法務・税務・労務などの問題解決エンジン
some system placed here.

写真素材の無断使用が問題となった最近の判例②

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

写真素材の無断使用が問題となった最近の判例①へ

 

著作権侵害の故意・過失について

 判決のポイント2「著作権等の侵害を惹起する可能性があることを十分認識しながら」著作物等を使用した場合には「著作権等の侵害につき、単なる過失にとどまらず、少なくとも未必の故意があったと認めるのが相当というべきである」という点について、まず、“未必の故意”の概念について説明します。

 

 “未必の故意”とは、主に刑事分野での用語ですが、民事の不法行為の場合について言うと、“確定的に権利侵害を行う意思はないが、結果的に権利侵害が生じても構わないと思って行動する場合の心理状態”といえます。

 “未必の故意”は、結果的に権利侵害が生じても構わないと思ってあえて行動している点で、権利侵害を意図している故意がある場合と同視できるため、確定的故意がある場合と同様に扱われます。

 

 では、どのような場合に著作権の侵害につき未必の故意があったと認められるのでしょうか。
 判例では「著作権等の侵害を惹起する可能性があることを十分認識しながら」著作権等を使用した場合に、このような未必の故意が認められるとしています。
 そして、「著作権等の侵害を惹起する可能性があることを十分認識」していたかどうかについては、ウェブサイトの作成業務を担当していた者の経歴及び立場を考慮しています。
 すなわち、被告においてウェブサイト作成業務を担当していたのは、会社勤務及び個人事業者として数年にわたりホームページ作成業務を行っていた従業員であり、「このようなE(被告従業員)の経歴及び立場に照らせば、Eは、本件掲載行為によって著作権等の侵害を惹起する可能性があることを十分認識し」と判示されています。

 

 原告側のウェブサイトではこの点について、本来著作権等侵害の故意については被害者側が立証すべきところ、「被害者側が『加害者による著作物の無断使用の事実(被害者の著作権等が侵害された事実)』を立証すれば加害者において著作物の権利関係について調査・確認を怠らなかったことを立証しなければ損害賠償責任が認められ得ることが明らかとなった」と記載していますが、これは判例に照らすと正確ではないように思います。

※上記原告ウェブサイトの記載について補足しますと、本来は著作権等侵害の故意があることについてすべて原告(被害者)側が立証すべきところを、原告側が被告側(加害者側)による無断使用の事実のみを立証すれば、残りの立証責任が被告側に転換され、被告側が著作物の権利関係について調査・確認を怠らなかったことを立証しなければ故意が認められてしまうということを記載しています。

 

 判例は、あくまでも故意についての立証責任は原告側にあるとしつつも、被告従業員の経歴及び立場を考慮して著作権等侵害について未必の故意を認めたに過ぎないと読むべきでしょう。原告ウェブサイトに記載のあるような、著作権等の侵害事実があれば原則的に故意が認められるというような判断を示しておらず、あくまでも被告(加害者側)の経歴及び立場を考慮して故意の有無を判断しているということです。

※ただし、実際には仮に被告従業員が十分な調査・確認をしている事実が認められたとすれば、未必の故意を認めることはできなくなるため、被告側としては十分な調査・確認をしても著作権等の侵害と判断することができなかったことを主張・立証すべきですが、このことはいわゆる法律上の立証責任の転換とは別のことです。

 

 結局、判決のポイント2において重要なことは、著作権等侵害の加害者側の故意(又は未必の故意)の有無を判断するにあたって、判例は被告(加害者側)の経歴及び立場を考慮して実質的に判断しているということです。
 もっとも、上記判決を踏まえるならば、ウェブ制作会社が写真素材を無断使用したような場合には、その経歴及び立場を踏まえて、ほぼ間違いなく未必の故意ありと判断されることでしょう。

※なお、従業員が著作権等の侵害を行った場合、当該従業員を雇用している法人についても使用者責任(民法715条1項)により著作権等の侵害による責任を負うことになります(判決文20頁)。

 

写真素材を使用するにあたって注意すること

 それでは、今回の判決を踏まえて、写真素材を使用するにあたってどのような点に注意すべきでしょう。以下2点を、本判決の教訓として覚えておいていただければと思います。

1.「識別情報や権利関係の不明な著作物」については必ず権利関係を調査・確認する。

2.少なくともウェブ制作会社等であれば、写真素材の無断使用について知らなかった等の反論は採用されない(未必の故意が認められる)。

 本判決の結論は至極当然の結果と考えますが、著作物の権利関係について調査・確認する範囲や、未必の故意を認めるべき場合を判断した点において注目すべき判例と考えます。

 

参考記事:
建築と著作権法の関係
パロディと著作権法の法律問題
デザイン書体と著作権の法律問題

 

本記事は、2015年08月24日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所


新着記事
公式Facebookページ 公式Facebookページ
誰に何と相談していいかわからない方へ
050-7576-0762
[日本法規情報]
  • 平日10:00~20:00
  • 土日祝終日、受付のみ対応

誰に何と相談していいかわからないあなた。
私達が相談相手探しのお手伝いをいたします。

無料相談・全国対応 050-7576-0762 お電話ボタン