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ゲーム内位置情報の管理権限は誰にあるのか ~ポケストップ削除問題~

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鉄道会社や裁判所によるポケストップ・ジムの削除要請

 先月日本でリリースされたARゲーム「Pokemon Go」は、位置情報を用いたゲームを広く普及させましたが、一方で、駅や裁判所などの公共の場所にポケストップやジムなどのゲーム内の重要なイベントポイントが設置された場合、ゲームをする目的で人が集まってしまい公共機関の適切な運営が妨げられるという社会問題も生じさせました。

※「Pokemon Go」は、プレイヤーの位置情報を利用し、現実の地図情報と連動したゲーム内世界を移動して遊ぶタイプのスマートフォンゲームです。ポケストップはゲーム内アイテムを得られるイベントポイント、ジムはゲーム内対戦ができるイベントポイントです。

 

 鉄道会社や裁判所は、「Pokemon Go」の運営会社に対して、ポケストップやジムの削除要請をしており、運営会社もポケストップやジムの削除リクエストを受け付けています。

 運営会社が任意にゲーム内位置情報の削除要請に応じてくれれば問題はないのですが、仮に任意に応じない場合に、位置情報の削除を請求する法的根拠はあるのでしょうか。

 まだまだざっくりとした試案ですが、現在、私が考えているところをお伝えできればと思います。

※この問題はゲーム内位置情報だけではなく、市販の地図(紙媒体・アプリ等を全て含む)上の住所・建物名の表記の管理権限の問題にも共通する部分があると考えています。

 

所有権を根拠とする考え

 ゲーム内位置情報(イベントポイント)は(個人ではなく)土地や建物に紐付いて設定されていることから、土地や建物の所有権を根拠に、所有権に基づく妨害排除請求権または妨害予防請求権として位置情報の削除を請求できないかということをまず考えています。

※所有権は、物を排他的全面的に使用、収益及び処分する権利(民法206条)です。この権利が侵害・妨害または妨害されるおそれがある場合には、所有権に基づく返還請求権・妨害排除請求権・妨害予防請求権などの物権的請求権が認められます。

 

 もっとも、所有権は物の物理的な使用、収益及び処分を前提としており、ゲーム内イベントポイントのような位置情報を管理する権限まで含むか明らかではないという点です。

※民法207条は「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。」と定めていますが、位置情報の管理権については何ら触れていません。もっとも、記載がないから位置情報の管理権が存在しないことにはならず、民法制定時に想定しなかった問題であって、その存否は解釈や今後の法整備に委ねられることになるでしょう。

 

 物理的な使用、収益及び処分と直接関わらない物権的請求権として、不実の登記が存在する場合、所有者にはこれを是正するため、物権的登記請求権が与えられます。

登記情報は位置情報そのものではありませんが、その土地・建物に関する情報を管理するという点においてゲーム内位置情報の削除・是正を要求する場面に近いような感じもします。

※物権的登記請求権とは、現在の実体的な物権関係と登記が一致しない場合に、この不一致を除去するために、所有権に基づく妨害排除請求権の一種として認められる請求権です。

 

 もっとも、上記の物権的登記請求権も、あくまで現在の実体的な物権関係に一致させるという是正方向においてのみ発生するものにすぎず、所有者の自由に登記の変更を認めるものではありません。

 また、その対象も登記という公的情報であって、これを例えば市販される地図情報の是正請求にまで拡大してよいかは疑問です。

 

 位置情報の管理権が、土地・建物の所有者にあるのかという問題についてはまだ不明確で今後の議論が必要なように思いますが、所有者の利用処分権と位置情報の社会的な有用性(今後の情報技術の発達に伴い益々重要になると考えられます)とのバランスから考えられていかなければならないように考えています。

※とはいえ、公共機関とゲーム内位置情報の関係については、公共機関が果たすべき役割の重要性と比較して(公共機関内における)ゲーム利用の重要性というのは相対的に低く、実質的な判断として公共機関の適切な運営を確保するために所有権に基づく妨害排除または妨害予防請求を認めてよいのではないかと考えています。

 

人格権を根拠とする考え

 ゲーム内位置情報(イベントポイント)の設置が公共機関ではなく、個人の住宅等に設置されているような場合には、人格権に基づく自己情報コントロール権(プライバシー権)を根拠としてゲーム内位置情報の削除請求をすることも考える余地があります。

※人格権とは、生命・身体・自由・名誉・氏名・貞操・信用など法的保護の対象となる人格的利益を保護する権利です。憲法13条後段の幸福追求権により導かれる権利と理解されています。

 

 ただ、個人情報と結びつかない土地・建物の位置情報のみだとそれが人格権として保護されるか疑問もあります。

 

 ゲーム内位置情報(イベントポイント)が設置されることにより個人の生活のプライバシーが脅かされる状況にある場合や、ゲーム内位置情報(イベントポイント)の設置自体が個人情報やプライバシーの侵害にあたる場合(「〇〇の自宅」などの表記をしてイベントポイントを設置する場合など)には、人格権に基づく削除請求が認められるて然るべきように考えます。

 

刑事上の責任

 今回の記事は、ゲーム内位置情報について民事上の削除請求権があるかというものですが、関連して、ゲーム内位置情報の設置により刑事責任が問われることがないかという問題も少し考えて見ます。

 

 ある場所にゲーム内位置情報(イベントポイント)が設置された結果、その場所にゲームプレイヤーが無断で立ち入った場合には住居侵入罪が問題となり、また、結果当該場所で行われている業務の妨害にあたるような場合には業務妨害罪が成立する可能性があります。

 上記は直接にはゲームプレイヤーが問われるべき刑事責任であり、ゲーム内位置情報を設置した運営会社は原則として刑事責任を問われないように思います。

 しかしながら、ゲームプレイヤーを当該場所に立ち入らせる目的でイベントポイントを設置した場合や、当該場所の管理権者からの削除請求を受けてもなおイベントポイントを設置し続けた場合には、住居侵入罪や業務妨害罪の幇助犯等が成立する余地もあるのではないでしょうか。

 

本記事は、2016年08月23日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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