は、2017年02月20日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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