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契約書のポイント ~支払に関する条項~

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支払に関する条項のポイント

 売買契約や業務委託契約など、代金や委託料、報酬という名目で金銭の支払が発生する契約には多くの種類があります。
 今回は、支払に関する条項について、私の経験からお役に立てそうな情報をご紹介したいと思います。

 支払に関する条項のポイントは大きく分けて二つです。
第1に、支払条件を明確にしておくこと
第2に、支払が遅滞されたときのサンクションを定めておくこと

第1のポイントについてさらに細かくすると以下のようなポイントを押さえる必要があります。

 ①当事者に関する条件
 ②支払内容の特定に関する条件
 ③支払時期に関する条件
 ④支払方法に関する条件

 

当事者に関する条件

 例えば、「X社は、乙社に対し・・・」や「甲は、乙に対し・・・」などのように、【誰が誰に対して】支払を行うのかを明確にしておきます。
 当然のことですが,この部分の当事者が逆になっている契約書,あるいは誰に対して支払うのかが不明確である契約書がときどきあります。ご自身で契約書を作成する際にはぜひ注意してください。

 

支払内容の特定に関する条件

 支払内容として【何の対価として】、【金銭をいくら】支払うのかを明確にしておく必要があります。

 【何の対価として】ということを明確にするのは、例えば契約の内容としてA業務とB業務などの複数の業務があり、各業務について別個報酬を計算する必要がある場合、業務の対価としての報酬のほかに実費精算などが生じる場合などは特に重要です。
 支払われた金額がある特定の業務の対価として支払われたことを明記しておかなければ、支払われた金額のなかに他の業務や実費が含まれていたと解釈される余地もあり、後に紛争の原因になってしまいます。
 契約書には、例えば「第x条に定めるxx業務の対価として」などの文言を入れるとよいでしょう。
 定期に支払を受けるような場合には、「毎月x日までに,前月のx業務の対価として」などのように、いつからいつまでの業務の対価なのかも明確にする必要があるでしょう。

 また、当然ですが【金銭をいくら】支払うかという点についても一義的に明確な解釈がなされるように記載しておきましょう。
 「妥当な金額」、「相当な金額」や「別途協議して定める」などの記載は、支払条項を定める意味がないといってもよいでしょう。
 さらに、あわせて消費税等の扱いについても「税込み」/「税別」などの記載を明記しておくとよいでしょう。
 「金100万円(税別)を支払う。」や「毎月x日までに金x万円(税込み)を支払う。」などの明確な記載にしておきましょう。

 

支払時期に関する条件

 支払時期を明確に定めておくことは当然重要なことです。
 以下では、支払時期の定め方のバリエーションを紹介したいと思います。

【支払期限を定める場合】
甲は、乙に対して、第x条に定める業務の対価として、金xxx万円を平成xx年x月x日までに、乙の指定する銀行口座に振り込む方法によって支払う。

【定期に支払を受ける場合】
甲は、乙に対して、第x条に定める業務のうち前月1日から末日までの業務の対価として、金xx万円(税別)を、毎月x営業日までに、乙の指定する銀行口座に振り込む方法によって支払う。

【業務の進捗具合によって支払を受ける場合】
甲は、乙に対して、第x条に定める業務の対価として、以下の金員を乙の指定する銀行口座に振り込む方法によって支払う。
 ①本契約締結日からx営業日以内  金xxx万円(税別)
 ②ソフトウェア仕様書完成からx営業日以内 金xxx円(税別)
 ③ソフトウェア検収完了からx営業日以内 金xxx円(税別)

 

支払方法に関する条件

 支払方法とは、例えば「乙が指定する銀行口座に振り込む方法によって支払う。」や「乙の事務所(xx市xx区xx-1-1-1)に持参することによって支払う。」などの記載です。
 債権者としては、例えば飲み会の席でいきなり多額の金銭を渡されるなど突然弁済を受けても困る場合があります。また、債務者は支払ったと主張していますが、いつ従業員の誰にどこで支払ったのか確認がとれない場合があります。
 そのような場合に備えて、支払方法を指定しておき、それ以外の支払について弁済と認めないこととするためにも支払方法に関する条件を定めておくべきです。

 なお、支払方法に関する契約書上の定めがない場合、民法の規定によって「債権者の現在の住所」において金銭の支払がなされることになります。

民法第484条(弁済の場所)
弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。

 

支払が遅滞した場合のサンクションを定めておく

 支払に関する条項を定める場合は、支払が遅滞した場合のサンクション(制裁)に関する条項を定めておくことをおすすめします。
 支払が遅れた場合に受けるリスクにある程度まで対応するため、債務者に対して支払を確実にしてもらうために定めておきます。

 サンクションの種類として考えられるものは複数ありますが,例えば以下のような条項です。

【遅延損害金】
 債務者による支払が遅れた場合に、一定の利率等による損害金を予め約束しておくものです。注意しなければならないのは、法律によって利率が定められている場合があることです。紙幅の関係で利率については別の機会に解説します。

(遅延損害金条項の例)
甲が第x条の金員の支払いを怠った場合,甲は,支払期日の翌日より支払済みまで,年14.6%の割合(1年を365日とする日割計算)によって遅延損害金を支払うものとする。

 なお、遅延損害金条項を定めなかった場合は,民法419条1項・404条(年5%)または商法514条(年6%)が適用されます

 

【解除】
 業務委託契約書などの、支払の対価となる業務が存在する場合にはサンクションとして有効な規定です。例えば、発注者側の金銭支払が著しく遅れているが、まだ業務が残っているような場合、支払遅延を理由として契約を解除することにより残っている業務を実施せずに契約から解放されることができます。
 解除条項の定め方については、過去の私の記事をご覧ください。

 参考記事:契約書のポイント ~解除条項~

 なお、解除条項を定めなかった場合、民法541条により履行の催告をしてもなされない場合には解除することができます。

民法第541条(解除権の行使)
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

 

【期限の利益喪失】
 弁済期が到来していない支払が残っているような場合(例えば支払が分割の場合)、支払が遅延したことを条件に、残りの弁済期が到来していない支払についても弁済期が到来したものとする条件を定めることもできます。これを期限の利益喪失条項といいます。
 これによって、本来は弁済期が到来していない支払債務についても遅延が発生した時点から遅延損害金が発生することになります。

(期限の利益喪失条項の例)
甲が第x条の金員の支払を怠った場合,甲は,乙に対する一切の債務について当然に期限の利益を失い,直ちに債務を弁済しなければならない。

本記事は、2015年09月25日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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