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自動走行車で交通事故が発生した場合の民事責任②

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自賠法3条の免責三要件

 自賠法3条は、被害者救済の観点から、過失等の立証責任の転換も図っています。

 すなわち、原則である不法行為責任では、被害者が“過失”を立証しなければなりませんが、自賠法3条は、運行供用者の側で以下の免責三要件すべてを証明しない限り責任を負うとしています。

①自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと
②被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと
③自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと

 

 要件①における「注意を怠らなかった」場合としては、例えば、運行供用者が十分な車両点検・整備を実施していたなどを立証すれば、要件を満たす余地はあるでしょう。(もっとも、レベル3以下の自動走行車の場合には、運転者が適切な緊急時対応をしなかったなどの不注意=過失が認められる場合もあります。)

 要件②は、交通事故の原因について第三者の危険な運転があったことなどを立証することが想定されていますが、自動走行車ならではの特別な事情も存在するように思います。

 自動走行技術は、自動車搭載の装置だけではなく、外部から提供されるソフトウェア・位置情報・道路情報が利用して運行されるでしょう。

 そのような自動車外装置や情報に交通事故の原因があるような場合には、これを立証することで要件②を満たす余地もあるのではないでしょうか。

 要件③については難しい問題がありそうです。
 要件③の「構造上の欠陥又は機能の障害」の有無は、運行当時の自動車に関する機械工学上の知識と経験とによって予め予測できたかによって判断されますが、自動走行車に搭載される高度の技術について運行供用者は予測し得ないことの方が多く、要件③を満たすことは難しい場合が多いかもしれません。

 

製造物責任法3条の製造物責任

 自動走行車に欠陥があるために交通事故が発生してしまう場合も考えられます。この場合には、製造物責任法3条の製造物責任を自動走行車のメーカーに対して追及する余地もあります。

製造物責任法3条(製造物責任)
製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。

 

 製造物責任については、以下の点に注意する必要があるでしょう。

1.「製造物」は製造または加工された動産(有体物)を意味します。そのため、自動走行車を動かすソフトウェアに欠陥があるような場合には、ソフトウェア自体の製造物責任を問うことは難しいでしょう。(但し、ソフトウェアを格納するICチップ等の有体物は「製造物」にあたるでしょう。

2.「欠陥」は、当該製造物が引き渡された時点における科学技術に関する知見によって認識することができたものに限られます(製造物責任法4条参照)。

3.「損害」は、「欠陥」と相当因果関係のある範囲に限定されます。「欠陥」がなかったとしても運転者の不注意や第三者の行為によって交通事故が生じたような場合には製造物責任は発生しません。

 

製造物責任と運行供用者責任の関係

 自動走行車に「構造上の欠陥又は機能の障害」(自賠法)≒「欠陥」(製造物責任法)があるような場合、被害者としては、A.運行供用者に対して自賠法の運行供用者責任を追及する方法、B.製造者に対して製造物責任を追及する方法があります。

 B.製造物責任を追及する場合には、被害者の側で「欠陥」の存在や因果関係等を立証する必要があるため、A.運行供用者責任を追及するのが容易でしょう。

 

 前述、運行供用者責任の免責要件③で述べたように、運行供用者が高度な技術を用いている自動走行車について「構造上の欠陥又は機能の障害」を予見することは難しいかもしれませんが、例えば製造者が外国企業等であって製造物責任を追及することが被害者にとって実際上難しいことも考えられます。

 被害者の救済を第一に考えると、自動走行車を管理・利用している運行供用者が被害者に対して一時的な責任を負うこともやむを得ないのかもしれません。

※自動走行車に欠陥がありそれにより交通事故が生じた場合、被害者に対して賠償をした運行供用者が、さらに製造者に対して求償又は損害賠償請求していく方法もあるでしょう。

 

自動走行車で交通事故が発生した場合の民事責任③
自動走行車で交通事故が発生した場合の民事責任①

 

参考記事:人工知能と法律 ~人工知能の行為と責任~
参考記事:シミュレーション!自動運転車両と法律問題の未来

 

本記事は、2016年10月18日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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