法務・税務・労務などの問題解決エンジン
some system placed here.

契約交渉過程の証拠化のススメ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

契約書を作成しない場合には交渉過程等の証拠化は特に重要

 売買契約や業務委託契約、貸金契約などの契約を締結する場合、契約条件を明確にしておくために契約書を作成しておくことは大変重要です。

 しかし、慣行的に取引をしている相手との間では、契約書作成の手間や印紙代を省くために、契約書を作成しないことがあるようです。また、定型的な契約書ひな型を用いた場合など、合意のあった契約条件が契約書に明記されていない場合もあるようです。

 ご存じの方も多いと思いますが、保証契約などの一定の契約を除いて、口頭の約束でも契約は成立し、契約書の作成を必ずしも必要としません。

民法第446条2項(保証人の責任等)
保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。

 

 口頭の約束であっても契約は有効に成立しますが、裁判になった場合、契約の成立や契約条件を何の証拠もなく裁判所に認めてもらうことは困難な場合があります。

 契約書がない場合、または当事者の主張する契約条件が契約書に明記されていないような場合、裁判所は当事者の主張する合意の存在について、交渉過程や契約締結後の事情から見て合理的に推認できるかという視点から判断します。

 そのため、交渉過程や契約締結後の事情を裁判所に提出できる形で証拠化しておくことが重要になります。

※例えば、売買契約において売買代金に争いがあるような場合、売買決済日直前に買主が多額の預金を引き出しているような場合、引出金額から売買代金を推認できる場合もあります。

※また、例えば、請負契約において、受託者が見積もりの電子メールを出した後、発注者から何の返信がなくても、その後、発注者の事業所などで受託者による業務が開始し完了したのであれば、見積もりの金額で請負契約が成立したことを推認できる場合もあります。

※上記例はあくまでも一例であり、当事者から主張・立証される事実を総合的に判断して事実認定は行われます。

 

証拠化の方法

 具体的な証拠化の方法について下記で紹介します。

 

・合意内容のメモを作成しておく(書面/電子メール)
 契約条件の交渉が電子メール等で行われた場合には、電子メールのログがそのまま証拠となります。
面談により交渉がなされた場合でも、面談の終わりに議事録のような形でメモを作成し、これに当事者双方が確認の署名をするなどの方法もあります。

※議事録メモを作成する場合、打ち合わせの日時・場所・出席者の記載をしておくべきです。

※議事録メモに代わる方法として、面談のその場で合意内容や交渉内容を記載した電子メールを相手方に送信し、了解した旨の電子メールをその場で返信してもらう方法もよいと思います。この方法だと、日時と当事者は自動的に双方の電子機器に記録されることになります。

 

・日誌、手帳への記録をする
 一方当事者が作成するものであるため、前述の合意内容のメモより証拠としての価値は劣りますが、継続的に記録されている日誌・手帳に打ち合わせの日時・場所や交渉内容のメモを記載しておけば、これが有効な証拠となる場合もあります。

 

・見積書/請求書等を作成する
 売買契約や請負契約において、双方の合意ではなくても、金額や業務内容を記載した見積書・請求書を相手に送付しておけば、これが契約条件を推認させる証拠となる場合もあります。送付の方法としては電子メール添付の方法がよいように思います。送付相手方や送付日時、送付内容が記録され簡単に実行できるからです。書留または特定記録による方法も可能ですが、送付内容までは証拠化されません。

 

・通帳、領収証、移動記録等を保存する
 支払のために資金を準備した経過、物品製造や受託業務実施のための仕入れの経過、打ち合わせや受託業務実施のための移動の経過を証拠化するために、通帳の記載の写しをとり、仕入れの領収書を保管し、移動記録等を取得して、これらを整理しておくことも重要です。

 

契約書を作成した場合でも交渉過程等が重要な場合もある

 契約書を作成した場合(争点となる契約条件の記載がある場合)であっても、交渉過程や契約締結後の事情が重要となる場合もあります。

 考えられる場合の第一としては、契約書に記載された契約条件に解釈の幅があるような場合です。当事者が具体的にどのような認識のもとに当該契約条件を契約書に記載したのかを判断するうえで、契約締結に至る当事者のやりとり(契約交渉過程)を判断資料とする場合があり、契約交渉過程の証拠化が重要です。

 考えられる場合の第二としては、契約締結後、契約書の記載と異なる内容の慣行が成立しているような場合です。契約書の記載とは異なる内容の慣行が成立することにより事後的に契約内容が変更されていることを主張するために、慣行の内容を証拠化しておくことが重要です。

 

重要な契約では交渉過程を書面化する場合もある

 契約金額が多額になる場合など、重要な契約においては、最終的な正式な契約書を作成する以前の段階で、中間合意や契約の基本方針を明確化するための書面を作成する場合があります。

 海外における契約では「Letter of Intent」(レターオブインテント)という表題の書面を作成し、最終的な契約締結に向けた基本方針を明記し、これを各当事者が尊重するとともに、合理的な理由なく契約交渉を破棄した場合の損害賠償等について取り決められる例があるようです。

※「Letter of Intent」(レターオブインテント)に法的拘束力が生じるかという点については、具体的な場合によって異なります。特定の条項について法的拘束力が生じる/生じないと明記してある場合はその記載によりますが、明記がないような場合には条項の内容やそれまでの交渉過程をもとに判断されるように思います。

 

本記事は、2016年04月05日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所


新着記事
公式Facebookページ 公式Facebookページ
誰に何と相談していいかわからない方へ
050-7576-0762
[日本法規情報]
  • 平日10:00~20:00
  • 土日祝終日、受付のみ対応

誰に何と相談していいかわからないあなた。
私達が相談相手探しのお手伝いをいたします。

無料相談・全国対応 050-7576-0762 お電話ボタン