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生活保護費の差し押さえは違法

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自治体による滞納税の取り立て

そもそもが生活に困窮し、日々の食事さえも満足に採れない人達にとっては税金や保険料が大きな負担であり、例え支払うことが法律上の義務であろうとも、これらの支払いを後回しにしてしまいがちだ。

 

ある男性は病気を理由に仕事を解雇されて、食うや食わざるやの生活を余儀なくされ、止む無く市の生活保護を受給することになったものの、受給開始から間もなくして、市から一通の催告書類が送られてきた。

書類には、生活保護を受給する以前に滞納してしまっていた市民税の一括払いを督促する内容が書かれていたそうだ。

さらに「期日までに支払いがない場合は、財産の差し押さえを執行する」とも。

 

ここもと、生活保護受給者が滞納した地方税や国民健康保険料を、自治体が厳しく取り立てるケースが目立っているという。

 

生活保護制度とは

厚生労働省のWebサイトによると、生活保護制度とは、「資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度」とある。

ここで言う「必要な保護」とは以下の8つの、「生活を営む上で必要な費用」に対応した「扶助の支給」を意味する。

生活扶助:生活保護法第12条>
 衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの

住宅扶助:生活保護法第14条>
 住居(アパートの家賃等)、および補修その他住宅の維持のために必要なもの

教育扶助:生活保護法第13条>
 教科書や通学用品、および学校給食費その他義務教育に伴って必要なもの

医療扶助:生活保護法第15条>
 薬剤代や治療費、施術費、入院費のほか、世話その他の看護費用

介護扶助:生活保護法第15条の2>
 要介護または要支援と認定された生活困窮者が受ける介護サービスの費用

出産扶助:生活保護法第16条>
 分べんの介助費用、分べん前及び分べん後の処置費用のほか、ガーゼ等の衛生材料費

生業扶助:生活保護法第17条>
 生業に必要な資金、器具又は資料代、生業に必要な技能の修得費のほか、就労のために必要なもの
※ただし、生業扶助はその者の収入を増加させ、またはその自立を助長することのできる見込のある場合に限る。

葬祭扶助:生活保護法第18条>
 検案、死体の運搬、火葬・埋葬、納骨その他葬祭のために必要なものにかかる費用

 

なお、生活保護費を受給するには、住所地域を管轄する福祉事務所にて保護を申請し、生活状況や資産状況、収入状況、就労の可能性等に関する調査を受けて、福祉事務所が支給を妥当と判断した場合に、毎月一定額の生活保護費が支給されることとなる。

支給される金額は、物価等が考慮されているために東京都区部が最も高く、標準3人世帯(33歳、29歳、4歳)で170,180円となるそうだ。

対して、物価の安い地方郡部では同世帯で134,140円となるという。

※生活保護受給者は、住民税および所得税が実質免税となる。また、医療費は自己負担分がなくなり、保険料の納付も不要となる。

 

生活保護費の差し押さえは違法行為

こうして見るに、3人家族が東京都区部でひと月を17万円でやり繰りするのは非常に厳しい。

そのうえでさらに「滞納した税金を支払え」と言われても、無い袖は振れないのが実情であるにも関わらず、自治体によっては、語気を強めて支払いを督促し「差し押え」まで匂わす。

 

ところで、生活保護制度の根拠法となる生活保護法では、生活保護費の差し押さえを禁じている。

<生活保護法第58条(差押禁止)>
被保護者は、既に給与を受けた保護金品又はこれを受ける権利を差し押えられることがない。

つまり、自治体が生活保護受給者から、税金や国民健康保険料の滞納分を強制執行によって徴収することは違法行為に該当するのだ。

 

差し押さえを示唆した自治体にこのことを訴えると、「差し押さえの文言は、自主的な納付を促すことが狙いで利用した。実際には(差し押さえは)しない。」等というのだそうだ。

さながら悪い言い方をすれば、「差し押さえ」は「脅し文句」といったところだ。

なお、指摘を受けた自治体の中には、生活保護受給者への督促状から「差し押さえ」という文言を外す修正を施すところもあるそうだが、この生活保護受給者への「差し押さえの示唆」は、多くの自治体で今なお行われているという。

 

自治体が抱える問題

ただし、この問題は「差し押さえを示唆」した自治体側だけが一概に悪いわけではない。

生活保護費の財源は、支給額の3/4を国が負担し、残りの1/4を自治体が負担する仕組みとなっている。

少子高齢化・地方過疎化が進み、各自治体ともその財政に余裕はないなか、頼りの税収となる税金を滞納している人がいれば、それをしっかりと回収するのもまた自治体の責務だ。

また、「生活保護受給者が受給開始前に滞納していた税金や保険料の督促」に関する国の明確な指針がなく、これに関して各自治体が独自の観点で対策を講じてしまっていることにも原因はあろう。

 

そもそも生活保護法によって保護費の差し押さえが禁じられているとはいえ、税金や保険料はその滞納分を含めて、別の法律によって支払うことが義務付けられているものだ。

督促の仕方が問題点であるとはいえ、「税金や保険料を滞納して未払い分がありながら、生活保護受給者だからといって、放っておいてよいとは思わない」という自治体側の言い分ももっともであり、「何とかして払ってもらおうと策を講じた」結果であれば「示唆」程度なら構わないと考える人も少なくはなかろう。

その税収がまわりまわって生活困窮者に支給する保護費となることを考えると、問題の根の深さを感じずにはいられない。

 

本記事は、2014年05月27日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
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