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共有不動産の明渡しと使用料の問題

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不動産の共有が発生する場合

 共有とは、一つの物に対して複数の主体が所有権を有する状態のことです。今回は、共有状態にある不動産について紛争となる事例を解説したいと思います。

※所有権以外の権利を複数の主体で有する場合には準共有(民法264条)といいます。

 たとえば、相続が発生した場合には遺産に属する財産について、遺産分割が完了するまで相続人全員の共有となります(民法898条)。相続人のひとりが共有状態にある不動産を単独で使用しているような場合、他の相続人はどのような請求ができるのでしょうか。

 また、夫婦間の財産の中には夫婦の共有となる物もあります(民法762条参照)。この夫婦が離婚して、共有財産であった不動産が共有のまま、元夫婦の一方が単独で使用しているような場合、もう一方はどのような請求ができるのでしょうか。

※不動産が共有となる場合の多くは遺産分割前の遺産共有状態ですが、遺産分割後も共有となる場合があります。土地であれば分筆したうえで相続分に応じてそれぞれ単独相続することもできますが、建物など分割が困難な場合で、かつ、遺産分割協議で誰が取得するか決まらなかったような場合に共有となる場合もあるでしょう。

 

共有不動産の引渡し求めることは原則としてできない

 民法249条は、各共有者が、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができること、を定めています。

民法249条(共有物の使用)
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

 民法249条が定めていることは、(たとえ持分比率が少ない共有者であっても)各共有者は共有物の全部について使用する権利があるのだから、共有物の全てを単独で使用することも可能ということになります。

 そうすると、共有者の一人が共有物を単独で使用している場合であっても、それは正当な使用権原に基づくものとなるため、明渡しを求めることはできないという結論になります。最高裁判所の判例もこれと同趣旨の結論を示しています。

最高裁昭和41年5月19日判決抜粋
他のすべての相続人らがその共有持分を合計すると、その価格が共有物の価格の過半数をこえるからといつて・・・・・・、共有物を現に占有する前記少数持分権者に対し、当然にその明渡を請求することができるものではない。けだし、このような場合、右の少数持分権者は自己の持分によって、共有物を使用収益する権原を有し、これに基づいて共有物を占有するものと認められるからである。

 

 但し、以上はあくまでも原則です。判例も以下のように述べて「明渡を求める理由」がある場合には、明け渡し請求を認める立場をとっています。

最高裁昭和41年5月19日判決抜粋
多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには、その明渡を求める理由を主張し立証しなければならないのである。

 「明渡を求める理由」の具体例としては、以下のような場合が考えられます。

共有物の使用方法について共有者間に合意が存在するにもかかわらず、この合意に反して共有物を単独で占有するような場合

 

使用料の請求は原則としてできる

 共有物を共有者の一人が単独使用しているような場合、上記のように原則として明渡し請求はできません。しかし、共有物を単独使用することによって他の共有者は共有物の使用ができなくなるという損失を被っており、一方で単独使用者は単独使用という利益を得ています。

 このように、法律上の原因なくして、共有者の一部が共有物を使用できない損失を被り、一方である共有者が共有物を単独使用する利益を得ているような場合には、他の共有者は単独使用している共有者に対して不当利得返還請求権として(賃料相当額×持分割合)の支払を請求することができます。すなわち使用料の請求をすることができます。

民法703条(不当利得の返還義務)
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

 

使用料の請求ができない例外

 但し、例外的に使用料の請求ができない場合があります。

 第一に、共有者間において共有物を単独使用することを認める合意があるような場合です。
 第二に、単独使用を認める合意がない場合であっても、遺産共有の場合であって、被相続人の生前に同居していた相続人が同居不動産に居住を継続するような場合には、当該相続人に無償で使用させる合意があったものと推認される結果、使用料の請求ができないものとされています(最高裁平成8年12月17日判決)。

最高裁平成8年12月17日判決抜粋
共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。けだし、建物が右同居の相続人の居住の場であり、同人の居住が被相続人の許諾に基づくものであったことからすると、遺産分割までは同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが、被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するといえるからである。

 

本記事は、2016年05月30日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所


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