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自動走行車で交通事故が発生した場合の民事責任①

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自動運転のレベル

 今回は自動走行車(自動運転が可能な自動車)に関係する法律上の諸問題のうち、自動運転車が交通事故を起こした場合の民事責任についてどのような議論がなされているかということを紹介したいと思います。

 本題に入る前に、自動走行車はその自動化のレベルに応じて定義付けがなされているので、まず自動運転のレベル(定義)を紹介します。米国の国家道路交通安全局(NHTSA)による定義をベースとして、国土交通省オートパイロットシステムに関する検討会が分類したものです。

 

レベル 概要
レベル0 加速、操舵、制動のいずれについても運転者のみが責任をもって行う運転(警報装置を有する場合を含む)
レベル1
 単独のシステム
ACC、衝突被害軽減ブレーキ、レーンキープアシスト等により加速、操舵、制動のいずれかの操作を自動車が行う運転(緊急時対応はドライバー)
レベル2
 システムの複合化
ACCとレーンキープアシストの組み合わせ等により、加速、操舵、制動のうち複数の操作を一度に自動車が行う運転(緊急時対応はドライバー)
レベル3
 システムの高度化
レベル2のシステムを更に高度化することにより、加速、操舵、制動を全て自動車が行う運転(緊急時対応はドライバー)
レベル4
 完全自動運転
加速、操舵、制動を全て自動車が行う運転(緊急時対応も自動車)

※ACC(Adaptive Cruse Control):自動で車速や車間制御を行う機能を持った装置。

※NHTSA (National Highway Traffic Safety Administration):Preliminary Statement of Policy Concerning Automated Vehicles

※オートパイロットシステムに関する検討会:「オートパイロットシステムの実現に向けて 中間とりまとめ」(平成25年10月)

※本稿では議論のおおまかな部分を紹介しますが、より詳細な議論状況をまとめたものとしては、「自動走行車(自動運転)の実現に向けた法制度の現状と課題(上)(下)」戸嶋浩二弁護士 NBL No.1073 28頁/N0.1074 49頁をぜひご覧ください。

 

不法行為責任(民法709条)

 自動車による交通事故が生じた場合に、被害者が自らに生じた損害の賠償を請求するための原則的な法的根拠は、民法709条の不法行為責任です。

民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

 自動走行車による交通事故(特にレベル4)の場合に問題になるのは、“運転者”の“過失”が認められるかという点です。

 不法行為責任は、被害者の側から不法行為者(通常は運転者)の「故意又は過失」を立証しなければなりません。

 そのため、完全自動運転を行うレベル4の自動走行車の場合、そもそも不法行為者である“運転者”が存在せず不法行為責任は追及できないかもしれません。

 また、完全自動運転ではないレベル3以下の自動走行車であっても、自動運転のレベルが高ければ高いほど、“運転者”の行為が介入する場面は減っていき、“過失”を問うことができる場面は減っていくでしょう。

 運転者の責任を問う場面がなくなる、または減少すると、万が一、自動走行車による交通事故の場合、被害者は不法行為責任を追及できなくなりその救済が十分に図られない事態が生じる可能性も出てきてしまいます。

 

自賠法3条の運行供用者責任

 現在の法律においても、交通事故被害者に生じた生命身体的損害については、その救済を十分にするために、自賠法(自動車損害賠償保障法)3条が運行供用者責任を定めています。

自動車損害賠償保障法3条(自動車損害賠償責任)
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。

 

 運行供用者責任の主体は「自己のために自動車を運行の用に供する者」(運行供用者)とされています。

 「自己のために自動車を運行の用に供する」とは、「自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により教授する利益が自己に帰属する者」(最高裁昭和43年9月24日判決州民第92号369頁)と解釈されており、自動車の所有者やその他の自動車を使用する権利を有する者がこれに当たります。

 そうすると、自動走行車による交通事故の場合には、自動走行車を所有している個人や会社が責任を負うことになり、“運転者”が存在しないレベル4の自動走行車の場合であっても、被害者は自動走行車の所有者等に対して責任を問うことが可能になります。

 

自動走行車で交通事故が発生した場合の民事責任②
自動走行車で交通事故が発生した場合の民事責任③

 

参考記事:人工知能と法律 ~人工知能の行為と責任~
参考記事:シミュレーション!自動運転車両と法律問題の未来

 

本記事は、2016年10月17日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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