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秘密保持契約 ~「秘密情報」の範囲と交渉の方法

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「秘密情報」の範囲はとても重要

 秘密保持契約のポイントについては以前にも記事を書いたのですが、その後も多くの秘密保持契約書をチェックしていくなかで、さらに伝えたいことやアップデートもあったので今回も秘密保持契約書のポイントについて書かせていただきます。

 参考記事:
 ・秘密保持契約のポイント~情報開示を受ける側からの視点~①
 ・秘密保持契約のポイント~情報開示を受ける側からの視点~②

 

 以前の記事でも書きましたが、秘密保持契約の検討のなかではもっとも重要なことは、秘密保持義務を負う「秘密情報」の範囲をどのようなものにするかです。
 「秘密情報」の範囲はすなわち、情報の開示を受ける側にとっては秘密保持義務を負う情報の範囲であり、「秘密情報」の範囲が広ければ広いほど情報の開示を受ける側の情報管理コストと情報漏洩リスクは大きくなります。

 もっとも、受託業務等を実施する上で相手方から開示された重要情報はこれを適切に管理しなければならないことは当然です。
 大事なことは、秘密保持契約を結ぶ目的となる業務を実施するにあたり、秘密情報として管理する情報の範囲を必要十分な範囲に限定することです。

 

情報を開示する側は「秘密情報」を広汎に設定しようとする

 情報開示をする側からすれば、下記文案のように「秘密情報」の範囲を広汎に提案してくるでしょう。その理由は、開示する情報を包括的に「秘密情報」としておけば、何かあった時に情報の開示を受けた側の責任を問いやすくなるからです。

第x条(秘密情報の範囲)
本契約において秘密情報とは、本契約締結の事実及び本業務に関する契約締結交渉の事実並びに本契約及び本業務に関して相手方に対して口頭または書面その他の方法により開示されるあらゆる情報をいう。

 

 しかし、情報を開示する側において適切に情報が管理されているのであれば、開示する情報のうち「秘密情報」として適切に管理すべきものとそうでないものは容易に区別できるはずであり、そのような区別が可能であるにも関わらず、包括的に「秘密情報」を設定することは、自らの情報管理責任を相手方に押し付ける結果になるのではないでしょうか。

 また、そもそも、情報を開示する側としては、開示を受ける側が業務を行ううえで必要となる情報のみを開示すべきであって、業務と無関係の情報まで開示したうえで、当該情報について秘密保持義務を負わせるのは不公平なように考えます。

 

情報の開示を受ける側から 交渉の方法を考える

 情報の開示をする側から不公平な内容の「秘密情報」の範囲を設定された場合、発注元・受注者などの立場関係から修正要望をしにくい場合もありますが、説得的な理由を述べて交渉すべきと考えます。反論できない合理的理由に基づく修正要望については相手方も対応せざるを得ないように考えます。
 不合理な点は堂々と修正要望することが正しいビジネスであり、また秘密保持契約という入口の契約で適切な対応をすることにより本番の業務委託契約等でも合理的な条件による交渉・契約締結が可能になるのではないでしょうか。

 情報の開示を受ける側としては、開示された情報全てについて重要性に関わらず秘密保持義務を負うとすると、多大な情報管理コストとリスクを負う場合があること、これに対して、前述のように情報を開示する側が適切に情報管理していれば「秘密情報」の限定は容易であること、を修正要望の理由とするとよいでしょう。
 
 それでもなお情報の開示をする側が「秘密情報」の範囲を広範に提案してくる場合、情報の開示を受ける側としては、情報管理のために追加的にかかる費用や賠償リスクを受託料金に上乗せせざるを得ないことなどを交渉材料にする余地もあるのではないでしょうか。

 

「秘密情報」の範囲を限定するための修正案

 秘密情報の範囲を適切に限定するために、例えば下記のような方法があります。

【秘密である旨の表示を必要とする例】

第x条(秘密情報の範囲)
 本契約において秘密情報とは、相手方に対して書面または電子メール等の書面に準ずる方法により開示される情報のうち、事前または事後速やかに秘密である旨を書面または電子メール等の書面に準ずる方法により表示して開示された情報をいう。

【不正競争防止法上第2条6項の営業秘密に準拠する例】

第x条(秘密情報の範囲)
 本契約において秘密情報とは、相手方に対して書面または電子メール等の書面に準ずる方法により開示される情報のうち、秘密として管理されている、事業活動に有用な技術上または営業上の情報であって、公然と知られていない情報をいう。

【不要な情報開示について免責を定める例】

第x条(免責)
 両当事者は本契約及び本業務の遂行に必要な情報のみを相手方に開示するものとし、本契約及び本業務の遂行に関係のない情報を開示したことによって発生した損害又は紛争について、相手方は責任を負わない。但し、相手方に損害又は紛争の発生について故意又は重大な過失がある場合を除く。

 

例外事由規定とその意味

 情報を開示する側からの契約書案においても以下のような秘密情報の例外を定められていることは多く、情報を開示する側としては、このような例外事由規定が定められているのだから「秘密情報」の範囲は必要十分に限定されているとの反論が考えられます。

第x条(秘密情報の例外)
 次に各号に掲げる情報は秘密情報から除外されるものとする。
 ① 開示された後に、被開示者の責に帰することができない事由によって公知となった情報
 ② 開示を受ける前に、被開示者が知得していた情報
 ③ 開示を受ける前に、公知となっていた情報
 ④ 開示を受ける前に、被開示者が独自に開発し、または正当に入手した情報

 しかしながら、例外事由として定められるものは、原則である広範に定められた「秘密情報」の例外であり、例外事由にあたることは裁判上も情報の開示を受ける側が主張・立証しなければならなくなるでしょう。
 原則として「秘密情報」にあたるとすると、情報の開示を受ける側としては、開示される情報は基本的に「秘密情報」として厳重に扱わなければならず、例外事由規定が定められたとしても情報管理コストとリスクはあまり軽減されることはないでしょう。

※上記例外事由規定のうち、特に①はある情報が公知になれば、開示を受けた側が自己の免責事由を立証しない限り、原則として開示を受けた側に責任があるとする規定と解釈される余地もあり危険です。また、②④についても既に知得していたこと、独自に開発したことの立証は困難な場合もあります。

本記事は、2016年01月18日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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