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相続のポイント ~遺産分割の4種類の手続~

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遺産分割とは?

 相続人が複数いる場合(「共同相続」といいます)、被相続人が所有していた家や土地や貴金属などの相続財産は、相続人の「共有」という状態となっています(民法898条)。
 「共有」という状態は、相続財産を相続人全員がその相続分に応じて共同で所有している状態であるため、各相続人の単独財産とはならず、各自が勝手に処分することができません。
 このように相続人の「共有」状態にある財産を、各相続人の相続分に応じて分割し、家や土地や貴金属などの具体的な財産を、各相続人の単独相続とする手続を遺産分割といいます(民法906条~914条)。

 

遺産分割の4種類の手続

 遺産分割の手続には、以下の4種類の手続があります。
 

  1. 遺言による遺産分割(民法908条1項)
  2. 相続人の協議による遺産分割(「遺産分割協議」、民法907条1項)
  3. 調停による遺産分割(民法907条2項、家事事件手続法244条、同法別表第2の12)
  4. 審判による遺産分割(民法907条2項、家事事件手続法191条~200条)

 まず、遺言によるか否かで1と2~4に区分され、また、裁判所の手続を使うかどうかで1,2と3,4に区分されます。
 以下では、それぞれの手続の内容について簡単に紹介します。

 

遺言による遺産分割

 民法908条は「被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁ずることができる。」と定めています。

 同条が定めることの一点目として、被相続人は、遺言で遺産の分割の方法を定めることができます。例えば、被相続人は、遺言で「妻には住居の土地建物を相続させる。長男には別荘の土地建物を相続させる。長女には預金の全てを相続させる。」など、具体的にどの財産を誰に相続させるかということを遺言により定めることができます。
 このように遺言で遺産分割の方法を定めた場合、遺言者は、遺言で定めた遺産分割方法を相続開始後に実行させるために、遺言で、「遺言執行者」を指定することができます(民法1006条1項)。

※民法1006条1項「遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。」

 民法908条が定めることの二点目として、被相続人は、遺言により、第三者に対して遺産分割の方法を定めることを委託できます。例えば、遺言をした時点では将来相続開始した時点の財産状況などが分からない場合、信頼している人物に遺産分割方法について判断を託す場合などに用いられます。

 民法908条が定めることの三点目として、被相続人は、遺言により、五年を超えない範囲で遺産分割の禁止をすることができます。例えば、推定相続人のなかに学生がいる場合、遺産分割に関わる手続や紛争により学業がおろそかにならないように、学生である相続人が卒業するまでは遺産分割を禁止することなどを定めることができます。

 

相続人の協議による遺産分割

 民法907条1項は、「共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。」と定めています。

 共同相続人は、遺言で遺産分割方法の指定がなされていない場合はもちろん、遺言で遺産分割方法の指定がなされている場合であっても、協議により遺産分割をすることができます。
 遺言の内容に反する協議を行う場合、被相続人の意思をないがしろにしてしまう側面があるようにも思えます。しかし、被相続人が遺言をした時から相当時間が経過している場合、遺言時点の財産状況と相続財産の状況が異なる場合もありますし、また、相続財産の分配についてはこれを受け取る相続人全員の意思を尊重すべき場合もあるように思います。

 民法907条1項の「被相続人が遺言で禁じた場合」というのは、先に説明した民法908条の、被相続人が「相続開始の時から五年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁ずる」場合です。

 協議により遺産分割を成立させるためには、共同相続人全員の合意が必要です。
 そのため、相続人の全てが遺産分割協議に参加するよう手配するとともに、相続人が誰であるかをしっかりと事前に確認しておくこと(相続人の確定)が必要です。

 共同相続人全員の合意があれば、遺産分割の方法は自由に決めることができます。
 例えば、冒頭の事例のように家・土地・貴金属などの具体的な財産を各相続人の単独所有とする方法(現物分割)のほか、相続財産を売却等して得られた金銭を分割する方法(換価分割)、特定の相続人が相続財産を取得する代わりにその他の相続人に代償金を支払う方法(代償分割)などの方法があります。

 

調停による遺産分割・審判による遺産分割

 民法907条2項は、「遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。」と定めています。

 調停による遺産分割も審判による遺産分割も、家庭裁判所における手続という点、決まった遺産分割の内容について「確定判決と同一の効力」を持つ点で、遺言による遺産分割、協議による遺産分割と異なっています。

※家事事件手続法は、調停調書に記載された内容、確定した審判の内容について「確定判決と同一の効力」を持つことを定めています(家事事件手続法268条1項、281条、287条)。
「確定判決と同一の効力」を持つということは、別途訴訟を提起することなく、直ちに強制執行手続を申し立てることができるということです。家庭裁判所の手続を経て権利関係が判断されていることからこのような効力が認められています。

 調停と審判の違いは以下のようになっています。
 調停による遺産分割の場合、裁判官1名と民間の識者から選ばれた調停委員2名以上で構成される調停委員会(家事事件手続法248条1項)が関与し、各相続人から事情を聞いた上で、遺産分割についての問題解決に向けた助言やあっせんをしますが、最終的には、共同相続人の合意によって遺産分割方法を決定します。
 最終的に、共同相続人が合意に至らない場合には調停は成立しない場合があります。

※調停において決定された遺産分割方法の内容は、調停調書という書面に記載されます。

 審判による遺産分割の場合、調停のように最終的に共同相続人の合意によって遺産分割方法を決定するのではなく、家庭裁判所が、審判によって遺産分割方法の決定をします(家事事件手続法40条1項)。

 家庭裁判所の手続を利用しようとする相続人は、調停による遺産分割手続と審判による遺産分割手続のいずれも申し立てることができますが、先に調停による遺産分割手続を申し立てて、調停が成立しなかった場合は審判による遺産分割手続の申立があったものとみなされることになります(家事事件手続法272条1項・4項)。

 審判においては、相続分に従った判断がなされる他、民法906条に定める「遺産の分割の基準」に従って遺産分割方法が決定されることになります。
 民法906条は、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」と定めています。
 例えば、被相続人が事業を行っており、これを長男が継いでいた場合など、事業に使っていた工場や土地等が相続により分散してしまうと、事業価値が損なわれてしまう事情がある場合や、相続人の一人が相続財産である住居で生前の被相続人と長く同居しており、他に住む場所がないなどの事情がある場合、これらの事情も考慮される場合があります。

 

参考記事:
相続のポイント ~遺言の方式~
相続のポイント ~戸籍の調べ方~
相続のポイント ~単純承認・相続放棄・限定承認~
相続のルール ~相続分~
相続のルール ~法定相続人の確定~

本記事は、2014年05月26日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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