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相続放棄は「撤回」できないが「取消し」は可能

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相続の承認と放棄に関する民法

遺族一人一人が「相続する」か「放棄する」かの意思表示をしなければならない遺産相続。相続人は、相続内容にマイナスの財産(負債)が多いと明らかにわかっていれば、プラスの財産の相続を諦める代わりにマイナス財産も引き継がなくてよくなる相続放棄をする権利がある。

ただし一度、相続放棄を決めたらその決定は「撤回する」ことができないことが民法に定められている。

複数の相続人が絡む相続において、それぞれが「相続する」か「放棄する」かの判断を安易に二転三転させていては、相続手続きが延々と確定できないばかりか、相続人間の不要な争いの火種にもなってしまいかねないためだ。

また、負債の債権者を保護するためでもある。

しかしだ。

一度決めた相続放棄は撤回できないものの、所定の条件さえ満たしていれば、「取消しする」ことができるのである。

民法第915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)
1.相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2.相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

民法第919条(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
1.相続の承認及び放棄は、第915条第1項の期間内でも、撤回することができない。
2.前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。
3.前項の取消権は、追認をすることができる時から6ヶ月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から10年を経過したときも、同様とする。
4.第2項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

 

撤回と取消しの違い

「撤回」と「取消し」は日常生活では概ね同様の意味で使われているが、法律上ではその意味合いは異なる。

「取消し」は、取消権者が行為の取消しの意思表示をすることによって、行為がなされた時点まで遡って「無かったこと」となる(遡及効)。

民法第120条(取消権者)
1.行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2.詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

民法第121条(取消しの効果)
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

 

対して「撤回」は、撤回権者が行為の撤回の意思表示をすると、以降、その行為が無効となる(将来効)。行為がなされた時点まで遡って「無かったこと」になるわけではなく、ざっくり言えば、「撤回」の意思表示がなされるまでは、その行為は有効であったこととなる。

つまり、相続放棄においては、相続放棄という行為を行ったことを「撤回」によって途中から無効にすることはできないものの、「取消し」によって相続放棄という行為を行ったこと自体を遡って無かったこととすることができるのだ。

 

相続放棄の取消しができる場合

相続放棄を取消すには、自分に落ち度がなかったこと、重大な勘違いや理由があったことを家庭裁判所に対して証明しなければならない。

相続放棄の取消しが認められうる例は以下のようなケースだ。

・相続財産の内容等に関して他人に欺かれていたケース(詐欺)
・脅されて相続放棄をすることを強要されていたケース(強迫)
・相続放棄した者が未成年者等の制限能力者であった場合
・成年後見人が相続放棄をした場合 など

 

どうであろうか。相続放棄は取消すことができないわけではないものの、それを裁判所に認めてもらえるケースは極めて限定的であることがおわかりいただけただろうか。

 

因みに相続放棄の取消しが可能な期間は、民法第919条にある通り、追認をすることができる時(例えば詐欺行為の末に相続放棄をしてしまった場合は、騙されていたことを知った時)から6ヶ月間か、相続放棄を行ってから10年が経過するまでである。

※通常、取消権は5年で消滅する(民法第126条)が、相続の承認・放棄では特別の期間が設定されている。

 

本記事は、2016年05月06日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
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prof Kasiko編集部

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