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利用規約作成のポイント ~禁止事項の定め方~

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適切な利用規約を定めることのメリット

 最近、ウェブサービス利用規約の作成や検証のお仕事を頂く機会が増えてきました。またウェブサービス利用者からの問い合わせやクレームへの対応に関する相談も多く受けるようになりました。

 利用規約は、多数の消費者との契約関係を一律に処理することによって契約コストや紛争解決コストを軽減する手段となります。
 より詳しく説明すると、通常の契約であれば、相手方ごと取引ごとに交渉し契約条件を決めていく必要がありますが、ウェブサービスなど多数の消費者を取引相手とする場合、事業者としていちいち契約条件を交渉していくことは不可能です。そのため、あらかじめサービス提供のための条件として利用規約を定めておき、これに同意してくれた消費者とだけ契約を締結し、サービスを提供します。

 また、うまく利用規約を定めておけば、消費者からの問い合わせやクレーム、問題行動に対しても、利用規約を根拠に上手く捌くことができ、紛争を事前に予防することもできます。
 例えば、ウェブサービスにおいて、スパム行為を繰り返すユーザーの利用を禁止させたい場合、利用規約にスパム行為を禁止事項として定めていなければ、一度サービス提供契約を締結した以上、明確な根拠なくそのユーザーの利用を禁止することは難しいでしょう。しかし、スパム行為を禁止事項として定めていればこれを根拠に対応をとりやすく、ユーザーとしても利用規約に規定されている以上、了承せざるをえないでしょう。

 

禁止事項規定の重要性

 利用規約に規定すべき事項は多数ありますが、その中でもユーザーがウェブサービスを利用するにあたりやっては行けない事項 「禁止事項」をどのように定めるかは大変重要なことの一つです。

※その他、利用規約を定めるにあたって慎重な検討を要する事項としては、「免責条項」、「サービスの変更・一時停止」、「規約の変更」、「知的財産権の帰属」、「入会(登録)の条件」、「退会(契約の解除)」等があります。

 

 利用規約全体の定め方にも共通しますが、以下のようなポイントを意識して禁止事項をさだめるとよいのではないでしょうか。

 1.禁止事項は適度に具体的に定めること
 2.目的に応じて禁止事項を分類すること
 3.違反した場合の効果を定めておくこと

 

禁止事項は適度に具体的に定めること

 禁止事項は、広くカバーできるように定めておけば、いかなる場合にも対応できるように考えられるかも知れません。しかし、例えば以下のような規定はどうでしょうか。

 「本サービスの円滑な運営に支障を及ぼす一切の行為を禁止する。」

 上記のように定めた場合、ユーザー側としては、具体的にどのような行為が禁止されているのか了解できないため、サービスを提供する側が本当に禁止したい行為が行われてたり、ユーザーとしてもサービスの利用自体を躊躇する事態も想定できます。

 また、あまりに禁止の対象が抽象的であるため、そもそも「本サービスの円滑な運営に支障を及ぼす行為」が何であるかについて、ユーザーとの間に議論が生じ、紛争に発展してしまう可能性もあります。

 ウェブサービスを円滑に運営し、ユーザーの問い合わせやクレーム等を迅速に解決するためには、ユーザーが禁止行為を具体的に把握できる程度に、禁止事項が具体的に規定されている必要があります。

 しかし、禁止事項を極端に具体的に記載することはおすすめできません。
 規定が具体的すぎると、禁止事項として記載した行為とほぼ同じであるのに少しだけ違う行為について細かく禁止事項として定めなければならなくなり、そうすると、利用規約として記載すべき分量も多くなり、ユーザーにとって読みづらいばかりか、サービスを提供する側にとっても禁止事項を把握できない状態に陥る可能性があるからです。

 禁止事項を定める際には、カバーする範囲を広くすることも意識しつつ、適度に具体的に定めるとよいでしょう。
 

 

目的に応じて禁止事項を分類すること

 いざ禁止事項を利用規約に記載していこうとする場合、他社サービスで採用している禁止事項や思いついた禁止事項を羅列してしまう方も多いと思います。
 しかし、このような定め方をすると、禁止事項に重複が生じてしまったり、整合性のとれない禁止事項を定める結果になってしまったり、何のために禁止しているのか分からない禁止事項を定める結果になってしまったりします。

 禁止事項を記載する際には、①禁止する目的から禁止事項を考えること、②禁止する目的に応じて禁止事項を分類して記載すること、を意識すると読みやすく適切な利用規約になるのではないでしょうか。

 ウェブサービスにおいて考えられる禁止目的としては、例えば以下のようなものが考えられるのではないでしょうか。

・法令違反等を防止する目的
 → 犯罪・犯罪関連行為、公序良俗違反行為、反社会的行為などの禁止

・不適切な表現を防止する目的
 → わいせつ表現、残虐な表現、著しく暴力的な表現、名誉・信用毀損行為などの禁止

・他のユーザーを保護する目的
 → 無限連鎖講・連鎖販売取引への勧誘行為、スパム行為、宗教への勧誘、出会い系目的での利用などの禁止

・サービスの運営に対する障害を防ぐための禁止事項
 → システム障害を生じさせる行為、不当な問い合わせ・要求行為などの禁止

・その他
 → 未成年者の利用、なりすまし行為などの禁止 バスケット条項

 

違反した場合の効果を定めておくこと

 比較的有名なウェブサービスの利用規約においても、禁止事項は定めているが、禁止事項に違反した場合の効果について定めていない利用規約をみることがあります。
 禁止事項を定める以上、これに違反した場合の制裁的措置を定めておかなければ、規約違反行為に対して適切な対応をとれない場合もあるため、違反した場合の効果は必ず定めるべきでしょう。

 違反した場合の効果としては、違反行為の重大性の程度や繰り返しの有無により、段階的な措置を定めておくとよいでしょう。例えば、以下のような効果を考えることができます。

 第一段階:違反行為を構成するコメントや投稿等の情報を削除
 第二段階:一定期間の利用停止/利用履歴やポイント等の抹消
 第三段階:アカウントの抹消、再登録の禁止 など

 

バスケット条項を忘れずに

 考え得る禁止事項を具体的に列挙したとしても、想定もしない方法でサービス運営の支障となる行為がなされる場合もあります。
 そのような場合に備えて、必ず下記のような包括的な禁止条項(バスケット条項)を末尾に追記しておくとよいでしょう。

 「その他、当社が不適切と判断した場合」

 このようなバスケット条項は、禁止の範囲が不明確であり、ユーザーに過度に不利益であるとして、訴訟になった場合は無効と判断される可能性もありますが、バスケット条項の存在によって納得してくれるユーザーも存在しうる場合や、想定できない事態については有効性を認められる場合もあることから、ユーザー対応のコストを軽減するために定めておく意味はあるでしょう。

 

禁止事項の定め方のサンプル

 最後に、比較的シンプルな形で禁止事項のサンプルを紹介したいと思います。
 もっとも、禁止事項は、サービスの特性や運用の実態に応じて作成していくべきものであるため、ここで紹介するサンプルはあくまでもっとも簡単な例として、参考にしていただければ幸いです。

 

第X条(禁止事項)
 ユーザーは、本サービスの利用にあたり、以下の各号のいずれかに該当する行為を行ってはなりません。以下の各号に該当すると当社が判断した場合、当社は、事前に通知または催告することなく、当該ユーザーについて①本サービスを介して送信されたデータの削除、②本サービスの利用の一時停止、③登録アカウントの抹消および本サービス利用契約の解除の措置をとることができるものとします。
-法令違反行為等-
(1)法令違反行為または犯罪・犯罪関連行為
(2)公序良俗に違反する行為
(3)当社、他のユーザーまたはその他の第三者の生命・身体、財産権、人格権その他の権利または利益を侵害する行為
-不適切な表現-
(4)本サービスを介して以下に該当する表現を内容とする情報の送信行為
 ・わいせつな表現
 ・過度に暴力的または残虐な表現
 ・著しい生理的嫌悪感を生じさせる表現、不衛生な表現
 ・当社、他のユーザーまたはその他の第三者の名誉または信用を毀損する表現
 ・差別を助長する表現
 ・自殺・自傷行為を助長する表現
 ・薬物の乱用を助長する表現
 ・その他反社会的な表現
-本サービスの障害となる行為-
(5)当社のネットワークまたはシステムに過度な負担をかける行為
(6)当社のネットワークまたはシステムに不正にアクセスする行為
(7)当社のネットワークまたはシステムに向けて有害なプログラムを送信する行為
(8)当社に対して不当な要求・クレーム等を繰り返す行為
-他のユーザー等の迷惑となる行為-
(9)他のユーザーまたはその他の第三者の個人情報またはプライバシーに関する情報を公開する行為
(10)無限連鎖講、連鎖販売取引等への勧誘行為
(11)宗教への勧誘行為
(12)面識のない異性または同性との出会いを目的とした利用行為(いわゆる出会い系目的)
(13)アダルトサイト、ワンクリック詐欺サイト等への誘導を目的とした行為
-その他-
(14)未成年者の利用行為
(15)氏名、身分、肩書等を偽る行為、なりすまし行為
(16)その他、当社が不適切と判断する行為

 

契約書のポイント ~知的財産権の帰属~
契約書のポイント ~暴排条項~
契約書のポイント ~損害賠償条項~
契約書のポイント ~解除条項~
契約書のポイント ~合意管轄条項~

 

本記事は、2014年10月20日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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