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民法改正 ~危険負担~

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平成29年民法改正

 平成29年6月2日、債権法改正を中心とする民法の一部を改正する法律が公布されました。今回の民法改正は民法制定以来、約120年ぶりの抜本改正となり、実務への影響も大きくなりそうです。

 私自身の勉強も兼ねて、平成29年民法改正のポイントを、テーマを定めて紹介したいと思います。今回は「危険負担」の改正です。

 

危険負担とは・・・

 危険負担とは、売買のような双務契約において、一方の債務が当事者双方の責に帰すことのできない事由によって履行不能になった場合に、もう一方の債務がどのようになるかという問題が危険負担です。

※双務契約:契約当事者がたがいに対価的な債務を負担する契約。例えば売買契約の場合、売主が目的物を引き渡す債務を負い、買主が代金支払債務を負い、両者は対価的な関係にあります。

 

 例えば、売買契約の場合に、売買目的物が引き渡し前に、災害で滅失したために売主の目的物引き渡し債務が消滅してしまった場合、買主は代金支払債務を負うのかという問題です。

※なお、金銭債務は履行不能にならないと考えられているので、買主の代金支払債務が履行不能になる場合は想定することができません。

 

改正前民法の取扱い

 改正前民法では、「特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合」について、「その者が債務者の責めに帰することができない事由によって消滅し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。」と定めていました。これを危険負担の債権者主義と呼びます。

改正前民法534条1項
特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。

 

 「特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合」とは、例えば、建物売買契約や、中古車の売買契約のように、売買の目的が特定の物である場合を言います。

 このような特定物売買において目的物が滅失又は損傷した場合、改正前民法では「債権者の負担に帰する。」としていますが、具体的には、債権者(買主)は、滅失又は損傷について帰責性がないとしても、代金支払債務を免れないということになっていました。

 

 しかし、目的物に対して買主の支配が及ばない引き渡し前においても、目的物の滅失・損傷のリスクを買主が負うという債権者主義の結論に対しては、契約当事者の合理的意思に反するという批判が強くありました。

 そのため、裁判例も債権者主義の適用を制限し、契約実務でも目的物引き渡しまで債務者が危険を負担するなどの特約を定めておく場合が多くありました。

 

改正後の民法の取扱い

 改正後の民法では、上記のような実務や批判を受けて、債権者主義を廃止することにしました。

 具体的に、債務の履行である目的物の引き渡し前に、当事者の責めに帰すことができない事由によって、目的物が滅失したときは、債務者(売主)の負担として、債権者(買主)が代金支払債務の履行を拒むことができるということにしました。

改正後の民法第536条1項
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。

 

上記改正によって、目的物滅失・損傷の負担(リスク)は、引き渡しを基準に行われることになり、目的物に対する支配が売主から買主に移転した時期に危険も移転することになって、当事者の通常の合理的意思に沿うようになったと考えられます。

※なお、個別の契約内容によっては、危険の移転を引き渡しとは別の時期にすべき場合もあり、そのような場合には、当事者間の契約内容として危険負担を定めておくことももちろん可能です(契約自由の原則)。

 

改正民法が施行される日

 改正民法の施行日は、「一部の規定を除き、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。

 交付の日は、平成29年6月2日なので、平成32年(2020年)6月1日までの間に全面施行がされることになります。

参考サイト:法務省ウェブサイト

本記事は、2017年08月07日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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