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相続のポイント ~遺言の方式~

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遺言とは?

 たとえば、祖父が亡くなる前に、その妻や子供、孫などに対して何ら遺言を残していなければ、祖父の遺産は民法で定められた法定相続分に従って相続されることになります(民法900条)。
 しかし、家族関係は様々で、祖父としては子供よりも自分の面倒をよく看てくれた孫に遺産を引き継がせたいと思う場合もあります。そこで、このような被相続人の意思を尊重するため、民法では遺言という制度が設けられています。

 

遺言には決まった方式がある

 遺言は、遺産という重要な財産に関わるものですから、遺言者の真意を確保するとともに、後に偽造や変造がなされることを防止する必要があります。そこで、民法では「遺言は、この法律(民法のことです。)に定める方式に従わなければ、することができない。」(960条)、「遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。」と定められ(967条)、原則として民法で定められた方式でなければ遺言をすることができないというルールが設けられています。
 遺言の方式には、大きく分けて普通方式と特別方式という方式があります。そして、普通方式には、自筆証書、公正証書、秘密証書の3種類があります。

普通方式
自筆証書遺言(968条)
公正証書遺言(969条)
秘密証書遺言(970条)

特別方式
危急時遺言(976条、979条)
隔絶地遺言(977条、978条)

 今回は、本来の遺言の方式である普通方式について紹介していきたいと思います。

 

自筆証書遺言の方式

 民法は、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」と定めています(968条1項)。
 自筆証書遺言は、「自書」すなわち自筆で筆記しなければなりません。そのため、パソコン等で内容を作成することや、他人に完全な代筆を依頼して作成することができない点に注意が必要です。たとえば、高齢のため自筆ができない状態である場合は、この方式ではなく、後述の公正証書遺言の方式によることをおすすめします。

【自筆証書遺言のメリットとデメリット】

 自筆証書遺言は、最も簡単に作成することができ、費用もかからないため、利用しやすい方式である点に大きなメリットがあります。
 しかし、遺言の保管の仕組みが用意されていないため、紛失や偽造・変造がなされる危険があります。また、作成に際して専門家によるサポートがないため、文意が不明確であったりすると後に遺言の有効性が問題となる可能性があるというデメリットもあるので、注意が必要です。
 なお、遺言の執行には家庭裁判所の検認という手続きを経る必要があります(1004条)。

 

公正証書遺言の方式について

 公正証書遺言は、公証人と呼ばれる専門家の面前において、公正証書で作成される遺言です。
 公正証書遺言は、原本(遺言者、立会人が実際に署名・押印したもの)と正本(遺言者、立会人の署名・押印が省略されたもの)が作成されます。
 そして、原本は公証役場に保管され、正本は遺言者に交付されます。

 民法は、公正証書遺言の方式について、次のように定めています(969条1号ないし5号)。
① 証人二人以上の立会いがあること。
② 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
③ 公証人が、遺言者の口授を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
④ 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
⑤ 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

 公正証書遺言をするには以上のすべての要件を具備する必要があります。
 なお、民法では、遺言者が口をきけない場合や、あるいは耳が聞こえない場合に備えて、以下のような特則を設けています。
 まず、遺言者が口をきけない者の場合、上記②の「口授」に代えて、遺言者が公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳(手話通訳などの方法によります。)により申述し、又は自書(筆談)するという方法も可能です(969条の2第1項)。
 また、遺言者が耳の聞こえない者の場合、上記③の読み聞かせに代えて、公証人が通訳人の通訳又は閲覧により、筆記した内容を遺言者又は証人に伝えるという方法によることも可能です(969条の2第2項)

【公正証書遺言のメリットとデメリット】

 公正証書遺言は、公証人の面前で作成され、その原本は公証役場に保管されるため、変造や毀滅の危険がありません。また、家庭裁判所での検認の手続きも不要である点も大きなメリットといえます。さらに、公証人という専門家が遺言の内容に関与するため、後に遺言の効力が問題となる危険性が少ない点もメリットといえるでしょう。
 他方、デメリットとしては、証人や公証人に遺言の内容を知られてしまう点や、自筆証書遺言ほど簡便な方式ではない点が挙げられます。

 

秘密証書遺言の方式について

 秘密証書遺言は、遺言の存在そのものは明らかにしながら、その内容を秘密にして遺言書を保管することができる方式の遺言です。
 民法は、秘密証書遺言の方式について、以下のように定めています(970条1項1号ないし4号)。

① 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
② 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
③ 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
④ 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

【秘密証書遺言のメリットとデメリット】

 秘密証書遺言のメリットは、自筆証書遺言と異なり「自書」が要求されていないため、ワープロ等で作成することができ便利である点や、遺言の内容自体の秘密を保持できる点等が挙げられます。
 他方、秘密証書遺言のデメリットとしては、遺言の内容等については公証人の関与がないため、不明確な内容となって遺言の有効性に問題が生じる危険性がある点が挙げられます。また、自書でなくてもよい点を悪用して、たとえば、判断能力の衰えた高齢者に代わって他人が秘密証書遺言の形で遺言を勝手に作成してしまうという危険もあります(この場合、本当に本人の意思で作成されたものかどうかを筆跡等によって判別することができなくなります)。このようなデメリットから、秘密証書遺言の方式が利用される割合は低い傾向にあります。

 

自分に合った遺言の方式を

 このように、遺言の各方式にはそれぞれのメリットやデメリットがあります。遺産となる財産の状況や、遺言の偽造・紛失等のリスク、手続きにかかる費用等を考慮して、自分にとって最も適切な方式はどれかを選択しましょう。

 

参考記事:
相続のポイント ~遺産分割の4種類の手続~
相続のポイント ~戸籍の調べ方~
相続のポイント ~単純承認・相続放棄・限定承認~
相続のルール ~相続分~
相続のルール ~法定相続人の確定~

本記事は、2014年06月03日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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