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契約書のポイント ~暴排条項~

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暴排条項とは?

 暴排条項(暴力団等排除に関する特約条項/暴力団排除条項)とは、契約書等において、契約相手方に対し、暴力団等の反社会的勢力でないことを表明・保証させ、もし暴力団等の反社会的勢力との関係が判明した場合には、催告なしに契約解除できることなどを定めた特約条項です。

 近年、暴力団等の反社会的勢力は、いわゆるフロント企業などを通して、企業類似の活動をすることにより、または企業を対象とした活動により、その活動資金を獲得するようになっています。

 平成19年6月19日には、犯罪対策閣僚会議幹事会申合せの別紙として「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が発表され、企業と反社会的勢力との関係遮断の推進が強く打ち出されました。
 また、平成23年3月18日には、東京都暴力団排除条例が制定され、同条例18条においては、事業者の努力義務として、契約相手方が暴力団でないことの確認や、契約相手方が暴力団であることが判明した場合の解除条項制定などが定められました。

※参考リンク:法務省組織犯罪閣僚会議幹事会申合せ「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」発表ウェブサイト
※参考リンク:東京都 東京都暴力団排除条例 本文掲載のウェブサイト

 このような近年の状況からすれば、暴力団等の反社会的勢力との関係遮断のための措置をとることは、企業におけるコンプライアンスとして必要な対応であり、その一貫として、各種契約を締結する際に相手方が暴力団等の反社会的勢力にあたらないことを確認し、契約書に暴排条項を定めることは必要な対応といってよいでしょう。

※最近の反社関係コンプライアンス事案として、みずほ銀行の反社取引が判明し、平成25年12月26日、これに対して金融庁の行政処分がなされました。
参考リンク:金融庁「みずほ銀行およびみずほファイナンシャルグループに対する行政処分について」

今回は、暴排条項のポイントについて解説します。

 

暴排条項のサンプル

 暴排条項の定め方については、各企業でそれぞれのモデル条項があり、また、各関係事業者団体などでも暴排条項モデルを発表しています。

※参考リンク:警視庁組織犯罪対策課のウェブサイト 2011年6月30日「暴力団対策」のリリースとして、「不動産取引契約書の暴力団排除モデル条項・解説書」が発表されています。

 今回は、私が日常使うことの多い暴排条項を例に、その基本的なポイントを解説したいと思います。暴排条項の例は以下のようなものです。


第X条 反社会的勢力排除
1 甲および乙は、相手方に対して、本契約が締結された日および将来にわたり、自己または自己の役員および従業員が次の各号に該当する者または団体(以下、「反社会的勢力」という。)に該当しないことを表明し、保証します。
暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、政治活動、
社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等、反社会的勢力共生者
2 甲および乙は、合理的理由に基づき相手方が次の各号に該当すると判断した場合、何らの催告なしに本契約を解除することができます。
(1)反社会的勢力である場合、または反社会的勢力であった場合
(2)自らまたは第三者を利用して、相手方に対して以下の行為を行った場合
 (ア)違法なあるいは相当性を欠く不当な要求
 (イ)有形力の行使に限定しない示威行為などを含む暴力行為
 (ウ)情報誌の購買など執拗に取引を強要する行為
 (エ)被害者団体など属性の偽装による相手方への要求行為
 (オ)その他「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」で禁止されている行為
(3)相手方に対して、自身が反社会的勢力である、または、関係者である旨を伝えるなどした場合
3 甲および乙は、前項により本契約を解除したことにより相手方に損害が生じたとしても、一切の損害賠償を負いません。

 

ポイント1 表明・保証

 第1項は、契約を締結するにあたり、暴力団等の反社会的勢力ではないことを相互に表明し、かつ、保証するという内容の条項です。
 このような内容を契約条項とすることにより、契約当事者が暴力団等の反社会的勢力でないことは契約の内容となりますから、表明・保証した内容と異なって、暴力団等の反社会的勢力であることが判明した場合には、契約上の義務違反となり、解除や損害賠償の理由とすることができます。

 ポイントとしては、法人それ自体のみではなく、法人を隠れ蓑的に利用する場合などに言い逃れを防止するため、その役員や従業員についても反社会的勢力ではないことを表明・保証させる必要があります。
 また、契約時点だけではなく、将来についても表明・保証の対象としておく必要があります。

 

ポイント2 催告なしの解除

 第2項は、契約当事者が反社会的勢力であることが判明した場合や反社会的勢力的な行為があった場合には、催告を必要とせずに当該契約を解除できることを内容とする条項です。

 民法上の債務不履行解除(民法541条)は、原則として解除前に「相当の期間を定めて催告」することを必要としていますが、当事者の合意があれば、無催告解除とすることも可能です。

 相手方が反社会的勢力であることが判明した場合などは、当社のコンプライアンス上の重大な問題となり、信用問題に発展する場合もあります。また、反社会的勢力に対して断固とした姿勢を示すためにも、無催告解除と定めなければなりません。

 なお、東京都暴力団排除条例18条2項1号も事業者の努力義務として、無催告解除特約を定めるべきことを規定しています。

 

ポイント3 免責

 第3項は、第2項により相手方が反社会的勢力であることが判明した場合などによる無催告解除をした場合であっても、この解除によって反社会的勢力である相手方が被った損害の賠償をしないことを確認的に定めています。

 民法等の基本原則としては、相手方の債務不履行による解除をした場合は、基本的に解除をした側は損害賠償義務を負いませんが、反社会的勢力またはその関係者のなかには解除されたことを理由に不当に損害賠償請求をしてくる者も存在することが考えられます。
 その際に、契約書上の根拠をしっかりと示して、不当な要求を明確に拒絶するため、第3項のような規定を定めておくべきといえるでしょう。

 

ポイント4 反社会的勢力の定義

 暴力団等の活動が、いわゆるフロント企業などを介して行われ、その活動が巧妙化・不透明化している現状では、反社会的勢力を明確に定義することは難しいところもあります。

 前述の「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」においては「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である「反社会的勢力」をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である」とされており、属性要件・行為要件を意識した暴排条項の定め方をするとよいでしょう。

 暴排条項サンプルで言うと、第1項および第2項(1)において属性要件に着目して無催告解除できるようにしており、また、第2項(2)および(3)において行為要件に着目して無催告解除できるようにしています。

 

反社会的勢力の確認手段について

 暴排条項を実効的に使用するためには、相手方が反社会的勢力かどうかを確認する手段が必要です。
 一つの手段としては、最寄りの警察署や暴追都民センターに相談することが考えられます。

※暴追都民センター 正式名称は公益財団法人暴力団追放運動推進都民センターです。
警察と連携することにより暴力団追放運動を推進する民間の団体です。

 警察署や暴追都民センターへ相談する際には、契約相手方が反社会的勢力に該当することを疑う何らかの事情・理由を前提として相談するのがよいでしょう。

※参考リンク:警視庁 東京都暴力団排除条例Q&A Q2~Q2の4参照

 なお、すべての契約相手方に対して、事前に反社会的勢力か否かを完全に確認するのは不可能な場合もあります。コンプライアンス上は、反社会的勢力との関係を疑うに足りる具体的な事情・理由があった場合に適切な確認をすることで十分ではないかと考えます。

 

その他

 契約締結前に相手方が反社会的勢力またはその関係事業者であることが判明した場合、契約締結前であることから、暴排条項はまだ当事者間の契約内容とはなっていません。
 しかし、契約締結前の段階では、当事者には、契約を締結するか否かを自由に決定できる契約締結自由の原則があります。
 反社会的勢力またはその関係事業者が不当に契約締結を迫ってきても、契約締結自由の原則を理由に断固として契約締結を拒否し、警察署・弁護士などの関係機関に相談し、組織として対応するようにしてください。

 

契約書のポイント ~損害賠償条項~
契約書のポイント ~解除条項~
契約書のポイント ~合意管轄条項~

 

本記事は、2014年09月16日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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