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位置情報とプライバシー

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位置情報の利用の活発化

 スマートフォンの普及とともに、位置情報を利用した地図アプリやゲームアプリがここ数年で数多くリリースされ、広く利用されるようになっています。

※地図アプリやゲームアプリのほか、最近ではGPS機能を搭載したスポーツウォッチも多く販売されており、ランニングやサイクリングを行った時間・経路・速度などをウェブ上に記録できるサービスもあります。

 

 位置情報と連動することにより、利用者がいる地域や状況に応じたサービスを提供することができるようになり、利用者のニーズに応じた情報を提供できるという利便性が高まるだけでなく、より効果的な広告を発信できる等の事業者側のメリットもあります。

 一方で、位置情報は、これを分析することにより利用者個人の住所や日々の行動が明らかになる点で、プライバシーの中でも保護の必要性が高い部類の情報といえ、これが漏洩した場合にはプライバシー侵害の度合いが大きくなるという危険性があります。

※プライバシーとは一般に“私的領域に属すること”と理解されており、日本の判例においてプライバシー権は“私生活上の事柄をみだりに公開されない権利”(東京地裁昭和39年9月28日「宴のあと」事件)として理解されています。もっとも最近の情報化社会の流れを受けて“自己の情報をコントロールする権利”など積極的な権利として理解する流れにあるようです。

※個人情報とプライバシーの違いについて、個人情報は「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別する事ができるもの」と定義されています(個人情報保護法第2条1項)。プライバシーは個人情報よりも広い概念であって、特定された個人の属性・家族・病状・行動等のうち私的領域に属する情報も含む概念といえるでしょう。

 

プライバシー侵害の不安

 位置情報の漏洩によるプライバシー侵害の不安は誰しも共通に持っているように思います。このプライバシー侵害の不安が具体的にどのようなものか少し考えてみます。

※現在多くのアプリでは提供事業者のサーバに利用者の位置情報を保存・管理する仕組みになっているようです。

 

 まず前提としておかなければならないのは、位置情報がプライバシーとなるのは、主に位置情報が個人情報と結びついた場合であるということです。

 そのため、位置情報を利用するアプリであっても氏名・住所等の情報を入力していないものについては個人が特定されずプライバシー侵害の可能性は低いと考えられますが、グーグルやfacebookなどのアカウントでログインするようなアプリではやはり個人情報と位置情報が紐付くことになるので注意が必要です。

 

 また、プライバシー侵害の不安を具体的に考えて見ると、それはプライバシーが暴かれることにより窃盗被害やストーカー被害の端緒になるなど別の被害を受ける不安が背景にある場合もありますが、自己の私的領域に属する情報(外に公開する必要のない情報)が自己のコントロール外で公開されてしまうことに対しての法的保障がプライバシー権なので、窃盗被害・ストーカー被害に結びつかなくてもプライバシー侵害は成立するというべきでしょう。

 そのような私的領域を保護するものとしてプライバシー権が保護されなければならない理由としては、社会の中で生きる個人にとって、仕事などの社会に対して見せる自己と、家庭・私生活での自己を区別しておくことはその個人の人格を保護するために必要不可欠であって、憲法13条の定める「個人として尊重」(人格権)の一環として保護されなければならないからと私は考えています。

日本国憲法第13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

※もっとも、現実に訴訟においてプライバシー侵害を理由に損害賠償を請求する際には、主に損害の認定・損害額の評価において難しいところがあります。裁判例の蓄積により類型毎の相場が形成される方向が望ましいと思います。

※訴訟におけるプライバシー侵害の主張が難しいとしても、事業者側にとってプライバシー漏洩は企業の社会的責任も問われるコンプライアンス事案になります。位置情報アプリを提供する事業者としては、不必要に位置情報その他のプライバシー情報を取得しない。取得する場合であっても管理を徹底するなどの対策は必須でしょう。

 

位置情報の有効利用

 位置情報の利用にはビジネスだけではなく街作りや防災の観点から大きな期待が寄せられています。

 例えば、位置情報を利用して地域毎の人口分布や人口構成、動態を把握することができ、都市部の密集緩和や災害に備えた街作りに活かすことができます。

 位置情報をこのような用途に活かすうえでは、位置情報の個人を特定する部分は不要であり、マクロ的な流れが把握できればよいので、スマートフォンからの各端末から取得した個々の位置情報を適切に匿名化してデータとしてまとめることが重要です。

 十分に匿名化されたうえでは、位置情報を利用する上で個人の同意は不要と考えてもよいでしょう。

 一方で、個人の要素を残したままの位置情報はその利用のために原則として個人の同意は必要です。利用規約への同意によって事前の同意を得たこととする場合であっても、そもそも利用規約について十分な説明責任を果たしているか、利用規約への同意後も随時同意内容を変更できる契約内容となっていることについて注意しなければならないでしょう。

 

本記事は、2016年07月27日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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