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老後資金と会社員の副業と定年制度

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延び続ける平均寿命と増え続ける必要老後資金

日本人の平均寿命は延び続け、2014年で女性は87歳で、男性は80歳と過去最高を記録したそうだ。伸びる老後に備えて、働き続けたいと思う、あるいは働くことを余儀なくされる人は大勢いる。

参考サイト:WHO「2014年版“世界保健統計”:日本が長寿世界一を維持」

 

会社員が定年後も働く手段としては、継続雇用や再雇用という選択肢がある。しかし、例外はあるものの、一般的には再雇用または継続雇用されたとしても収入面のダウンはさけられない。

少子高齢化という重大な社会問題に加えて、ずさん管理等の諸問題まで吹き出す「年金」は信用できず、当てにできない・・・。

そうなってくると、現役中から定年後の準備を兼ねて行う副業が選択肢としての1つとして挙がってくる。

 

たちはだかる就業規則の壁

サラリーマンが副業を考えた時に立ちはだかる壁が、所属企業の就業規則である。バブル経済崩壊から随分と時間が経過した今日でも、副業禁止の規定を設ける就業規則を持つ会社はまだまだ一般的だ。

 

しかし、本来は労働契約の範囲外である私生活にまで会社が干渉して良いものなのだろうか?

これについては、女性社員がキャバレーで会計係のアルバイトを就業時間外に行っていたことに関して、就業規則違反として会社が普通解雇をしたことについて争われた「小川建設事件」という有名な判例がある。

結論から言えば、この裁判の判決は会社側の勝訴に終わっている。

「無断の兼業が会社との信頼関係を破棄するもの」「長時間にわたるものであったため、次の労働日における誠実な労働提供のための基礎的条件をなす適度な休養を用いることになっていない」ことがその根拠である。

 

小川建設事件 判決文 引用
(一) 就業規則における兼業制限規定の合理性
(中略)就業時間外は本来労働者の自由で、就業規則で兼業を全面的に禁止することは、合理性を欠く。しかし、労働者がその自由な時間を適度な休養に用いることは次の労働日における誠実な労働提供のための基礎的条件をなすもので、使用者としても労働者の自由な時間の利用について関心を持たざるをえず、また、兼業の内容によつては企業の経営秩序を害し、または企業の対外的信用、体面が傷つけられる場合もありえる。従業員の兼業の許否について、労務提供上の支障や企業秩序への影響等を考慮したうえで会社の承諾にかからしめる旨の規定を就業規則に定めることは不当とはいいがたく、したがつて、(中略)合理性を有するものである。 (二)(略)
(三)本件解雇の相当性 (中略)兼業の具体的職務内容を 告知してその承諾を求めることなく、無断で二重就職したことは、それ自体が企業秩序を阻害する行為であり、(中略)雇用契約上の信用関係を破壊する行為と評価されうるものである。

参照サイト:独立行政法人労働政策研究・研修機構「小川建設事件」
参照サイト:裁判所判例(PDF)

 

定年という労働契約の終了

ところで、定年とは、労働者が一定の年齢に達したことを理由に労働契約が終了することである。日本の多くの会社がこの定年制を導入している。

日本に暮らしているために定年制が普通のような感覚に陥るがちだが、諸外国をみると決してそうではない。年齢だけをその理由にして、労働契約を終了させることが年齢差別にあたるのではないか、という考え方もある。例えば、アメリカの年齢差別法(Age Discrimination in Employment Act)では、40歳以上の定年制は違法とされている。

もっとも、外国に定年を年齢差別とする法律があるからといって、そちらが正しいとか、海外に合わせるべきだということではない。

定年制は、日本の雇用慣行(長期雇用制度、年功序列制度)に合わせて機能しており、それなりの合理性がある。判例でも定年制について争われた「アール・エフ・ラジオ事件」で定年制の合理性を認めている。

参照サイト:全国労働基準関係団体連合会「労働基準判例検索:アール・エフ・ラジオ日本(定年制)事件」

 

しかしその日本の雇用慣行が大きく変化してきていることは周知の事実である。

また、年金の支給開始年齢が65歳になったのを受けて、高年齢者雇用安定法が定める定年年齢が65歳に修正されている。いずれはこの定年についての考え方も変わるときもくるかもしれない。

 

リーン・スタートアップ

まとめると、副業を禁止する就業規則がある会社にお勤めの方は、現状、「老後のために」と思い立ったところで現役中に副業を開始することができない。実際のところ、まっとうな副業であれば開始すること自体は何らの法律違反にもならないが、これが会社にバレてしまうと厄介なことになってしまうというわけだ。

このまま時代が進めば、いずれは社会情勢にあわせる形で企業も変わってくるかもしれないが。
※実際に副業を許可する企業はどんどん増えてきている。

 

とはいうものの、「それでは指を咥えて定年を待つしかない」と言い切ってしまうのも問題だ。

定年間近になって慌てても、社会に評価され十分な収入を得られるような技能は身につきにくい。最近は50代のうちから定年後の人生に向けた研修を行う企業もあるようだ。

思い立ったが吉日。現役中であろうが、具体的な行動を起こし始めることは非常に有意義だ。じっくりと計画を立て、必要な技能の習得を進める。業界の交流会等に参加して、先駆者の知見を拝借するのもいい。

何事にも早めの準備が有効であるのと同様、定年後に順調なスタートアップをするためには、現役の間に準備を始めておくにこしたことはない。

 

本記事は、2015年12月08日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
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