法務・税務・労務などの問題解決エンジン
some system placed here.

請負人の担保責任

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

請負人の担保責任

 ウェブサイト製作、ソフトウェア製作、建築請負その他、特にBtoBの事業を行う事業者にとって、請負契約(ある仕事の完成と仕事の結果に対して報酬を支払うことを内容とする契約)は大変なじみ深いものです。

 今回は、請負契約における仕事の結果である目的物に瑕疵がある場合の責任についてまとめました。

 まずは、目的物に瑕疵がある場合の請負人の責任について定めた民法634条・635条を見てみましょう。

民法第634条(請負人の担保責任)
1.仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
2.注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第533条の規定を準用する。

民法第635条
仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。

※「第533条」はいわゆる同時履行を定めたものであり、「第533条の規定を準用する」ということは、瑕疵の修補・損害賠償がなされるまで報酬の支払を拒めるということになります。

 

どのような場合に責任が発生するのか

 請負人の担保責任は、「仕事の目的物に瑕疵があるとき」に発生します。

 「瑕疵」とは、“仕事の目的物に通常その物が備えなければならない性質が欠けていること”を意味します。物理的な瑕疵のほか、法律上必要な許可等が得られていないという法律的な瑕疵も含まれます。

 どのような性質が“通常その物が備えなければならない性質”にあたるかは、具体的な契約内容や取引慣行によって判断されることになるでしょう。

 なお、売買契約の場合、「隠れた瑕疵」(買主が通常の注意を持ってして知りえなかった瑕疵)に限って担保責任を追及することができます。

民法第570条(売主の瑕疵担保責任)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

 

 請負の場合には、瑕疵が「隠れた瑕疵」である必要はありません。

 請負契約の目的は“瑕疵のない目的物”を完成させることなので、「隠れた瑕疵」であるか否かにかかわらず、請負債務の完全履行の一環(補完)として請負人は担保責任を負うべきこと、売買の場合には契約時点の目的物を現状で引き渡せば一応は債務の履行となるが公平の観点から「隠れた瑕疵」が存在する場合には特別に担保責任が認められていること、などからこのような違いが生じているのでしょう。

 瑕疵が注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じたときは、請負人の担保責任は発生しません。

民法第636条(請負人の担保責任に関する規定の不適用)
前二条の規定は、仕事の目的物の瑕疵が注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じたときは、適用しない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。

 

責任の内容

 「仕事の目的物に瑕疵があるとき」に、請負人が負う責任は大きく分けて以下の3つです。

1.瑕疵修補義務
 → 瑕疵が重要でなく、修補に可分の費用を要するときは負いません。

2.損害賠償義務
 → 瑕疵修補とともに請求される場合があります。

3.解除
 → 契約目的を達することができないときに解除される場合があります。但し、建物その他の土地の工作物については仕事の完成後は解除できません。

 建物その他の土地の工作物について仕事の完成後は解除できないという制限は、価値が高く周囲への影響も大きい建物等の取り壊しを防ぐという政策的理由に基づくものです。

 

いつまで請求されるのか

 仕事の完成後、いつまでも担保責任を追及されうるのは請負人の地位を非常に不安定にします。そこで、請負人の担保責任の存続期間が定められています。

原則の存続期間
 → 仕事の目的物を引き渡したときから1年。仕事の目的物の引渡を要しない場合には、仕事の終了から1年。

建物・土地工作物(木造等その他一般的な構造)
 → 引渡のあと5年。

建物・土地工作物(石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他類する構造)
 → 引渡のあと10年。

 

特約による変更

 以上のような民法の規定による請負人の担保責任の一部については、当事者の合意により民法の定める内容とは異なる特約を定めることもできます。

もっとも民法は特約にも一定の制限を加えており、下記のような条文があります。

民法第639条(担保責任の存続期間の伸長)
第637条及び前条第1項の期間は、第167条の規定による消滅時効の期間内に限り、契約で伸長することができる。

民法第640条(担保責任を負わない旨の特約)
請負人は、第634条又は第635条の規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができない。

※民法第167条の規定による消滅時効の期間は、債権について10年間です。

 

本記事は、2016年07月12日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所


新着記事
公式Facebookページ 公式Facebookページ
誰に何と相談していいかわからない方へ
050-7576-0762
[日本法規情報]
  • 平日10:00~20:00
  • 土日祝終日、受付のみ対応

誰に何と相談していいかわからないあなた。
私達が相談相手探しのお手伝いをいたします。

無料相談・全国対応 050-7576-0762 お電話ボタン