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サッポロの極ZEROショックに見る酒税の仕組み

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サッポロHD株(2501)は400円代前半に押し戻される

国内ビール大手3強の1角であるサッポロホールディングス傘下のサッポロビールは6月4日、「第3のビール」分野で好調な売り上げを博していた「サッポロ極ZERO」の製造を5月末をもって一旦終了し、新たに「発泡酒」類として再発売することを発表した。

今年1月、国税当局によって「税率適用区分」に関連し、同商品の製造方法に関する情報提供の要請があったそうで、これが製造終了に至る事の発端なのだとか。

 

「サッポロ極ZERO」はサッポロビールの今期の稼ぎ頭であり、昨年6月の発売以来、350ml換算で累計2億本を売り上げていたという。

この「稼ぎ頭」の突然の製造終了発表と、同商品が該当する「税率適用区分」次第で116億円にも及ぶ酒税の追加納付の可能性がでてきたことは、株式市場にも大きなインパクトを与えた。

親会社であるサッポロホールディングス株(2501)は、5月末から上昇基調に転じて終値ベースで年初来高値456円を付けたその翌6月5日に急落し、足下では値を消している状態だ。

 

「第3のビール」の正体

テレビCMや小売店店頭で盛んに使われている「第3のビール」という言葉がある。

これは「ビール」および、1990年代中頃から登場してビールに比べて安価な価格がウケて人気を博した「発泡酒」に次ぐ、3種類目の「ビール系飲料」という意味合いで、マスコミによって作られた造語だ。

 

「第3のビール」は、実際には「ビール」にも「発泡酒」にも属さない、「その他の醸造酒(1)」若しくは「リキュール(発泡性)(1)」に分類されるアルコール入りビール風味飲料という位置づけとなる。

なお、麦芽以外の原料で作られたものが「その他の醸造酒(1)」となるのに対して、後述する「発泡酒」に麦を使用したスピリッツ等を混ぜ併せたものが「リキュール(発泡性)(1)」だ。

 

サッポロ側では発売当初より今回の「サッポロ極ZERO」を、「独自の製造方法を用いたリキュール(発泡性)(1)に分類するアルコール入りビール風味飲料」としていたものの、国税当局が「その製造方法だと、リキュール(発泡性)じゃないんじゃない?」と言って「待った」をかけた格好だ。

※「その他の発泡性酒類」分類のアルコール入りビール風味飲料を第3のビール、「リキュール(発泡性)」分類のビール風味アルコール飲料を第4のビールと呼ぶこともある。

 

酒税法による「ビール」の分類

では、「発泡酒」の定義とはいかなるものなのだろうか。

 

根拠法となる酒税法によると、以下のようにある。

酒税法第3条(その他の用語の定義)
18項【発泡酒】麦芽又は麦を原料の一部とした酒類(第七号から前号までに掲げる酒類及び麦芽又は麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留したものを原料の一部としたものを除く。)で発泡性を有するもの(アルコール分が二十度未満のものに限る。)をいう。

対して、ビールは以下の通りだ。

12項【ビール】次に掲げる酒類でアルコール分が二十度未満のものをいう。
イ 麦芽、ホップ及び水を原料として発酵させたもの
ロ 麦芽、ホップ、水及び麦その他の政令で定める物品を原料として発酵させたもの(その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が麦芽の重量の百分の五十を超えないものに限る。)

簡単に要約すると、「発泡酒」は原料の「一部」に「麦芽又は麦」を使用しているものの、その使用比率を「ビール」に比べて低く抑えた「アルコール入りビール風味飲料」となる。

 

国税当局やサッポロ側が何を指して「リキュール(発泡性)(1)」に分類されない可能性があるとしているか、現段階で詳しくは公表されていないが、仮に「サッポロ極ZERO」が分類上「リキュール(発泡性)(1)」に該当しないと判断された場合、サッポロは支払い済みの酒税と本来の酒税の差額分を、売れた本数分(既存在庫含む)、追加で支払う必要があるのだ。

 

「発泡酒」や「第3のビール」は安価な酒税で広まった

「発泡酒」や「第3のビール」が広まった要因は、一にも二にもその安価な価格にある。

バブル崩壊以降の不景気の影響や若者のビール離れを受けて、店頭価格が350mlで250円程度する「ビール」が売れなくなったことを危惧したビールメーカーが、酒税法上「ビール」に該当しない、ビールよりも酒税が安価な酒類の開発に手を付けた。

それが「発泡酒」であり、「第3のビール」が生まれた経緯となる。

 

因みにそれぞれの酒類の税率を比較すると以下の通りだ。

ビール ※1 1キロリットル当り:22万円
発泡酒 ※2 1キロリットル当り:17万8,125円
発泡酒 ※3 1キロリットル当り:13万4,250円
その他の発泡性酒類 ※4 1キロリットル当り:8万円

 ※1:発泡性酒類に該当
※2:麦芽重量が水以外の原料の25%以上50%未満でアルコール10度未満のもの
※3:麦芽重量が水以外の原料の25%未満でアルコール10度未満のもの
※4:第3のビールはここに該当

 

酒税の差×販売本数の追加納付の可能性

酒税の金額を350mlで換算すると、1キロリットル=1000リットル=100万ミリリットルであるため、ビールは77円第3のビールだと28円と算出される。

つまり、サッポロが「リキュール(発泡性)(1)」として、酒税額を350ml当り28円前提で開発・販売した「極ZERO」であるが、これが「リキュール(発泡性)(1)」分類でないとすると、酒税額は77円とされる見通しが強く、この差額(77円―28円=49円)が「極ZERO」1本あたりの追加納付額となる。

この49円にこれまでの販売本数および既存在庫本数をかけて算出した数字が、サッポロ側が発表している追加納付可能性額「116億円」だ。

 

同社の直近の決算短信にみる、今通期(平成26年12月期)の当期純利益予想は前期比47.1%減益の50億円とされている。

サッポロビールでは、今なお製造過程と酒税法の法令解釈を検証しているとのことだが、仮に「極ZERO」が「リキュール(発泡性)(1)」に該当しないとなれば、マスコミ各社が一斉に指摘する通り、「今期の利益が一発で吹き飛びかねない」状況となっている。

 

<6月20日追記> サッポロホールディングスは6月20日付けの取締役会で、子会社のサッポロビールにおける酒税の修正申告について決議したと発表。これに伴って、116億円を平成26年12月期第2四半期連結決算において特別損失に計上するとのこと(現時点で業績予想の修正はなく、「精査中」であるとしている)。ただし、同商品の製造過程と酒税法の法令解釈については今なお検証を続けているようで、あくまでも「自主的」な修正申告であることを強調している。

 

<参考>
 サッポロビール株式会社の発表
 http://www.sapporobeer.jp/news_release/0000020824/index.html

 サッポロHD 平成26年12月期第1四半期決算短信(PDF)
 http://www.sapporoholdings.jp/ir/report/fs/pdf/H26_3_tanshin.pdf

 6月20日追記 サッポロHD 特別損失の計上に関するお知らせ(PDF)
 http://www.sapporoholdings.jp/news_release/0000020181/pdf/20140620HP_Keisai_Tekijikaiji.pdf

本記事は、2014年06月13日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
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