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サイレントプアに陥るシングルマザー世帯

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貧困を誰にも相談できず負のスパイラルへ

高齢者や障害者、片親家庭等が貧困周囲からの孤立という、なかなか抜け出せない負のスパイラルに人知れず陥ってしまった状態を「サイレントプア(声なき貧困)」と呼ぶ。

やむにやまれぬ理由から貧困にあえぐものの、それを恥ずべきことだと思い込み、誰にも相談することができない。そして、誰にも相談できぬまま状況は悪化し、さらに貧しい生活に追いやられる。それが「サイレントプア」だ。

2014年春にNHKが同名のTVドラマを報じたことで、その呼び名を耳にしたことがある人は少なくなかろう。

 

この「サイレントプア」に通ずる貧困について、そこに陥る人を性別や世帯類型別に見ると、女性の貧困が目立ち、とりわけ高齢独身女性世帯と母子家庭世帯が突出していることがわかる。

このうち、本稿では母子家庭世帯が「サイレントプア」に陥る背景について解説する。

 

女性の貧困率に関するデータ

厚生労働省所属の国立研究機関である国立社会保障・人口問題研究所の阿部社会保障応用分析研究部部長の分析によると、貧困率を性別・年齢別に見た場合、女性の貧困率は生涯のほとんどの時期において男性を上回っているうえ、高齢期になるとこの格差は非常に大きくなるという。

年齢層別・男女別貧困率(平成19年)

genderpoorrate

引用:国立社会保障・人口問題研究所阿部氏公表データ

 

世帯類型別では先に挙げた通り、高齢独身女性世帯と母子家庭世帯の貧困が突出していて、そのうち19歳以下の子供がいる母子家庭の貧困率は57%にも達し、実に母子家庭の2世帯に1世帯以上が生活に困窮しているそうだ。

年齢別・世帯類型別貧困率(平成19年)

singlemotherpoor

引用:国立社会保障・人口問題研究所阿部氏公表データ

 

これは諸外国でも同様のこととのことだが、母子家庭の貧困率の高さは目を見張るものがある。

※OECD(経済協力開発機構)のデータで見ると、日本の母子家庭・父子家庭の相対的貧困率は50.8%に達し、その子供の相対的貧困率は、OECD加盟国中、残念なことに日本が最も高いのだという。

 

母子家庭は四半世紀で大幅に増加

翻って、厚生労働省が発表する人口動態統計を見てみると、平成25年の離婚件数は前年から4,022組減少して23万1,384組と、前年比で減少しているとはいえ、人口1000人当たりで算出する離婚率では1.84と高い数値にとどまっているのだ。

婚姻期間の長短等の問題があるため正確なデータではなかろうが、この傾向を受けて、巷では「3組に1組の夫婦が離婚に至る」等と言われている。

 

また、同省の「国民生活基礎調査」によれば、その離婚の末に誕生してしまう、65歳未満のシングルマザーと20歳未満の子供のみで構成された母子世帯数は、平成24年で70万3000世帯にのぼっているという。

およそ四半世紀前となる平成元年の同母子世帯数が48万世帯であったことを鑑みると、如何に母子世帯数が増加しているかがわかりいただけるだろう。

 

母子家庭が貧困に陥る背景

日本では子供が生まれると、母親である女性が仕事を休職・退職するのが一般的であり、復職するにしても男性に比べてキャリアアップという点で後れをとってしまいがちだ。

ましてや、専業主婦であった女性が離婚に至る場合では、専業主婦であった期間が丸々ディスアドバンテージ(不利)となってしまい、そもそもまとまった収入を得られる職にありつくことが困難となってしまうのだ。

そして、離婚後の母子家庭の収入面において一番のアテは子供の父親からの養育費であるが、これに関しては離婚時にきちんとした公正証書でも残しておかなければ法的に支払いを強制させることできず、次第に支払われなくなっていくケースが多々ある。

そうなってしまうと、母親のみで自身の生活と子供の教育費や交際費、その他の生活費を賄わなくてはならなくなる。

 

また、子供は幼ければ幼いほどに手がかかるため、子供と暮らす母親がその生活のために仕事をして少しでも多くお金を稼ごうとしても、時間的制約がそれを邪魔してしまう。

さらには、時間的に余裕がないがために子供の学校や保育施設の交流行事に参加することもままならず、次第にコミュニティから孤立していく。

 

経済的に困窮するうえ、それを相談する相手もいなければ、子育ての悩みを共有する相手もいない。
まさにサイレントプアである。

 

「子供のため」を思えばこそ

離婚件数は高止まりを続け、その末に生まれる母子世帯の半数以上が貧困に苦しんでいる現状がおわかりいただけたであろうか。

こういった母子世帯の世帯主である母親の中で、「頼る親がいない」「相談できる友達もいない」という女性の家庭が陥ってしまいがちなのが、サイレントプアだ。

 

これを「構造的な問題だから仕方ない」「ジェンダーロール(性的役割)だから仕方ない」等と言ってしまえば問題は永遠に解決できないが、だからといって今すぐに人の意識や社会の在り方が変わるわけでもなく、それを嘆いているだけではそれこそ何も解決しない。

 

闇雲に幾つも仕事を掛け持ちして働くというのも、「子供のため」を思えばこそであろうが、それだけが子供とともに生活していく唯一の手段ではない

 

もし出産前であれば、先々の色々なリスクに備えて手に職をつけたり、趣味や得意分野をお金に換える術を習得しておく。

やむなく母子家庭となってしまい、かつ生活に困窮してしまった場合は、まずは親や友達を始めとする周囲の人達とのコミュニケーションをできるだけ絶やさず、必要とあらばソーシャルワーカーや自治体に悩みを相談する。

どうしてもお金に困るようであれば、生活保護を申請する。

生活保護制度とは、元来、こういったやむにやまれず貧困に陥ってしまった人たちを広く「保護」する制度であり、必要以上に恥じたり負い目に感じたりするべきではない

「生活保護を受けると子供がいじめられる」等と思い込んでいる母親が少なくないと聞いたことがあるが、「子供のため」を思えばこそ、必要最低限の暮らしをさせてあげることが先決だ。

また、もし頼る親が健在ならば、頭を下げて親元に戻ることで、子育てを手伝ってもらいながら自身は働きに出ることができる。

 

色々な事情や周囲の目等もあろうが、「子供のこと」を思えばこそ、まずは相談できる人とのコミュニケーションを絶やさず、「サイレントプア」に陥ることを避けられるよう心掛けていただきたい。

 

参考記事:
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本記事は、2014年08月01日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

prof Kasiko編集部

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