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民法改正 ~債権譲渡・抗弁の切断~

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平成29年民法改正

 平成29年6月2日、債権法改正を中心とする民法の一部を改正する法律が公布されました。今回の民法改正は民法制定以来、約120年ぶりの抜本改正となり、実務への影響も大きくなりそうです。

 私自身の勉強も兼ねて、平成29年民法改正のポイントを、テーマを定めて紹介したいと思います。今回は「債権譲渡・抗弁の切断」に関する規定の改正です。

 

債権譲渡とは

 債権譲渡は、債権者が保有する債権を第三者に譲渡し、その後は債権を譲り受けたものが債権者となる行為をいいます。

 実務で用いられる例としては、債権を早期に現金化するために弁済期前の債権を売却する場合や、第三者に債権取立をさせるために売却する場合などがあります。

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 債権譲渡は、債権の譲渡人と譲受人との契約によってすることができますが、①「債権の性質がこれを許さないとき」または②債権者と債務者の間で譲渡制限特約がある場合には、無効となる場合があります。

※上記②債権者と債務者の間で譲渡制限特約がある場合について、改正民法では、この場合も有効に債権譲渡できることとされました。但し、債権の譲受人が譲渡制限特約について悪意または重過失がある場合には、債務者は譲受人に対して債務の履行を拒絶できることとなりました(改正民法466条2項・3項)。

 

 また、債権譲渡は債務者の承諾がなくても有効ですが、債務者に対してその有効性を主張するためには、債務者への通知または承諾が必要です(民法467条1項)。

 債務者以外の第三者にもその有効性を主張するには「確定日付のある証書」による債務者への通知または承諾が必要になります(民法467条2項)。

 

抗弁の切断とは

 「抗弁」は、債務者が、債権者の請求に対して主張できる事由です。

 例えば、弁済の抗弁(債務が既に弁済済みという主張)、消滅時効の抗弁(債務が既に時効により消滅しているという主張)、相殺の抗弁(債権者に対して相殺可能な反対債権があるという主張)などがあります。

 債権譲渡がなされた場合、債務者が譲渡人に対して主張できた事由(抗弁)を、譲受人に対しても同じように主張できるのかという問題が、「抗弁の切断」の問題です。

 

 従来の民法では、債務者の対応等に応じて以下のように抗弁の切断に関するルールが定められていました(現民法468条)。

①債務者に譲渡の通知をしたにとどまる場合→通知時点までに譲渡人に主張できた事由(抗弁)を譲受人に対しても主張できる。
②債務者が異議をとどめない承諾をした場合→譲渡人に主張できた事由(抗弁)を譲受人に対して主張できなくなる(抗弁の切断)。

 

「異議をとどめない承諾」による抗弁切断の廃止

 改正民法では、上記抗弁の切断ルールのうち②を廃止することにしました。

 その理由としては、債権譲渡について債務者が承諾しただけで抗弁を喪失するとした場合、債務者にとって予期せず抗弁を喪失する結果となる場合となり、また、債務者としても債権譲渡が行われる度に抗弁の有無をすべて検討して留保しなければならなくなって負担が大きく、債務者保護に欠けるからです。

 上記ルール②の廃止に代わり、改正民法では「対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる」と定められました(改正民法468条1項)。

 これによって、債務者は、債権譲渡によって抗弁を切断されることがなくなり、譲渡人に対して主張できた抗弁を、原則的には、譲受人に対しても主張できることになりました。

 

相殺の抗弁に関する特別ルール

 債務者が主張できる抗弁のうち、相殺の抗弁については、新たに特別なルールが定められました。

 相殺は、当事者双方が弁済期にある同種の債権を対等額で消滅させることをいいます。

 原則的なルールからすると「対抗要件具備時までに」債務者・債権者それぞれの有する同種債権が発生している必要があります(改正民法468条1項・改正民法469条1項)。

 しかし、「対抗要件具備時までに」債務者の反対債権が存在しない場合であっても、債務者としては相殺に対する合理的な期待を持っている場合があります。

 

 改正民法では、そのような債務者が相殺に対する合理的な期待を持っている場合として、①「対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権」②「譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権」については、債務者が対抗要件具備時より後に取得した場合であっても相殺に用いることができることを定めました(改正民法469条2項)。

 

改正民法が施行される日

 改正民法の施行日は、「一部の規定を除き、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。

 交付の日は、平成29年6月2日なので、平成32年(2020年)6月1日までの間に全面施行がされることになります。

 参考サイト:法務省「民法の一部を改正する法律案」

 

本記事は、2017年09月04日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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