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有期雇用特例措置法施行から2か月

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加速する高齢社会への対応に高齢者活用は待ったなし

平成24年に改正が行われた労働契約法。その法律の適用の例外を認める法律「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法(通称:有期雇用特例措置法)」が成立し、平成27年4月から施行されている。

労働契約法”とは、労働者と使用者が労働契約を結ぶ際に守るべき原則を定めた法律で、それまでの判例で確立された考え方を法文化したもの。有期雇用労働者の地位を安定させることを目的として平成24年に大きな改正が行われた。典型的には派遣労働者を想定している。つまり、3か月や6か月の有期契約が反復更新されて結果的に長期にわたり同一の派遣先にて就業したものの、企業の業績低下などの理由により契約更新がされず「雇止め」となるケースがある。契約終了日の1か月以上前の通告であれば法的な問題は発生しないが、当事者である労働者にとって心理的なダメージは大きい。扇情的ともいえるマスコミ報道の「派遣切り」として一時は社会問題にもなった。改正内容は、有期労働契約を反復更新することにより5年間経過すると、労働者からの申し入れがあった場合には無期雇用に転換されるという内容のもの。

労働契約法第18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間(通算契約期間)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、(中略)期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。

 

しかし、少子高齢化やその他の社会情勢等を検討し、この度の特措法の成立となった。

ポイントは2点。一つは、高度な知識をもった専門職に対して無期雇用への転換の例外を認めるもの。二つ目は、定年後に継続雇用されている高齢者に対する例外を認めるもの。

参考記事:有期労働契約の新しいルール ~平成24年労働契約法改正~①
参照サイト:厚生労働省”「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」が交付されました”

 

専門職の例外

高度な専門知識を持った労働者は、自立したプロフェッショナルとしてプロジェクト毎に雇用契約を結ぶことがある。そのようなプロジェクトは5年を超える長期に渡ることも少なくないため、労働契約法の無期契約への転換条項が足かせになることも考えられた。そこで、専門職について例外を設けたのであるが、要件としては年収と知識・技能などに関する2種類である。年収要件は1,075万円以上。資格や技能に関しては、博士課程を卒業、または公認会計士、医師、弁護士の有資格者など、法文上に限定列挙されている。

 

定年後の継続雇用

高齢者雇用安定法によって、企業には65歳までの雇用が義務付けられた。一般的には、未だ60歳定年でその後に有期雇用の更新を続けて65歳まで継続勤務するというケースが多い。そのようなケースにおいて、例えば60歳定年後に1年間の有期雇用を継続して65歳になった時点で再び無期雇用に転換する可能性があり、かえって高齢者の継続雇用を妨げてしまうおそれがあった。今回の有期雇用特措法の成立により、従前通りの雇用ができるようになり、その懸念はなくなった。

有期雇用特例措置法第8条(労働契約法の特例)
1.(中略)事業主と(中略)労働者との間の有期労働契約に係る労働契約法第18条第1項の規定の適用については、同項中「5年」とあるのは(中略)特定有期業務の開始の日から完了の日までの期間(当該期間が10年を超える場合においては10年)とする。
2.(中略)事業主と(中略)労働者との間の有期労働契約に係る労働契約法第18条第一項規定については、定年後引き続き(中略)雇用されている期間は、同項に規定する通算契約期間に算入しない。

 

生産年齢人口への対応策

統計によると、生産年齢人口は、2010年の8,000万人以上から、2030年には6700万人になる。結果、「生産年齢人口率」は63.8%から58.1%に下がり、つまりは人口の減少以上に、生産年齢人口が大幅に減ることになる。このようななかで、労働力人口の問題を解決する方法としては、女性の活用、外国人労働者の増加、高齢者の活用が考えられる。外国人労働者、なかでも高度人材を念頭に置いた施策に関しては、2008年に福田元総理が第169回国会の施策方針演説のなかで打ち出した「留学生受入れ30万人計画」がある。その計画に基づき、経済産業省の管轄で留学生の就職を支援する事業も実施された。しかし、就労ビザや言語(特に漢字)など、解決すべき問題は多い。現実に即効性があるのは女性と高齢者の活用といえる。

参照サイト:リクルート組織行動研究所”国内人口推移が、2030年の「働く」にどのような影響を及ぼすか”

 

若手社員への叡智の継承

かつて「匠」と表現される技能職の継承のため高齢者を継続雇用するということにスポットライトがあたる傾向にあった。しかし、最近ではホワイトカラーをはじめとする技能以外の部分での高齢者の活用も目立っている。アルバイト社員を多く抱える事業所に、1人リーダー役に現役を引退した高齢者を入れただけで、友達感覚から仕事感覚への移行が行われたというように、世代が極端に離れているが故に組織として機能するという事例も出始めている。

高山緑・慶大教授によると、人間の知能は、新しいことを学ぶ「流動性知能」と、蓄積した知識や経験を活かす「結晶性知能」からなる。平均すると前者は60歳ごろまで維持され、後者は60歳~70歳前後まで緩やかに上昇する。(中略)記憶力も、知識や概念の記憶(意味記憶)は80歳代までほとんど低下しない。機械の操作や物の使い方など技能に関する記憶(手続き記憶)も衰えにくいという。(引用元:日経新聞 時事解析 高齢化と日本経済 ①向上する体力)

 

前述のアルバイト社員の事業所への高齢者を入れた例は、まさに「結晶性知能」が有効に活用された事例であるといえよう。

有期雇用特例措置法により継続雇用がしやすくなり、目に見えない領域ではあるが生産性向上に寄与することが期待される。

 

参考記事:
平成24年労働者派遣法改正のポイント
有期労働契約の新しいルール ~平成24年労働契約法改正~①
有期労働契約の新しいルール ~平成24年労働契約法改正~②

 

本記事は、2015年06月05日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
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