法務・税務・労務などの問題解決エンジン
some system placed here.

医療保険制度改革法がめざす姿

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

医療保険制度の持続的な運営を目指して

医療保険制度改革法が2015年5月27日の参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。少子高齢化により社会保障費は増え続けている。2015年度予算では社会保障費は歳出全体の32.7%の31兆5千億円。その社会保障費のうち、医療費の部分について幅広い負担を行うことにより、制度の維持を目指すもの。ポイントとなる項目は次の通り。

1.国民健康保険の運営を市町村から都道府県に移管 
2.後期高齢者支援金の全面報酬割の導入 
3.入院時の食事代(入院時食事療養費)の段階的な引き上げ 
4.紹介状なしの大病院受診時の定額負担の導入 
5.「患者申出診療」(現在の混合診療の拡大) 

 

この法案の正式名称は、「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」。この法律単独ではなく、医療保険制度を持続可能なものにするために、関連法案を改正しようとするもの。具体的には、国民健康保険法、健康保険法、後期高齢者医療確保法、など。なぜ、このように複数の法律を改正する必要があるのか。その答えは、日本の医療保険の成り立ちの歴史と理念に関係がある。

日本の医療保険制度は、先行して設立された職域保険である健康保険の対象とならない者を、後に創設された地域保険である国保がカバーする形で成り立っている。医療保険の各制度は分立したまま現在に至っている。(中略)これらとは別に、75歳以上の者が一律加入する後期高齢者医療制度が平成20年度から設けられている。(引用元:立法と調査 2015.4 No.363 医療保険制度改革関連法案の概要と論点

持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案要綱
第一 改正の趣旨

持続可能な社会保険制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく措置として、持続可能な医療保険制度を構築するため、医療保険制度の財政基盤の安定化、医療保険の保険料に係る国民の負担に関する公平の確保、医療保険の保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等の措置を講ずるほか、患者の申し出に基づき厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養を保険外併用療養費の支給の対象とする等の措置を講ずること。

参考サイト:厚生労働省 第189回国会(常会)提出法律案

 

社会保険制度と福祉のはざまで

このような医療保険制度のなかで、財政運営と社会の安定を実現していくは難しい課題だ。被用者保険制度は保険原理を使った社会保険方式であるが、国民健康保険法や後期高齢者医療制度は、福祉的な意味合いが強く、それを実現するための手段として社会保険方式を使っているという面があるからである。そのことが、保険料と保険サービスの対応、運営のことをわかりにくくしている。

医療保険制度は民間の保険のように完全な保険原理に基づいて運営されているわけではない。特に、財政運営における場面においてそれは顕著である。わが国の健康保険制度は、主に現役世代の保険料を原資とする支援金等を通じて高齢者医療制度を支える構造になっている。

国民健康保険には現役世代が加入する健康保険組合や協会けんぽ等からの財政支援が行われ、75歳以上の後期高齢者医療制度には現役世代からの支援金に加え、公費も投入されている。(中略)本来、社会保険料は「負担」と「受益」が対応していることによって租税と大きく差別化されるのだが、現状では健康保険料によって「負担」と「受益」の対応関係を把握することは困難(後略)。(引用元:NikkeiBPnet 日本総研・西沢和彦氏が語る 「社会保障・税の一体改革」の深層④

 

社会保障費、医療費の増大を問題視した報道は多い。しかし、それは経済成長の範囲を超えて国民負担が増大するからこそ懸念されることだ。
前述のように社会保険方式と、相互扶助の精神に基づく福祉の観点から医療制度をどのように持続的に運営すればよいか、など考えなければならないことは山積している。問題点を指摘して煽り立てる報道は多いが、解決案や対案を例示して国民が考えるヒントを与える報道は少ない。
この法案の可決がきっかけとなり、ひとりひとりがどう行動したらよいか、またこの国の医療のありようについて国民的な議論が行われるきっかけとなることが望まれる。

 

参考記事:
国民負担率、過去最高更新もまだまだ低い?
”死亡消費税”と膨張が続く社会保障費

 

本記事は、2015年06月12日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

prof Kasiko編集部

編集チーム

  • 所属:Kasiko

関連記事


新着記事
公式Facebookページ 公式Facebookページ
誰に何と相談していいかわからない方へ
050-7576-0762
[日本法規情報]
  • 平日10:00~20:00
  • 土日祝終日、受付のみ対応

誰に何と相談していいかわからないあなた。
私達が相談相手探しのお手伝いをいたします。

無料相談・全国対応 050-7576-0762 お電話ボタン