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契約書のポイント ~損害賠償条項~

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損害賠償条項とは?

契約書には、以下のような条項が定められる場合があります。

 第X条(損害賠償責任)
 「甲および乙は、相手方が本契約の各条項のいずれかに違反することにより損害を被ったときは、相手方に対し、その賠償を請求できる。」

このような条項は、いわゆる「損害賠償条項」と呼ばれるもので、多くの契約書に定められているものです。今回は、この損害賠償条項についてポイントを説明します。

 

損害賠償の目的

契約書に損害賠償条項を定める目的として、第一に、相手方が契約上の義務を履行しない場合(債務不履行)に、債務不履行がなければ得られたであろう利益(履行利益=逸失利益)を補償してもらうことをあげることができます。

 ⇒ 損害賠償の目的①
   “債務不履行がなければ得られたであろう利益を補償してもらうこと”

また、契約関係に入った当事者は、例えば、契約に秘密保持義務が定められているのに、相手方が営業秘密を漏洩して損害を受ける場合などもあります。損害賠償の目的の第二として、相手方の義務違反により受けた損害(積極損害)を補償してもらうことも挙げることができます。

 ⇒ 損害賠償の目的②
   “相手方の義務違反により受けた積極損害を補償してもらうこと”

さらに、損害賠償条項を定めて置くことによって、相手方に対して、契約上の義務の履行を心理的に強制するという目的もあげることができます。

 ⇒ 損害賠償の目的③
   “契約上の義務の履行を心理的に強制すること”

損害賠償条項を契約書に定める場合には、以上のような損害賠償の目的のうち、どのような目的を重視すべきか、ということを意識する必要があります。

 

損害賠償条項がないときは民法が適用される

契約書に損害賠償条項がない場合であっても、契約義務違反に対する損害賠償請求ができなくなるものではありません。
民法415条には債務不履行による損害賠償を定める規定があり、契約書に損害賠償条項がない場合であっても、この規定によって損害賠償を請求することができます。

※民法415条
「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。」

民法の規定があるのに、さらに契約書で損害賠償条項を定める意味は、前述損害賠償の目的③の“契約上の義務の履行を心理的に強制すること”のほか、民法の原則とは異なる損害賠償の条件を定めることにより、当該契約にあった適切なリスク管理を行うという点にあります。

例えば、民法の原則からすれば、損害賠償の範囲は民法416条により定められ、損害として証明された金額については賠償する責任が生じます。しかし、後述するように、契約書において、損害賠償の範囲や賠償額を限定することにより、損害賠償責任を負うリスクを限定することができます。

※民法416条
「1 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
 2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。」

※民法416条は、第1項で「通常生ずべき損害」(通常損害)の賠償を認めており、第2項では「特別の事情によって生じた損害」(特別損害)について、予見・予見可能性がある場合にのみ、その賠償を認めています。
通常損害と特別損害の判断は難しく、個別の契約ごとに判断されることになりますが、例えば、売買契約における目的物の転売利益や、土地賃貸借契約におけるその土地で営業活動を行うことにより得られたであろう利益などが特別損害とされた事例があります。

 

リスクを限定するための損害賠償条項の定め方

契約の種類によっては、損害賠償金額が予測できない場合もあり、予想外の損害賠償請求をされる可能性がリスクとなり、適切な契約が結べない場合もあります。
例えば、サービス提供を目的とする契約の場合、損害賠償リスクが適切に限定されていなければ、そのリスクをサービス提供価格に転嫁せざるを得ない場合もあることから、契約の内容に応じてあらかじめリスクを限定した損害賠償条項を定めておくことは、よりフェアな契約を結ぶために有効です。

損害賠償リスクを限定するための方法としては、例えば、以下のようにあらかじめ損害賠償の範囲と金額が予測できるように損害賠償条項を定めておくことができます。

【賠償額を定額で定める定め方の例】
「甲および乙は、相手方が本契約の各条項のいずれかに違反することにより損害を被ったときは、相手方に対し、損害賠償として金XX円を請求できる。」

【賠償額を違約金として定める定め方の例】
「乙が、その責めに帰すべき事由により、第X条の義務の履行を遅滞したときは、甲は、乙に対して、遅滞日数1日あたり金XX円を違約金として請求できる。」

※上記2つの定め方は、賠償額の予定(民法420条1項)と呼ばれるもので、この賠償額の予定が定められた場合、当事者および裁判所がこれに拘束されることから、賠償予定額以上の損害が生じたとしても、原則として、それ以上の損害賠償を請求できなくなります。

【賠償を通常損害等に限定する定め方の例】
「甲および乙は、相手方が本契約の各条項のいずれかに違反することにより損害を被ったときは、相手方に対し、通常損害(逸失利益を含まない)に限りその賠償を請求できる。」
 
※通常損害にあたるか特別損害にあたるかは判断が難しい場合もあるため「通常損害に限り」とするだけでは不十分かもしれません。上記のように「逸失利益を含まない」ことを明記するなど、通常損害に限定するだけでなく、損害の種類・性質に言及して損害賠償の範囲を明確にするとよいでしょう。なお、逸失利益は仮定の計算をせざるを得なくなるため、損害賠償額が予想外に高額になるリスクがあると考えています。

【契約金額を賠償額の上限とする定め方の例】
「甲および乙は、相手方が本契約の各条項のいずれかに違反することにより損害を被ったときは、相手方に対し、第X条に定める契約金額を上限として賠償を請求できる。」

※上限の定め方のバリエーションとしては・・・
 ・「既に支払われた契約金額の合計を上限として」
 ・「1年分の契約金額の合計を上限として」 (毎月支払いがある継続的契約の場合)
 ・「過去1年間に既に支払われた契約金額の合計を上限として」

 

金銭債務の場合には要注意!

債務のうち金銭を支払うことを目的とする債務(金銭債務)の不履行に関する損害賠償には注意が必要です。民法419条により以下のような金銭債務の特則が定められています。

【特則①:賠償額が法定利率によって定められる(民法419条1項)】
「金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。」
 ⇒ 第1に、金銭債務不履行の場合、損害賠償の額は原則として、法定利率により定められます。法定利率は、民法では年5%(民法404条)ですが、商取引であれば、年6%(商法514条)です。
 ⇒ 約定利率を定めた場合は、約定利率によりますが、他の法律により利率の上限が定められていることに注意してください。例えば、下請法上の遅延利息の利率は年14.6%とされています(下請法4条の2、公正取引委員会規則)。

【特則②:損害の証明が不要(民法419条2項)】
「前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。」
 ⇒ その他の債務不履行によって生じた損害については、債権者が損害の発生と損害額を証明する必要がありますが、金銭債務の不履行は、賠償額が法定利率または約定利率で決まっていることの裏返しとして、これらの証明が不要となっています。

【特則③:不可抗力により免責されない(民法419条3項)】
「第1項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。」
 ⇒ 不可抗力とは、天災など人の力ではどうにもならない事象のことです。その他の債務不履行については、不可抗力による場合など、自分の責任による債務不履行ではないことを立証すれば損害賠償責任を免れますが、金銭債務については、相手方の責任によることを立証しない限り、責任を免れないことになります。

金銭債務については、その他の債務不履行とは別個に、損害賠償条項を定める例もあります。この場合は、主に、法定利率とは異なる約定利率を定め、金銭債務履行に対する心理的強制力を強めることが目的といえるでしょう(損害賠償の目的③)。

【金債務不履行の場合の約定利率の定め方の例】
「甲が乙に対する第X条に定める支払いを怠ったときは、甲は、乙に対して、支払期日の翌日より完済の日までの遅延損害金を年14.6%の割合(1年を365日とする日割り計算)によって支払う。」

 

さいごに

以上、概要だけですが、損害賠償条項についてポイントをご理解頂けましたでしょうか。
損害賠償条項は、契約書の中でもよく見る条項ですが、十分な検討がなされずに合意されている場合も多いように思います。
債務履行に対する心理的強制力ということのほかに、相手方の債務不履行リスクへの対応策として、また、逆に債務を履行できない場合の損害賠償リスクを十分に考えて、損害賠償条項について検討していただければ幸いです。

 

参考記事:
契約書のポイント ~解除条項~
契約書のポイント ~合意管轄条項~

本記事は、2014年06月23日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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