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特殊詐欺の陰に隠れて増える自動車保険金詐欺

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日本損害保険協会が新システム導入へ

複数人で共謀して故意に交通事故を起こし、損害保険会社から730万円余りの自動車保険金を騙し取った疑いで、6月11日、男女6人が福岡県警に逮捕された。

また、大阪では、自社の従業員が交通事故被害に遭って長期に渡って職場を離れざるを得なかったように装って、損害保険会社から保険金を騙し取った容疑で土木関連会社社長が逮捕されている。

この大阪の事件では、不正請求を持ちかけて主導した疑いで、損害保険会社社員も逮捕されているという。

 

こうした損害保険金の保険金詐欺や不正請求事件を受けて、一般社団法人日本損害保険協会は12日、これらの犯罪を防止するための新システムを開発し、2015年度から導入すると発表した。

当該新システムは、協会に加盟する損害保険会社各社から請求者の請求履歴等の保険金請求データを収集し、これを各社で共有することで注意を促す仕組みであるという。

 

日本損害保険協会:http://www.sonpo.or.jp/

 

自動車保険を狙った手口が利用される理由

ここもとは、詐欺というと「出会い系詐欺」や「振り込め詐欺」等による被害の急増が各種メディアを賑わせているが、その陰に隠れてこの手の保険金詐欺が明るみに出る件数も増加傾向にあるといい、多くが前述したような「自動車保険を狙った手口」となっている。

自動車保険が詐欺師に狙われる理由は1つ。

物騒な生命保険詐欺等よりも実入りは少ないながら、請求難易度が低く、「交通事故で自動車保険会社に保険金を請求する」ことが一般的・日常的な行為であることから、発覚リスクもまた低いためだ。

 

内部に協力者がいるケース

冒頭で挙げた大阪府の事件では、損害保険会社の社員が積極的に不正請求を主導していたようだ。

この根底には保険会社の伝統的な給与体系が深く絡んでいると推察される。

 

一般的に、保険会社の営業マンの給与は固定給が極めて低いか、或いは外資系保険会社等では固定給ナシのケースもあり、営業マンの収入の大部分は歩合給で構成される。

つまり、自身の顧客を集めれば集めるだけ、成果主義の対価として多額の報酬を得ることができる仕組みになっているのだ。

本件で逮捕された損害保険会社社員も、内部で知り得た保険審査が通りやすいポイントを踏まえ、不正請求を主導して土木関連会社に利益(保険金)供与することを見返りに、「保険に入ってもらおうと思った」等と供述しているそうだ。

 

さらにこのケースでは柔道整復師も関与が疑われて逮捕されている。

この柔道整復師は、実際には数回しか通院していなかったのにもかかわらず、通院日数の水増しに加担していたという。柔道整復師自身にも「水増しした通院日数分の治療代金が得られる」という見返りがあったのだろう。

こうして見ると、仮に本件がバレて明るみに出ていなければ、不正請求で保険金を手にした土木関連会社社長不正請求を餌に法人顧客を獲得した損害保険会社社員、実際に行った治療以上の治療代金が得られる柔道整復師といった、本件に関与して逮捕された人間それぞれが不正に利益を得ることができる、Win-Winの関係となっている。

ただし、その裏側では損害保険会社が保険金を、ひいては他の保険契約者が支払った保険料が、彼らに騙し取られている事実がある。不正請求が多発して損害保険会社の保険準備金が減少すれば、個々の保険料の値上げといった目に見える実害が、善良な一般の保険契約者に降りかかる恐れもあるのだ。

 

保険金詐欺の罪の重さ

ところで、虚偽の事実で保険金を受け取る資格があることを偽って、保険金を騙し取った者には刑法第246条の「詐欺罪」が適用される。

刑法第246条(詐欺)
1.人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺には執行猶予はつかず、有罪となれば実刑は免れない。
有罪となれば、規定に従って最高10年以下の懲役刑に処されることとなる。

 

また、騙し取った保険金は、保険会社が当人に保険金返還請求をすることによって、全額を返還しなければならなくなる。

 

自動車保険詐欺の手口

自動車保険の保険金を目当てにした保険金詐欺の手口は、本当の交通事故で負った被害を必要以上に大袈裟にアピールして、不当に治療費や休業補償を請求する古典的なものを始め、様々だ。

最近では本稿にも挙げた、複数人が共謀して故意に交通事故を起こし、保険金を騙し取る手口のほか、盗難を装って盗難保険を不正請求する手口が流行っている。

2012年6月に福井県警が逮捕した事件では、容疑者の男女が高級自動車が盗まれたように装って、福井署に虚偽の盗難届を出したうえで、損害保険会社から盗難保険金として345万円を騙し取っていたという。

他にも、元々価値もない骨董品や美術品をトランクに積んだ状態で事故を起こし、物損による保険金や慰謝料請求をしかけるヤカラもいる。

また、他国の実例になるが、米国では、いわゆるロードキルにおける保険の特性を利用して、野生のシカとの衝突によって自動車が損壊したとし、運転手無過失を主張して損害保険会社から保険金を騙し取っていた組織的犯罪が摘発されたのだとか。

※ロードキル:走行中の自動車が野生動物を轢死させてしまうこと。山間部等、野生動物の生息域に敷かれた道路を、動物が横切る際などに発生することが多い。買い主のいない野生動物との接触事故で自動車が損壊した場合、当該事故は単独事故扱いとなることがほとんどで、日本では自動車保険の契約内容によって損害が補償される場合とされない場合がある。

 

新システムは将来的に損保全分野へ

日本の損害保険業界は、代理店乱立による過当競争事なかれ主義の蔓延が仇となって、明るみに出ていない不正請求や保険金詐欺による被害が、実際には莫大な金額にのぼっていると推察する業界関係者や識者が少なくない。

 

健全な保険制度を阻害する不正請求は撲滅しないといけない」とするのは、12日の記者会見での日本損害保険協会二宮会長の弁だ。

導入予定の保険請求利益を共有する新システムは、当初は傷害保険や自動車保険の対人賠償等、人に絡む分野から始めて、将来的には火災保険等の全分野に広げる意向であるという。

 

日本損害保険協会:保険金不正請求ホットライン
 http://www.fuseiseikyu-hl.jp/

 

本記事は、2014年06月18日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
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