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生活保護費の不正受給とマイナンバー制度

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東京・神奈川の8自治体から不正受給

静岡地裁は12月16日、複数の自治体から生活保護費を不正受給していたとして、詐欺罪等に問われた住所不定無職の女性被告人に、懲役3年の実刑を言い渡した。

各メディアの報道によれば、女が別の窃盗事件(静岡市内の百貨店で衣料品を万引きした容疑)で逮捕された際に、生活保護費の給付袋を所持していたことや携帯電話に残されていた各自治体の福祉事務所との通話履歴によって、女の生活保護費の不正受給が発覚したのだという。

その後の捜査で、女は東京都と神奈川県の、実に8市区を股にかけて生活保護費を不正に受け取っていたことが判明している。

 

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判決によると、”被告は東京都三鷹市で生活保護を受けながら、2012年12月~今年1月、神奈川県の藤沢、相模原、川崎の3市から計約270万円の生活保護費をだまし取った”といい、これら神奈川県3市の他にも、”東京都世田谷区など都内5自治体からも計約400万円を重複受給していた(毎日新聞)”のだそうだ。

※三鷹市と世田谷区の他、武蔵野市、文京区、豊島区の5自治体は被害届を提出。この他、09年5月~7月には中野区でも生活保護費を受給していたようだ。

 

不正受給の手口

この女の不正受給の手口は、単に住居を転々とする最中に各自治体で生活保護を申請して不正受給を繰り返すもので、”高度な計画性はなかった(静岡地裁・大村陽一裁判官)”のだという。

同裁判官は「自治体間で保護費の受給情報が共有されていない、制度の盲点を突いた悪質な犯行」と断じているようだが、そもそもそんなことがまかり通ってしまうことに驚きを感じる。

勾留先の静岡刑務所で、朝日新聞の取材に応じた被告は「”住む場所がなくなった”と役所の窓口で言えば保護してもらえた」と語ったそうだ。

 

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生活保護は制度上、住民登録がなくても居住実態さえあれば保護費の申請ができる
「ストーカー被害に遭っているため住民票を移すわけにはいかない」等と嘯けば、役所は何も言えないのだそうだ。

そのうえで、”自治体間で保護費の受給実態情報が共有されていない”という制度上の穴を、この女は突いたわけだ。

 

女は住居を転々としながら各地で保護費を申請し、それぞれの自治体から支給の連絡があればその都度窓口に出向き、悪びれもせずに保護費を受け取っていた。

朝日新聞によれば、「黙っていなくなっても役所は私を捜しにこない。住んでいないんだから受給をやめろと言われればやめたが、言われなかった」とも話していたという。

 

増え続ける生活保護費

他にも、近年、生活保護費の不正受給事件が明るみに出る例は枚挙に暇がない。

その手口は、収入があるにもかかわらずそれを隠して無収入と偽り生活保護費を不正受給するものや、身分証明書を偽造して別人に成り済まして重複受給するもの、シングルマザーとして保護費を受給しながら離婚は書類上だけで、実際は夫と同居するもの等々。

 

日経新聞によると、生活保護の受給世帯は2012年度に前年度比4%増の156万世帯となり、同10%増の191億円もの不正受給が発覚しているという。

生活保護費の財源は、支給額の3/4を国が負担し、残りの1/4を自治体が負担する仕組みとなっている(生活保護法第75条)
少子高齢化等の影響で財政が困窮している地方の自治体では、生活保護費の自治体負担分の財源捻出が死活問題となっているところも少なくない。

にもかかわらず、生活保護費は増え続けるばかりだ。

 

こうした状況から、今年7月には保護費の不正受給の防止を柱とする改正生活保護法が施行された。

改正法では生活保護申請者の資産・収入の他、支出や求職状況等といった点にまで福祉事務所の調査権限が拡大された。
また、不正受給の罰金額の上限を30万円から100万円に引き上げて抑止力増強を狙っている。

ただし、現時点では、さほど生活保護費抑制には寄与していないのが実状のようだ。

 

マイナンバー制度への期待

こうした状況で期待されるのが、2016年1月に導入が予定されているマイナンバー制度だ。

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マイナンバー制度は、”住民票を有する全ての人に1人1つの番号を付して、社会保障・税・災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用する”制度である。

この制度の導入によって、現状では各行政機関が個別に保有している情報を一元化し、住民票を有する全ての人は12ケタの固有番号(=マイナンバー)を使って、横断的に行政サービスを利用できるようになる。

一方で、マイナンバーに紐づけて個人の所得状況も管理されることとなり、これによって”年金”や”税金”の払い逃れの防止が期待される

当然、これは”生活保護の受給状況”にも紐づけることができるようになるだろう。

 

マイナンバーは犯罪に利用された場合等を除き、原則、一生同じ番号を利用することになっている。

そのため、例えば今回の東京・神奈川の不正受給事件のように自治体を跨いで転居を繰り返したとしても、住民票とは別に、マイナンバーという固有の番号で個人の情報を管理することができるようになるため、”自治体間で情報共有していない”がための生活保護の不正受給は妨げることが可能となるわけだ。

 

参考記事:
マイナンバー制度の概要と導入による影響
最高裁初判断-外国人は生活保護法の対象外
生活保護費の差し押さえは違法
改正貸金業法の効果-多重債務者は減少傾向
日常的に行われている、呆れた診療報酬詐欺

 

本記事は、2014年12月17日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
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