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他人事ではない自転車交通事故と損害賠償

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子供が起こした自転車事故で1億円の賠償命令

2008年9月22日夕刻、神戸市北区の住宅街で当時小学5年生の男児が乗るマウンテンバイク型の自転車が、散歩中の60代女性と正面衝突した。

男児は帰宅途中で坂道を下っていた。

女性は衝突の弾みで転倒し、頭部に強い衝撃を受けて頭蓋骨を骨折する重傷を負った。
一命こそとりとめたものの、意識が戻らず、寝たきり状態となってしまったそうだ。

2013年8月、この事件に関して神戸地裁が下した判決は、男児の母に計9,521万円の損害賠償の支払いを命じるものだった。

判決内容は、子供の犯した交通事故の責任を親が負うこと、および自動車やバイクではなく、自転車で起こした交通事故の損害賠償が約1億円もの高額となったことが非常にセンセーショナルであった。

 

しかし、自転車事故で高額の賠償命令が下されたのは、何もこの神戸地裁のケースが初めてではない。

高校生と会社員が自転車同士で交錯した東京都の事故では、無理な斜め横断をした高校生側の過失を重く見た東京地裁が、同高校生側に対して、事故の影響で言語機能に後遺障害を負った会社員に計9,266万円を支払うよう命じた。

また、片手運転で下り坂をスピードを落とさずに走行した結果、横断歩道を横断中の30代女性に脳挫傷を負わせて死亡させた自転車の男性は、同じく東京地裁に6,779万円の支払いを命じられている。

 

このような悲惨な自転車事故の話は、何も子供を持つ親のみならず、日常的に自転車に乗る全ての人にとって他人事ではない。

 

決して「高過ぎない」損害賠償額

自転車で起こした交通事故なのに、損害賠償額が億にも届かんばかりに高額となることに驚く人は少なくない。

ただし、こういった高額な賠償命令は、例えば前述の神戸のケースで見ても極めて妥当な金額だ。

 

自賠責(自動車損害賠償責任)保険の加入が義務付けられているうえ、さらに上掛けで任意の民間自動車保険に加入することが一般的な自動車やバイクのケースでは、交通事故を起こして他人を死傷させてしまった際、保険会社が億単位の賠償金を被害者に支払うことはザラだ。

 

自転車が自動車やバイクよりもより多くの人にとって身近な乗り物であり、自動車やバイクよりもスピードが出にくく危険度が低いように思われることが、「自転車が起こした事故なのに」という感覚を覚えさせるのだろう。

だが、自転車とて坂道をブレーキ無しで下れば、非力な小学生でも時速30kmくらいは簡単に出せるし、これが不意にぶつかってくるとなれば、例え大柄で筋骨隆々の身体を持っている人であってもタダでは済まされないだろう。

そして、その事故が原因で後遺障害を負ってしまった人やその家族、死亡してしまった人の遺族にとっては、加害者が「何に乗って交通事故を起こしたのか」は問題ではないのだ。

 

自転車保険でリスクをカバー

こういった自転車交通事故の増加に加え、スポーツ目的の自転車の流行等もあって、最近では自転車交通事故に起因するリスクに備えるための自転車保険が、その商品バリュエーションを増やしている。

自転車保険に加入していれば、自転車搭乗中に負った自身の怪我の補償はもちろんのこと、先に挙げた事故のような、自転車搭乗中に誰かを死傷させてしまった場合(人身事故)や、物を壊してしまった場合(物損事故)の損害賠償金額を保険金で補償してくれる。

保険料は概ね月額300円程度~、年間4,000円程度~と手軽であるうえ、コンビニエンスストアで簡単に保険加入手続きができるものもある。

 

また、任意の自動車保険等に加入している場合は、その保険契約に個人賠償責任保険特約を付けることで、自転車事故のリスクをカバーすることもできる。

個人賠償責任保険特約は自動車保険のみならず、火災保険や傷害保険といった損害保険に附帯することができる特約で、日常生活の中で他人に与えてしまった損害を広くカバーする保険だ。

この個人賠償責任保険に加入しておけば、自身の負った怪我の治療代は補償されないものの、例えば飼い犬が散歩中に他人に噛みついてしまった場合から、自転車搭乗中に他人に怪我を負わせてしまったり、よろけて停車中の自動車に傷をつけてしまった場合に至るまで、広く損害を補償してもらえる。

 

他にも交通事故傷害保険普通傷害保険に加入していれば、それ単体で自転車事故までカバー可能だ。

さらに、公益財団法人・日本交通管理技術協会が手掛けるTSマークは、同協会が認めた自転車安全整備士が点検整備した普通自転車に貼付されるシールで、このシールには傷害保険と賠償責任保険が付いている。

お手持ちの自転車があれば、以下のURLを参考に是非シールの有無を確認してみてほしい。

参考:公益財団法人日本交通管理技術協会 TSマークとは

※個人賠償責任保険特約の保険料は月額100円程度~。

※TSマーク附帯保険の補償金額は、青色TSマークで最高1000万円・赤色TSマークで同2000万円。保険料は年間2000円程度~で年次更新。

 

自転車は絶対的に安全な乗り物ではない

自転車という乗り物を過剰に危険視する必要はないが、「絶対的に安全な乗り物」ではないことを、自転車に乗るすべての人が認識する必要がある。

それはスポーツ自転車に乗る人や、携帯をいじりながら・友達としゃべりながら運転する学生だけでなく、フラフラと蛇行運転をしてしまいがちなご年配の方も、幼い子供を乗せた電動自転車で歩道を猛スピードで走行する母親も同じだ。

他人の危険運転を「危ないなぁ・・・」等と咎めながら、実は自身も信号無視をしたり、帰路を急ぐあまりに歩道で我先にとスピードを出し過ぎていたり、後方確認なしで道路を斜め横断したりしてしまってはいないだろうか

本稿をきっかけに、子供の自転車運転のみならず、自身の日常的な自転車運転についても振り返ってみていただければ幸いだ。

 

参考記事:
追突事故被害と軽度外傷性脳損傷の補償
裁判基準における赤い本と青本
交通事故被害における逸失利益の計算方法
今さら聞けない保険のハナシ~その2~
自動車保険は転ばぬ先の杖
交通事故被害で後遺障害を負った場合の損害賠償
交通事故が多発する魔の時間帯
どうなる?未成年者が起こした交通事故の責任

 

本記事は、2014年07月24日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


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