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契約の成立、解除、取消を有効に行うために ~意思表示の到達~

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「意思表示」は有効になされているか

 契約の成立要件である「承諾」が有効にあったかどうか、契約の「解除」や「取消」が有効になされているかどうか、は裁判でも重要な争点となります。
 
 「承諾」や「解除」、「取消」は法律上「意思表示」と呼ばれます。
 「意思表示」が対面で行われた場合も問題となりますが、今回は離れた場所にいる相手方に対して郵便等で「意思表示」を行う場合について、「意思表示」が法律上有効と判断されるための条件についてご紹介します。

※「意思表示」は日常でも使う言葉ですが、法律上は、“一定の法的効果を発生する意図を外部に表示する行為”という意味付けがなされています。

 契約の成立要件である「承諾」や、「解除」、「取消」を有効にするため、その事実を証拠に残すために、注意して頂きたいことが伝われば幸いです。

 

民法の原則は到達主義

 民法は、離れた場所にいる相手方に対する「意思表示」が法的効果を発生する時期について「その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。」と定めています。

民法第97条(隔地者に対する意思表示)1項
隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

 

 そのため、「承諾」「解除」「取消」などの「意思表示」が効力を生ずるためには、これらの「意思表示」が相手方に「到達」しなければなりません。

※実務的に重要な行為として時効中断原因となる「催告」があります。「催告」は厳密には「意思表示」ではなく「意思の通知」にあたりますが、判例は消滅時効制度の趣旨からして「これが債務者に到達して初めてその効力を生ずる」(東京地裁平成10年12月25日判決)として、「意思表示」と同じく「到達」を基準にしています。

 では、「到達」というためにはどのような状態にあることが必要でしょうか。
 判例は、「到達とは、相手方によって直接受領され、または了知されることを要するものではなく、意思表示または通知を記載した書面が、それらの者のいわゆる支配圏内におかれることをもって足りる」(最高裁昭和43年12月17日判決等)としています。

 より具体的には、「意思表示」が記載された郵便物が郵便受けに入れられたり、同居人が受け取っていたりすれば、相手方が実際にその郵便物を認識しなくても「到達」は認められるということになります。

 

証拠とするためには内容証明郵便

 もっとも、裁判では「到達」の事実は「承諾」や「解除」「取消」の法的効果発生を主張する側が立証しなければなりません。
 上記判例のように「意思表示」を記載した郵便物等が相手方の「支配圏内」に置かれたことを普通郵便などによって立証することは実は困難です。

 例えば、普通郵便による場合、その郵便物が相手方の郵便受けに入れられたかについて郵便局に記録は残りません。

 また、郵便物を郵便受けに入れたことの記録をする「特定記録」、相手方が受領したことを記録する「書留」というサービスがあります。これらはある郵便物が相手方に「到達」したことまでは立証できますが、その郵便物の内容までは証明できないために「意思表示」がなされたことまでは完全に立証できないのです。

 「意思表示」の「到達」の事実をもっとも確実に証明するのは「内容証明郵便」です。
 「内容証明郵便」は配達される郵便の内容と同じものを郵便局が保管するので、その郵便物が「意思表示」を含む一定の記載内容であったことを証明できますし、書留の扱い(通常は配達証明もつけます)となるため、「到達」の事実も立証できます。

 

相手方に内容証明郵便が配達されない場合

 「内容証明郵便」は意思表示の事実を立証するための確実な方法ですが、内容証明郵便が相手方不在のために局留となり、留置期間を過ぎて差出人に戻されてしまう場合、意思表示の「到達」はあったといえるのでしょうか。

 郵便物等が相手方の「支配圏内」に置かれたか否かという前述の基準からすれば、郵便物が局留となっている以上、相手方の「支配圏内」にあるといえず意思表示の「到達」はないとも言えそうです。

 しかし、このように考えると相手方不在の場合には解除や取消、催告などが事実上困難になってしまう不都合もあります。

 最高裁判例では、遺留分減殺の意思表示を記載内容とする内容証明郵便が相手方不在のために差出人に還付された事例について、①受取人が郵便物の内容を推知しうること、②郵便物が容易に受領可能であること、を要件として、内容証明郵便が受取人にとって領置可能な状態に置かれた、すなわち意思表示の「到達」を認めるという判断をした事例があります。

最高裁第一小法廷平成10年6月11日判決
「受取人が、不在配達通知書の記載その他の事情から、その内容が遺留分減殺の意思表示または少なくともこれを含む遺産分割協議の申し入れであることを十分に推知することができ、また、受取人に受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって、さしたる労力、困難を伴うことなく右内容証明郵便を受領することができたなどの判示の事情のもとにおいては、右遺留分減殺の意思表示は、社会通念上、受取人の領置可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で受取人に到達したものと認められる。」と判示。

 

 相手方の不在や受領拒否が想定される場合には、上記判例による救済は考えられるものの、意思表示の「到達」の立証をできる限り容易にするため、事前に複数の方法での意思表示を検討しておくのもよいのではないでしょうか。

 たとえば、内容証明郵便と同時に同内容の特定記録による郵便を送り、内容証明郵便に同内容の特定記録郵便を送った旨を記載するなどの方法により、意思表示の「到達」を立証する方法等も考えられます。

 なお、電子メール等による意思表示も面白いテーマです。電子契約法によって契約の成立要件である「承諾」については法的手当がなされていますが、解除の意思表示や取消の意思表示については立証が難しい場面も想定されそうです。
 このテーマについては別の機会に検討したいと思います。

 

本記事は、2016年02月01日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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