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フェアユースを巡る議論

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フェアユースとは

 フェアユースという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
 フェアユースとは、著作物を著作権者の許諾なく利用した場合であっても、それが公正な利用であれば、著作権侵害にはあたらないとする法理または法律の規定を意味します。

 米国においては、比較的以前から、フェアユースが法律の規定として整備されており、公正なものであれば著作物の自由な利用が認められてきました。

※米国著作権法107条は以下の4つの判断要素を考慮して、フェアユースとして著作物の自由な利用を認めています。(参考リンク:公益社団法人著作権情報センター米国著作権法の邦訳ページ
 1.使用の目的・性質
 2.使用される著作物の性質
 3.使用された部分の量・実質性
 4.潜在的市場または価値に対する影響

  
 米国におけるフェアユース規定は、「批評、解説、ニュース報道、教授、研究または調査等」を目的とする著作物の利用について定められたものですが、判例上、パロディなどについても適用されるなど、その対象は広いものとなっています。

※パロディに対するフェアユースが認められた判例としては、Leibovitz v. Paramount Pictures Corp.事件、Bourne Co. v. Twentieth Century Fox Film Corp.事件などがあります。

 

フェアユースが注目される背景

 ここ数年でフェアユースが注目される背景としては、インターネット上におけるデジタルコンテンツの利用が活発になったことがあげられます。

 動画投稿サイトや、電子書籍の作成、ホームページにおける写真素材・アイコン・文章の利用、音楽配信サイト、写真素材の加工やウェブデザインの場面において、著作権侵害の有無はもっとも気を付けなければならないことの一つとなっており、著作権侵害リスクが新しいビジネスの阻害原因となっている場合もあります。

 当然、違法な著作権侵害行為は許されるべきではありません。
 しかしながら、著作物を有効に活用して新たなビジネスを創造するため、また、既存の著作物を土台に新しい著作物を創造するために、著作権法1条の文化の発展という目的を実現するためには、著作物の公正な利用であればこれを認めるべき場合があることは否定できないでしょう。

※著作権法1条は著作権法の目的について、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与すること」としています。

 

日本の著作権法の現状

 現在の日本の著作権法では、フェアユース規定のような一般的に著作物の利用を認める規定は存在せず、例えば、図書館等における複製行為(著作権法31条)や引用(著作権法32条)など、公正な利用にあたる場合を具体的に列挙して、著作権侵害にあたらないものとしています。

 日本のように著作権侵害にあたらない場合を具体的に列挙する方法は、著作権侵害にあたる場合とあたらない場合が明確になる点でメリットもありますが、社会や技術の変化によって新たな著作物の利用を認める必要が生じた場合にすぐに対応ができないというデメリットがあります。

※例えば、グーグルなどの検索エンジンがキャッシュのためにウェブサイトの情報 をサーバにコピーすることが平成21年の著作権法改正により明文でさだめられましたが、検索エンジンサービスが登場してから10年ほどの間、法律上の取扱いが不明瞭だったこととなります。

 

フェアユース導入を推進する議論

 デジタルコンテンツの利用が活発化してきた背景や、フェアユースのような包括的に著作物の利用を認める規定がない著作権法の現状を踏まえて、我が国の著作権法においてもフェアユース規定を新設すべきとする議論が盛んになっています。

 フェアユース導入を推進する理由は、前述のように新しいビジネスモデルに対応するという政策的なところが大きいようです。
 現行の著作権法のもとでは、明文で許されている利用方法以外の方法による著作物の利用はビジネスモデルとしてリスクの高いものと言わざるをえないでしょう。
フェアユース規定を設けることにより、フェアユースのルールを守った方法で新たなデジタルコンテンツの利用したビジネスが生まれ発展していくことが期待できます。

※参考:著作権法、フェアユース規定に詳しい福井健策弁護士のインタビュー

 

フェアユース導入に慎重な立場

 このようなフェアユースの考えを導入すべき政策的理由は、関係者に共有されているところですが、日本におけるフェアユース規定をどのように定めるかについては、フェアユース規定を設けることによる社会・経済への影響を考慮して、慎重な意見もあります。

 フェアユース規定導入に慎重になるべき意見の理由としては、フェアユースの名のものとに著作物が無制限に利用され、著作者の正当な権利を侵害するのではないかという懸念がもっとも大きいでしょう。
 フェアユース規定を定めるとしても、著作物の利用が著作権者の権利を不当に侵害しないように、その利用条件等を我が国の現状に合わせて適切定める必要があります。

 また、著作物の利用が許される場合を個別列挙する現行の著作権法の方式では、事前に著作権侵害にあたるかが分かりやすく著作権に関する紛争を事前に予防する観点からは一定の評価をすることができます。
 一方で、フェアユース規定による場合は、その著作物の利用方法がフェアユースにあたるかを事後的に裁判で争うこととなりそうです。
 リスクを避ける傾向にある日本において、フェアユース規定が活発に利用されるかどうかについても不透明な部分があり、法的アドバイスを行うわれわれ弁護士としても、単にリスク回避をすすめるだけではなく、リスクを適切に説明して場合によっては挑戦することを後押しする役割も必要になってくるでしょう。

 

さいごに

 フェアユース規定の導入については、政府において著作権法改正の検討がなされているところですが、まだ結論はでていません。
 著作物の有効利用の必要性は意識されるものの、海賊版、違法アップロードなどによる著作権侵害事例は恒常的に発生しており、フェアユース規定がこれらの不当な著作権侵害を助長してはなりません。
 我が国の現状や、国際的なコンテンツ戦略との兼ね合いで十分な議論のうえにフェアユース規定の導入を検討すべきように考えています。

 

参考記事:
パロディと著作権法の法律問題
デザイン書体と著作権の法律問題
プログラム・リバースエンジニアリングの法律問題
特許権と実用新案権と意匠権~その1~
特許権と実用新案権と意匠権~その2~
ウェブサイトの権利関係 ~ウェブサイトは誰のもの? その1~
ウェブサイトの権利関係 ~ウェブサイトは誰のもの? その2~

 

本記事は、2014年08月11日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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