法務・税務・労務などの問題解決エンジン
some system placed here.

契約書のポイント ~期限の利益喪失条項~

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

期限の利益喪失条項とは

 期限の利益喪失条項は、例えば、以下のような内容の契約条項です。

乙(債務者)が前項各号(解除事由)のいずれかに該当した場合、乙(債務者)は、当然に期限の利益を失い、甲(債権者)に対して本契約に基づいて負担する一切の金銭債務を直ちに弁済するものとする。

 

 「期限の利益」とは、期限がまだ到来しないために、支払などを免れている債務者の利益のことです。

 例えば、数ヶ月先の支払期限が設定されている場合、債務者はその期限到来まで支払う必要がないという利益を得ているということができ、このような利益を「期限の利益」といいます。

 「期限の利益喪失条項」とは、債務者に「期限の利益」が与えられている場合で、一定の事由が生じた場合には、その「期限の利益」を喪失することと定めておく条項です。

 例えば、期限の利益喪失事由として「一回でも支払を怠ったとき」と定めておき、実際に支払がなかった場合には、その他の債務についても「期限の利益」が喪失される結果、直ちに支払わなければならないとするものです。

 

債権回収を図る目的で定めておく

 期限の利益喪失条項を契約書に定めておく意味は、債務者の支払能力に不安が生じた場合などに、直ちに債権回収を図るためにあります。
 
 例えば、債務者に手形不渡りが発生した場合、“手形不渡り”を期限の利益喪失事由としておいた場合には直ちに支払を請求することができますが、期限の利益喪失条項を定めていなかった場合には契約で定めた支払期限が到来するまで支払を請求することができず、債務者の経済状態が悪化して倒産し、結果、全く回収できない場合もあります。

 債務者の支払能力に不安が生じた場合、期限の利益喪失条項によって直ちに支払請求できるとしても、その時点で債務者に十分な支払能力がない場合もありますが、期限の利益喪失条項を定めておくことによって、一部でも回収できる可能性はかなり高くなります。

 期限の利益喪失条項は、支払が一回で終わる契約の場合でも意味を持ちますが、支払を分割で行う契約や、継続的な支払が発生する契約(取引基本契約等)において、より効力を発揮します。

 

民法で定められる期限の利益喪失事由

 期限の利益喪失条項は、契約書で定めることもできますが、民法においても一定の事由が期限の利益事由として定められています。

 しかし、民法で定められている期限の利益喪失事由は、限定されており、また、時期が遅いために債権回収のための実効性に欠けます。

 支払を受ける契約当事者となる場合には、期限の利益喪失条項を定めておくことを積極的に検討してください。

民法137条(期限の利益喪失)
次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。

 

期限の利益喪失の事由の定め方

 期限の利益喪失事由の定め方としては、一般に債務者の支払能力に不安が生じる場合を定めておくことになりますが、解除事由と重なる場合も多いです。

 但し、解除条項は、相手方との契約関係を解消する(=自らの反対債務を免れる)ための条項であるのに対して、期限の利益喪失条項は、契約関係は残しながら、直ちに支払を求めるものであるため、解除事由ほどの信頼関係破壊は必要ないようにも思います。

 期限の利益喪失事由の具体例としては、以下のようなものが考えられます。

・一回でも支払を怠ったとき
・振出をした手形が一回でも不渡りになったとき
・差押え、仮差押え又は仮処分を受けたとき
・担保を滅失、損傷又は減少させたとき
・担保を供する義務を履行しないとき
・全部又は一部の事業の廃止をしたとき
・破産、特別清算、民事再生若しくは会社更生の申立をしたとき又は申立を受けたとき

 

 債務者について破産手続が開始されてしまった場合、債務者財産の管理処分権は破産管財人に移り、債務者から債権回収を図ることはできなくなってしまうため、「破産手続開始決定を受けたとき」や、その前段階の「破産手続開始の申立をしたとき」を期限の利益喪失事由として定めておくことは余り意味がないように思えます。

 破産に至る前段階の支払能力不安の段階を事由としておくと良いでしょう。

※なお、破産手続が開始されると、その時点で期限未到来の破産債権についても弁済期が到来したものとみなされます(破産法103条3項)。但し、その後は、破産債権として破産手続のなかで処理されるため、配当以外から債権回収を図ることはできません。

※関連する条項として、私は債務者の支払能力に不安がある場合には、反対債務(例えば、請負代金支払債務に対する請負業務履行債務)の履行を中断できるとする履行中断条項を提案する場合もあります。相手方の支払能力に不安があるため、人件費等を発生させて業務履行しても、代金を受け取れなければ人件費等を無駄に支出してしまうリスクがあるため、これを防止するためです。

※他の関連する条項として、相手方が当方に対して持っている債権との相殺を可能にする相殺条項を定めておき、相手方の支払能力に不安が生じた場合には、債権同士を相殺することで実質的に回収を図ることもできます。詳しくはまた別の記事で紹介したいと思います。

 

本記事は、2017年03月06日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

関連記事


新着記事
公式Facebookページ 公式Facebookページ
誰に何と相談していいかわからない方へ
050-7576-0762
[日本法規情報]
  • 平日10:00~20:00
  • 土日祝終日、受付のみ対応

誰に何と相談していいかわからないあなた。
私達が相談相手探しのお手伝いをいたします。

無料相談・全国対応 050-7576-0762 お電話ボタン