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日常的に行われている、呆れた診療報酬詐欺

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奈良の医療法人理事長がとった手口

詐欺事件はしばしば、人の命を守る病院等の医療機関でも起こる。
いわゆる”診療報酬詐欺”だ。

 

最近では、奈良県奈良市の精神科医療法人「光優会」の理事長が、”ニセの患者を診察したかのように装って診療報酬をだまし取った”容疑で奈良県警に逮捕されている。

 

なんとも呆れるその手口は、自らの法人に所属していた元職員の保険証番号を悪用して虚偽の”患者”に仕立て上げ、あたかも彼らを治療したかのようにみせかける手口で、相当分の診療報酬をだまし取っていたそうだ。

産経新聞が報じたところによると、逮捕された同理事長は、”平成20年1月~21年9月の21カ月間にわたり、診察したとする虚偽の「診療報酬明細書(レセプト)」を県国保連合会に提出し、計360万円の診療報酬をだまし取ったとされる”という。

また、この元従業員の保険証番号を悪用する同様の手口で、さらに5人分の診療報酬を受け取ったことも判明しているうえ、患者に”自立支援訓練”を施したとの虚偽の書類を作り、”自立支援給付金”を騙し取る手口等も併用して、総額で数千万円にものぼるカネを騙し取っていたとのこと。

 

なお、共犯として妻と男性事務長も書類送検されている。

※書類送検とは、被疑者を逮捕・拘束することなく、事件を検察官送致(事件を処理する権限と責任を警察から検察に移す手続き)すること。送致を受けた検察官は、裁判所に起訴するかどうかを判断する。

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診療報酬の仕組み

診療報酬とは、健康保険等の医療保険を利用した医療行為(保険診療)や調剤行為を行った際に、医療保険から医療機関や薬局にその対価として支払われる”報酬”を意味する。

日本の診療報酬は点数制で計算され、手間・技術・コストを要する医療行為・調剤行為ほど点数が高くなる仕組みで、1点=10円でカネに換算する。

患者の自己負担分を除いた医療費が、医療保険から支払われる金額だ。

※保険適用がない自由診療の場合は、全額が患者負担となる。

参考:厚生労働省「医療保険」

 

前出の「光優会」の理事長は、架空の患者をでっち上げて虚偽の「診療報酬明細書(レセプト)」を県国保連合会に提出していたわけだが、同連合会には1ヶ月に80万枚ものレセプトが持ち込まれるといい、細かい点にはなかなか目が行き届かず、レセプトの内容に明らかに不自然な点や不備がない限りは審査が通ってしまうのだそうだ。

また、同連合会やレセプトの内容を審査する審査委には、”患者の診療録(カルテ)を取り寄せる権限がない”といい、”病名と診察、投薬内容が明らかに不自然な場合は不正を見抜けるが、カルテを取り寄せて照合できない以上は最終的に不正があったかは判断できない(産経新聞)”とのこと。

「光優会」の理事長は、こういった仕組み上の盲点を突いて詐欺行為を働いていたようだ。

※産経新聞によれば、事件は内部告発によって発覚し、県警の家宅捜索によって押収したカルテとレセプトを照らし合わせて実態解明を進めたことで、容疑者の逮捕に至ったという。
逆を言えば内部告発でもない限り、診療報酬詐欺はなかなか露見しにくいともいえる。

 

診療報酬詐欺の事例

この「光優会」の事件の他にも、架空診療やカルテの改ざんで医師や医療機関が医療保険から診療報酬を騙し取った例は枚挙に暇がない。

 

この夏(2014年7月)には、大阪府警が大阪市西成区の医療法人「明月会」の元理事長を、総額約3400万円もの診療報酬詐欺を働いた容疑で逮捕。

毎日新聞によれば、”明月会は西成区内の別々の場所で二つの診療所を営んでいたが、一方の診療所の生活保護受給者の患者を、もう一方でも診療したように装い、カルテを偽造し報酬を請求した疑いがある”という。

生活保護受給者は、生活保護制度上、医療費負担がなく(自己負担分を支払う必要がない)、かかった医療費は国と自治体がこれを医療機関に支払う

その制度を悪用し、生活保護受給者に「金がかからないのだから、毎日来てくれないか」等と懇願して患者を集めていたそうだ。

 

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また、神奈川県伊勢原市のJA県厚生連伊勢原協同病院は、”2010年4月~12年9月の2年半にわたり、基準で義務付けられた専任の常勤医が配置されていると偽って診療報酬を不正請求していた疑いがある”という。

同院は10年4月の診療報酬改定で新設された「検体検査管理加算4」の資格の届け出をめぐり、配置が義務付けられた臨床検査の専任・常勤医として、外科に所属する男性医師(59)の名義を使用した。この医師が臨床検査科勤務の辞令を受けたのは、12年10月付だった”そうだ(””内はともに神奈川新聞から引用)。

つまり、本来であれば、専任医師の配置義務違反で診療報酬を受け取る資格がなかったにもかかわらず、”専任医師を配置している”と偽って、不正に診療報酬を請求していた疑いがあるというのだ。

神奈川新聞の9月27日時点の記事では、”同院関係者は近く、不正に診療報酬をだまし取ったとして、同院幹部らを詐欺容疑で県警に告発する方針”と報じている。

 

消費増税と社会保障費用

診療報酬詐欺で被害を被るのは、毎月保険金を負担している保険契約者であり、国民皆保険制度が導入されている日本においては、つまるところ国民だ。

昨今、喧々諤々と是非が議論されている消費税増税は、そもそも年金・医療・介護等の社会保障費用の捻出のために行われることとなっている。

厚生労働省によれば、2013年度の我が国の医療費は39兆3000億円にものぼるそうだ。

この天文学的な金額に、一部の悪意ある医者や医療機関が私腹を肥やすために行った診療報酬の不正請求金額が含まれていると考えると、憤りを隠し得ない。

 

参考記事:
特殊詐欺の陰に隠れて増える自動車保険金詐欺
2014年1~9月末までの最新特殊詐欺事情

 

本記事は、2014年12月04日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
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