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アンペイドワークの可視化で労働市場拡大へ

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アンペイドワークとは

アンペイドワークとは、無償労働ともいい、家庭内での家事労働や、家庭外でのボランティア活動など報酬を伴わない労働を言う。市場で労働力の対価として報酬を要求する有償労働に対する概念である。おもにジェンダー(性別)との関連で話されることが多い。

わが国では、1995年の「世界女性会議」で取り上げられたことを受け、内閣府が調査を開始。アンペイドワークを貨幣価値で評価した1996年の資料によれば、この時点で約76~116兆円あり、GDPに占める割合としては約15%~23%であったそうだ。

2006年にはこれが90.6兆円〜13.9兆円となり、対GDP比は約18%〜26%の規模で、割合は横ばいとなっている。

 

アンペイドワークは、その可視化により、ペイドワークとアンペイドワークを性によって固定しない方向に進む可能性がある。

家事労働を担うのは依然として多くの場合女性である。しかし、アンペイドワークとして見えにくく、評価しにくかった家事労働の貨幣価値が正しく評価されることで、その家事労働を担う女性の稼得能力も正当に評価されるきっかけになる。

結果として男女協働の社会形成につながることが期待されるというわけだ。

また、アンペイドワークが担う労働市場がペイドワークとして活性化した場合に産業に良い影響を与える(乗数効果)ことも期待されている。例えば、アンペイドワークの「育児」が市場として1兆円増加した場合に、産業に及ぼす影響の程度は約5兆円と試算されているのだという。

参考サイト:内閣府「1996年の無償労働の貨幣評価について」
参考サイト:内閣府「無償労働の貨幣評価の調査研究」(PDF)

 

アンペイドワークの性別割合

さらにその後の内閣府の調査をみてみると、2011年に至るまで、男性のアンペイドワークに参加する時間は増加している。

一方で、アンペイドワークの担い手は、配偶者の有無により時間に差はあるものの性別でみれば依然として女性の割合が多い。推計方法により差はあるが、いずれも8割を超えているのだという。

参考サイト:内閣府「家事活動等の評価について-2011 年データによる再推計-」(PDF)

 

アンペイドワークを貨幣評価することの意味

アンペイドワークを貨幣評価する実益は大きい。少なくとも次の2点を考えることができる。

第一に、貧困問題を解決するための施策を考えるヒントになる可能性があることである。第二に、先に述べた乗数効果の試算を参考にして、社会の生産性を向上させるための手段を検討すること道具として使えることである。

もしもアンペイドワークがペイドワーク市場として活性化すれば、雇用機会の増加につながる可能性が見込まれることを内閣府の統計は示唆している。

 

貧困問題に対処するヒント

英国の社会政策研究者であるルース・リスターはその著書「貧困とは何か―概念・言説・ポリティクス」(明石書店)で、貧困者は1日のなかで長い時間をアンペイドワークに費やすことで、貧困のコストを内面化(水面下と言うべきか)しており、その担い手のほとんどが女性であることを指摘している。

同氏はさらにその労働の後に残るエネルギーの少なさも男女間で差があることを問題視している。このように内面化されたコストをあぶり出し、解決できる糸口をみつけるきっかけとしてアンペイドワークの貨幣評価は役立つ可能性があるのだ。

 

また、内閣府の調査では、アンペイドワークの仕事に対応すると予想される専門的職種を例示している。

見えにくかったものを見えるようにすることで、金銭給付による支援や、現物給付による支援が必要なのかなど、状況によって最も効果的な貧困対策を検討するためのツールの一つになり得るのではないだろうか。

 

<無償労働に対応する専門職種>

無償労働の種類 対応職種
炊事 調理士見習
掃除 ビル清掃員
洗濯 洗濯工
縫物・編物 ミシン縫製工
家庭雑事 用務員
介護・看護 看護補助者
育児 保母・保夫
買物 用務員
社会的活動 サービス業加重平均

引用元:内閣府「1996年の無償労働の貨幣評価について」

 

アンペイドワークと雇用機会の増加

厚生労働省はベビーシッターを利用した場合の料金を、年収要件など一定の縛りをも設けつつも、会社員の経費として認めることを検討している。

厚生労働省は乳幼児を抱えながら仕事をするためにベビーシッターを利用する会社員の税負担を軽くする方針だ。会社員が交通費や資格取得費の経費を収入から差し引いて所得税の課税対象を減らせる制度にベビーシッター費用を加える。安倍晋三政権が進める仕事と子育ての両立支援を税制面から後押しする。(引用元:2015年8月15日付け日経新聞)

 

ベビーシッターに限らず家事をアウトソーシングする傾向が広まれば、雇用機会の拡大にもつながる可能性はある。

そのために必要なのは、先に述べたようにアンペイドワークがペイドワークとして可視化され、数値化されることは一つの要素ではある。前述の内閣府の調査によれば、育児、家事、介護ともに市場生産が1兆円増加した場合にそれぞれ5兆円超える乗数効果を見込んでいるのだそうだ。

 

本記事は、2015年10月21日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


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