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契約書のポイント ~合意管轄条項~

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合意管轄条項とは?

 契約書で以下のような条項を見たことはありませんか?

第X条(合意管轄)

甲及び乙は、本契約に関して裁判上の紛争が生じた場合は、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。

 
 このような、条項は一般的に“合意管轄条項”と呼ばれています。

 どういう意味かというと、裁判を行うべき裁判所(「管轄裁判所」といいます。)を当事者の合意によって選択するという意味をもっています。

 このように、当事者の合意によって管轄裁判所を選択すること(「管轄の合意」といいます。)は、民事訴訟法11条1項によって認められています。

 ただし、この管轄の合意は「書面」でする必要があります(民事訴訟法11条2項)。そのため、管轄の合意をする場合は、契約書にしっかりと合意管轄条項を記載しておく必要があります。

 

合意管轄条項を定める意味

 合意管轄条項は、とくに契約当事者の事業所が離れた場所にある場合に、裁判のために発生するコストを抑えるために重要な条項となります。

 民事訴訟法の原則によると、管轄裁判所は被告(訴えられる側)の所在地を管轄する裁判所となる(民事訴訟法4条1項)ため、裁判を起こすためにわざわざ被告の所在地まで行かなくてはならず、費用と労力が多くかかってしまうという場合があります。

 
 例えば、東京にあるA会社と大阪にあるB会社が契約を締結し、B会社の債務不履行のために、A会社がB会社に対して裁判をしようとする場合、合意管轄条項を定めていなければ、A会社は裁判のためにわざわざB会社がある大阪の裁判所まで出向かなければなりません。一方、管轄裁判所を東京の裁判所とする合意管轄条項を定めていれば、A会社は東京でB会社を相手方として訴訟を行うことができ、費用と労力を節約できます。

 
 とくに比較的少額の裁判の場合には、裁判のために遠隔地に出向かなければならない費用と労力のために裁判をあきらめざるを得ない場合もあります。可能ならば、自らの所在地又はそれに近い場所の裁判所を合意管轄裁判所と定めておくとよいでしょう。

 

合意管轄条項の定め方のポイント

合意管轄条項を定めるときのポイントをご紹介します。

 
・「一定の法律関係に基づく訴え」に関して定めること

 管轄の合意は、「一定の法律関係に基づく訴え」に関して定める必要があります(民意訴訟法11条2項)。そのため、例えば、「一切の紛争について」合意管轄を定めることはできず、無効となってしまいます。必ず「本契約に関して生じた裁判上の紛争」などと記載し、合意が及ぶ紛争の範囲を限定しておく必要があります。

 
・「専属的」と定めておくこと

 管轄の合意の定め方は、厳密に言うと2つの定め方があります。一つは、合意した裁判所のみを管轄裁判所とする方法(専属的合意管轄)、もう一つは、法律により決まる管轄裁判所の他に当事者が合意した管轄裁判所を選択肢として追加する方法(付加的合意管轄)です。

 
 先のA会社とB会社の例で言うと、東京の裁判所を“専属的合意管轄”とした場合、A会社は東京の裁判所だけに訴えを提起することができます。一方、“付加的合意管轄”とした場合、A会社は、法律により決まる大阪の裁判所の他に、東京の裁判所を選択して訴えを提起することができます。

 このように、管轄の合意には2つの方法があるため、どちらの方法を採用したのか契約書上明確にする必要があります。通常は、自己に有利な裁判所を、“専属的”合意管轄裁判所として定めておけば十分なので、“専属的合意管轄裁判所とする”と記載します。

 
・「第一審の」と記載すること

 管轄の合意は、「第一審に限り」することができます。控訴審や上告審では管轄の合意をする事ができませんので、そのことを契約書上も明確にするため、「第一審の」と記載しておきます。

 

管轄の合意の注意点

 以下では、合意管轄条項を定めた場合の注意点をご紹介します。

 
・裁判における効果

 管轄の合意がなされていることについて裁判所は知りません。そのため、合意管轄条項と異なる裁判所に訴えが提起された場合、「管轄違いの抗弁」(民事訴訟法12条)という主張を裁判所に主張する必要があります。「管轄違いの抗弁」が認められた場合、その裁判は、基本的に、合意管轄裁判所に移送されることになります(民事訴訟法16条1項)。

 
・応訴管轄

 「管轄違いの抗弁」を主張せずに、相手方の訴えに対して反論をしてしまった場合(「本案について弁論」)、たとえ管轄の合意と異なる裁判所であっても、応訴管轄(民事訴訟法12条)といって、訴えが提起された裁判所に管轄が発生してしまいます。

 そのため、管轄の合意があることを「管轄違いの抗弁」として忘れずに主張する必要があります。

 
・合意の限界

 合意管轄裁判所に訴えが提起された場合であっても、その裁判所で裁判を行うことが不適当な場合には、裁判所の裁量により、適切な裁判所に訴訟が移送される場合があります。

 不適当な場合としては、「当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるとき」とされています(民事訴訟法17条)。

 

合意管轄条項のバリエーション

 合意管轄条項の定め方としては、以下の例のようなバリエーションがあります。

 
・本店又は支店の所在地の裁判所を管轄裁判所とする場合

 「甲及び乙は、本契約に関して裁判上の紛争が生じた場合は、甲の本店又は支店を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。」
 ※当方が「乙」の場合は、「乙の本店又は支店を・・・」としてください。

 
・少額訴訟等に対応するため簡易裁判所を含む場合

 「甲及び乙は、本契約に関して裁判上の紛争が生じた場合は、東京簡易裁判所又は東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。」

 

参考記事:
契約書のポイント ~損害賠償条項~
契約書のポイント ~解除条項~

本記事は、2014年03月31日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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