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自然災害被災者の債務整理と公的支援制度

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自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン

2015年12月25日、一般社団法人全国銀行協会が「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」と、その実務上の指針となるQ&Aを公表した。

本ガイドラインは、自然災害の影響によって、住宅ローンや事業性ローン等の既往債務を弁済することができないまたは近い将来弁済できないことが確実と見込まれるなどの一定の要件を満たした個人の債務者が、法的倒産手続によることなく、債権者との合意にもとづき、特定調停を活用した債務整理を公正かつ迅速に行うための準則(一般社団法人全国銀行協会「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン研究会」)

※ここで言う自然災害とは、同研究会が設置された2015年9月2日より後に災害救助法の適用を受けた自然災害とのこと。

参考サイト:一般社団法人全国銀行協会「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」

 

2011年の東日本大震災では、住宅ローンを組んでいた被災者が津波や地震の影響で住居を失った場合、失った住宅のローン残債があるばかりに、生活を再建するために新たな住宅を購入しようにも、「二重ローン」が壁となる問題が露わとなった。

そこで、国は金融庁を中心に「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」という、東日本大震災の被災者による債務整理支援策を2011年7月に策定。

住宅ローンや自動車ローンを抱えていた個人や、事業運転資金を借り入れていた個人事業主が大震災によって返済が困難となった場合には、金融機関との話し合いをもって、借り入れの減免や免除を行うことができるよう、指針を定めたのだ。

今回のガイドラインは、「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」を通じて得た経験則等も踏まえ、これをベースにその他の自然災害にも適用できるよう策定された新たなガイドラインであって、2016年4月から適用されていた。

皮肉なことに、この新たなガイドラインの適用から半月あまりのうちに、九州は熊本県を中心に前代未聞の大地震が発生し、甚大な被害が出ている。

 

ガイドラインを利用するメリットと手続きの流れ

もちろん熊本地震で被災した被災者は同ガイドラインの対象者であり、住宅ローンや事業ローン等の債務を抱えた状態で被災した場合は、同ガイドラインに基づいて、債権者である金融機関に借り入れの減免や免除を申し出ることができる。

さらにガイドラインの利用には以下のようなメリットも。

専門家の無料支援
国の補助により弁護士、公認会計士、税理士、不動産鑑定士といった「登録支援専門家」による手続支援を無料で受けることができる。

一定額の現預金を手元に留保可能
債務整理ではあるものの、被災状況や生活状況を勘案したうえで、最大500万円程度の現預金をローンの支払いに充てず手元に留保することができる。
例えば、1000万円の現預金・2000万円の住宅ローン残債がある時に被災してガイドラインが適用され、500万円を手元資金として留保することを認められると、残り現預金500万円を支払いに充てることで、残債1500万円が債務整理によって減免されることとなる。

信用情報への登録はナシ
通常の債務整理によって債務を減免されると、その旨が個人信用情報に登録され、新たな借り入れに際してマイナス影響を及ぼす(いわゆるブラックリスト)。しかし、ガイドラインを利用した債務整理であれば、登録は無く、新たな借り入れを行う場合も影響はない。

 

ガイドラインを利用するための手続きの流れは以下の通りだ。

①手続き着手の申し出
借入額が最も多い金融機関(メインバンク)の受付窓口で、ガイドライン手続きの着手を申し出る。

②専門家による手続き支援を依頼
金融機関から手続き着手同意が得られた後、地元弁護士会などを通じて、全国銀行協会に対し、「登録支援専門家」による手続き支援を依頼。

③債務整理(開始)の申し出
金融機関に債務整理を申し出て、申出書のほか財産目録などの必要書類を提出。
※この段階で債務の返済や督促は一時停止する。

④「調停条項案」の作成
「登録支援専門家」の支援を受けながら、金融機関との協議を通じて、債務整理の内容を盛り込んだ書類(調停条項案)を作成。

⑤「調停条項案」の提出・説明
「登録支援専門家」を経由して、金融機関へガイドラインに適合する「調停条項案」を提出・説明する。

⑥特定調停の申し立て
債務整理の対象にしようとする全ての借入先から同意が得られた場合、簡易裁判所へ特定調停を申し立てる。
※調停申立費用は債務者負担

⑦調停条項の確定
特定調停手続きにより調停条項が確定すれば債務整理成立。

(参照元:自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン)

 

被災後の生活再建はその他の公的支援制度も併用する

なお、債務整理支援の他にも、被災者の生活再建への取り組みを支援する公的サポートは多数ある。

<給付>

被災者生活再建支援制度(問い合わせ先:市町村)
災害によって居住していた住宅が著しい被害を受けた世帯に対して支給される支援金。
・全壊/解体/要長期避難の場合の基礎支援金:100万円
・大規模半壊の場合の基礎支援金:50万円
————————————–
・建設/購入による再建の場合の加算支援金:200万円
・補修による再建の場合の加算支援金:100万円
・公営住宅以外で賃貸する場合の加算支援金:50万円
※一旦住宅を賃貸した後に再建する場合は合計200万円まで(補修の場合は合計100万円まで)
※支給申請には罹災証明書等が必要

参考サイト:内閣府「被災者生活再建支援制度の概要」(PDF)

災害弔慰金(問い合わせ先:市町村)
災害で亡くなった方のご遺族に対して支給される弔慰金。
・生活維持者が亡くなった場合:最大500万円支給(市町村条例に定められた額)
・その他の方が亡くなった場合:最大250万円支給(市町村条例に定められた額)

災害障害見舞金(問い合わせ先:市町村)
災害に起因した負傷や疾病で、精神や身体に障害が生じた場合に支給される見舞金。
・生活維持者が障害を負った場合:最大250万円支給(市町村条例に定められた額)
・その他の方が障害を負った場合:最大125万円支給(市町村条例に定められた額)

 

<融資>

災害援護資金(問い合わせ先:市町村)
災害により世帯主が負傷した場合や、住居・家財が損害を受けた場合に、生活再建に必要な資金を融資。
・貸付限度額:150万円~
・貸付利率:年3%(3年~5年の据置期間中は無利子)

生活福祉資金制度による貸付(問い合わせ先:市町村、社会福祉協議会)
低所得世帯や障害者・要介護者のいる世帯に対して、必要な経費を融資。
・貸付限度額:150万円程度
・貸付利率:連帯保証人アリで無利子(そうでない場合は年1.5%)

災害復興住宅融資(問い合わせ先:住宅金融支援機構)
災害によって居住していた住宅が被害を受けた場合、当該住宅所有者に住宅資金を低利融資。
※融資申請には罹災証明書等が必要

災害復旧貸付(問い合わせ先:日本政策金融公庫)
災害により被害を受けた中小企業・小規模事業者等に対して、事業所復旧のための運転資金を融資。

(参照元:内閣府「被災者支援に関する各種制度の概要」)

 

この他にも、多数の各種融資制度、相談制度、助成・補助制度、立替・減免・猶予制度等があるので、さらに詳しく知りたい方は以下の内閣府発行のPDFを参照して欲しい。

参考サイト:内閣府「被災者支援に関する各種制度の概要」(PDF)

 

本記事は、2016年05月10日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


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