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企業が従業員の電子メールを閲覧・管理する権限

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はじめに

 Microsoft社のオペレーションシステム「Widows95」のリリースから早20年近くが経過し、企業のあらゆる業務面でも、当たり前のようにインターネットや情報端末機器が利用されるようになって久しい。

 しかし、情報技術や情報端末機器が進歩して、それが人々に広く浸透する一方で、企業法務の面では、社内でのそれらの取り扱いによって生じる情報漏洩リスクを危惧する声が後を絶たない。

 情報技術や情報端末機器の進歩は、業務の効率化に多大な恩恵を与えるものの、社内社外を問わず、簡単に他人と情報をやり取りできる電子メールやチャット、SNS等といったコミュニケーションツールを通じ、顧客情報や商品開発情報等といった社内秘の情報が漏洩してしまう恐れがあるのだ。

 
 その情報漏洩リスクを未然に防ぐためにも、予め、電子メールやその他のコミュニケーションツールの取り扱いに関する社内規定をしっかりと整備し、できれば、従業員の電子メール等のアカウントも常に管理するか、若しくはいつでも閲覧できる権限を保有しておきたいものだ。

 そこで今回は、企業が、従業員の電子メール、スカイプ、SNS等のアカウント内を、当該従業員の許可なく管理・閲覧することが可能かどうかについて、過去の判例や経済産業省のガイドラインを踏まえて説明する。

 

過去の判例その1

継続的な社用メールの監視が問題となった電子メール事件(東京地裁平成13年12月3日)

<事件の概要>
F社Z事業部に勤める原告Aが職場の上司である被告Cに対して、原告AがF社の社内ネットワークを用いて送受信した私的な電子メールを、被告Cが原告の許可なく閲覧したこと等を理由として、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案。

<裁判所の判断>
メールサーバが社内にあることも考慮されているものの、パスワードやメールアドレスについて他者のアクセスが可能となっていることなどから、期待しうるプライバシー保護の程度が低いとして、会社の損害賠償責任を否定した。

 

過去の判例その2

一時的な社用メールの監視が問題となった日経クイック情報事件(東京地裁平成14年2月26日)

<事件の概要>
被告会社に勤める社員に対して、誹謗中傷する電子メールが送られてきた事件の調査の過程で、社内サーバーから原告が送受信したメールファイルを閲覧した被告社員の行為が不法行為に当たるとして、原告である元社員が被告会社および被告社員4名に対して慰謝料を請求するとともに、原告の個人データの返還などを求めた事案。

<裁判所の判断>
メールを監視する合理的な必要性と調査方法の相当性から、プライバシー侵害の程度は低いとして、会社の損害賠償責任を否定した。

 

経済産業省のガイドライン

平成16年10月の経済産業省「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」では、「個人データの取扱いに関する従業者及び委託先の監督、その他安全管理措置の一環として従業者を対象とするビデオ及びオンラインによるモニタリングを実施する場合の留意点」として、以下の内容を挙げている。

  • モニタリングの目的、すなわち取得する個人情報の利用目的をあらかじめ特定し、社内規程に定めるとともに、従業者に明示すること。
  • モニタリングの実施に関する責任者とその権限を定めること。
  • モニタリングを実施する場合には、あらかじめモニタリングの実施について定めた社内規程案を策定するものとし、事前に社内に徹底すること。
  • モニタリングの実施状況については、適正に行われているか監査又は確認を行うこと。

上述した引用文以外の箇所も含めて概要を示すと、「継続的な監視を行う場合には、その旨を社内規定に定めるとともに監視の目的を明示するのが望ましい」としているものの、モニタリング(閲覧・監視)を行うに際して「従業員の同意を得ること」までは必要とされていない。

 

まとめ

 以上を踏まえると、社用の電子メールアカウント(特にパスワード等も管理していればなおさら)については、プライバシー保護の程度は低いと考えられ、また、業務上の必要性があってその閲覧が一時的部分的なものであれば、手段としても相当であって、仮に従業員に訴訟を提起されたとしても会社が責任を負う可能性はかなり低いと考えられる。

 なお、この管理・閲覧権限の話は電子メールのみならず、会社用で取得された、若しくは社内に持ち込んで利用される、スカイプなどのチャットソフトや、SNS等のコミュニケーションツールのアカウント等でも同じ事が言えると考えられる。

本記事は、2014年03月19日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所


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