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生活困窮者と自治体の対応と債務整理

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後を絶たぬ貧困原因の痛ましい事件

2014年9月のある日の朝、千葉県銚子市の公営住宅の一室で、40代のシングルマザーが13歳の一人娘の首を絞めて殺害する事件が起こった。

母娘は生活に困窮していて、公営住宅の家賃は2年分を滞納。娘を殺害した日は、家賃滞納を理由にした行政による強制執行が行われた日で、母娘を立ち退かせるために部屋に立ち入った裁判所の執行官と荷物の運搬等を委託された業者によって事件が発覚したのだという。

月1万2800円の家賃の滞納が約2年間続いたため、県が住宅明け渡し訴訟で勝訴、事件当日は立ち退き期限だった。午前11時10分ごろ、鍵を開けて立ち入った地裁の執行官らが、布団の上でうつぶせになった可純さんの遺体を見つけた。

被告は放心状態で座り込み、可純さんの頭をなでながら4日前に撮ったビデオを見ていた。体育祭で赤い鉢巻きをして走る娘の姿が映し出されていた。「これは私の子。この鉢巻きで首を絞めちゃった。ビデオを見終わったら自分も死ぬ」と話したという。(引用元:2015年06月12日付け毎日新聞、※引用文中の被告=母親、可純さん=娘)

 

各メディア報道によると、事件当時、母親の所持金はわずか4,680円だったそうだ。

家賃滞納が続き県営住宅からの強制立ち退きを通告されるも、カネも行く当ても、相談する相手もなく、追い詰められた状況を悲観した母親は娘との心中を試みたようだが、結果的に母は死ねなかった。

そして今年6月、千葉地裁でこの母親に懲役7年(求刑は懲役14年)の一審判決が言い渡された。

どうしてこういった、貧困原因の痛ましい事件は一向になくならないのだろうか。

 

責任は行政にあり?

借金を負った状態で離婚した母親は、娘との生活を維持するために多方面からカネを借り入れていて、娘の学校制服を購入するために闇金にまでも手を出していたのだという(毎日新聞によれば、母親の前夫は結婚当時に既に多額の借金を抱えていたとのこと)。

母親の仕事は市の給食センターのパートで月収は7万円程。これに児童扶養手当や前夫からの養育費を合わせると多い月で14万円程の収入があったようだが、前夫の養育費の支払いが遅れることがある、学校が夏休みとなると給食センターのパート収入が当てにできなくなる等、その生活は不安定だったようだ。

※市の仕事を行っていたため、掛け持ちで他の仕事をすることができなかったとの報道もある。

市役所に生活保護の相談に訪れたことはあったのだというが、母親に給食センターでの職があったこと等から、保護申請にすら至らなかったのだという。

こういった貧困原因の痛ましい事件が起こるたびに、積極的な関与を行わなかった行政の責任を指摘する声が挙がる。

事実、この事件においても、市の生活福祉課と県住宅課の間で連携はとられておらず、母親が生活保護の相談をしに生活福祉課を訪れた際、同課は家賃を2年も滞納している状況を把握していなかったといい、一方の県住宅課も生活保護の相談に訪れる程、母娘が生活に困窮していたことを知らなかったのだそうだ。

さらに、朝日新聞の記事では、(県住宅課の)”強制執行は、市には伝わっていなかった”と伝えている。

 

日本では、生活保護を受給することを”恥”だと認識する人が少なくない。また、生活保護を受給することで、子供がいじめられる・惨めな思いをすると考える親もいる。生活保護やその他の生活助成制度の存在自体をよく知らない人もいる。

支援制度を利用すべき側に”どうにかして問題を解決しようとする”積極性や必死さがなければ、”行政とて出来ることに限度があるのも事実”なのはわからなくもないが、少なからず、母親は生活保護のことを聞きに市の生活福祉課を訪れているのだ。

タラレバではあるが、この時にもう少しでも詳しい事情の聞き取りができていれば、母娘の未来は変わっていたかもしれない。

※ダイヤモンドオンラインのみわよしこ氏の記事「中2娘を殺害した母親を、私は責める気になれない」によれば、千葉県に申請すれば県営住宅の家賃が80%減額される制度もあったのだというが、千葉県住宅課は「相談がなかった」ためにこの減額制度を母親に説明していなかったのだという。

参考サイト:ダイヤモンドオンライン「中2娘殺害へと母親を追い詰めた、強制退去という貧困刑」
参考サイト:ダイヤモンドオンライン「中2娘を殺害した母親を、私は責める気になれない」

 

借金には債務整理という解決手段がある

なお、仮に生活保護に頼ることができたとてしても、借金がある人はその借金と生活保護は別問題であり、生活保護受給者とて借りたカネは返さねばならない。しかし、そういった借金問題に苦しむ人たちには債務整理という解決手段がある。

債務整理のうち、任意整理であれば債権者(貸した側)との合意を条件に利息のカット等、債務(借金)の減免をすることができる。

自己破産であれば、不動産等の財産を手放すことになる反面、債務の全額について支払義務が免除となる。

この債務整理であれば、弁護士や司法書士に助力を求めることで往々にして借金問題を解決することが可能で、事実、法律事務所にはシングルマザー世帯から債務整理の相談がたびたびあるという。

 

カネが無く生活(や会社運営)に困窮した人のための債務整理なわけで、相談された側の法律事務所とて、機械的に債権者との間に入って債務整理をまとめ上げたうえで高額な報酬を請求していては、相談する側もされる側も、お互いが成り立たないことは承知している。

そのため、しっかりと事情を説明すればほとんどの法律事務所は費用面の相談にも乗ってくれる。親身になってくれないようならば、その法律事務所への相談は諦めて、別の法律事務所に相談すればよい。法律事務所はゴマンとあるのだ。

昨今では、債務整理のメールや電話による相談は無料というのが一般的。法律事務所に債務整理を依頼すれば、最短即日で取り立てはやむし、長年の借金返済で利息を払い過ぎていればその分が返還される場合もある。

ただし、こうした法的措置による借金の減免が可能なこともまた、行政による生活保護やその他の助成制度と同じく、本当にこれらを必要とする困窮者が存在を知らなければ意味をなさないし、困窮者が相談することを”恥”と思わず一歩踏み出してくれないと意味をなさない、というジレンマがある。

参考サイト:東京弁護士会「借金問題」

 

事件を受けた、千葉県と銚子市の対応策

前出の毎日新聞の記事によれば、千葉県や銚子市はこの事件を受けて、対応策を講じたようだ。

事件を受け、千葉県は県営住宅の明け渡し訴訟を起こした場合は、福祉担当者や民生委員が対象者を訪ねて家賃を滞納している理由などを聞き取るよう関係市町村に要請する対策を取った。銚子市は国民健康保険の未納情報を生活保護担当者が把握できるようにし、支援の手から漏れた人がいないか確認しているという。(引用元:2015年06月12日付け毎日新聞)

 

この、傍から見れば”当然”とも思える対応を行政が事件前に行えていれば、母娘は生活保護を受給して、贅沢はできないながらも娘は今も人並みの学生生活を送っていられた可能性が高い。

そうなっていれば、行政のアドバイスで借金問題も債務整理で解決に向けて進んでいたハズだ。

 

やはり、頼れる親族や知人がいない生活困窮者に、一番身近にアプローチできるのは行政機関なのだろう。

今後、別の自治体で同じようなことが繰り返されては意味がない。この当たり前に思える千葉県と銚子市の対応策が、全自治体のスタンダードとならなければならない。

 

参考記事:
借金問題を解決する債務整理とは?
自己破産てナニ?自己破産後はドウナルノ?
闇金融(ヤミ金)からの借り入れ金は返済の必要なし?
借金苦等で弁護士費用が払えない人を支援する法テラス

 

本記事は、2015年06月30日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

prof Kasiko編集部

編集チーム

  • 所属:Kasiko

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