法務・税務・労務などの問題解決エンジン
some system placed here.

賃貸物件の敷金返還・原状回復費用トラブル

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

賃貸物件のトラブルが減らない原因

住宅の賃貸借契約でいつの時代も群を抜いて多いトラブルは、退去時の敷金返還原状回復費用である。引っ越しや次の入居にもお金が必要な借主にとって、1円でも手元に現金が戻ってくることはありがたいこと。だから、退去時の敷金返還と原状回復費用は極めて大事なのだ。

一方、利害関係が反対の立場にある貸主にとっても、月々の家賃・敷金返還費用・原状回復費用はセットで死活問題となる。借主に引越しされる=これらをまとめて失うことになるからだ。

 

現在では、ひと昔前のような人情で貸し借りがあった大家・店子という人間関係は消えつつある。

貸主と借主の間には不動産業者が仲介に入って何事も事務的に進んでいくため、貸主と借主との間に話し合いの余地もなくなっていきている。借主は、書類上のプロフィールだけで入居審査をされ、貸主と借主は一度も顔を合わさないで入居が決まり、その後もまた然りなことも珍しくない。

今では賃貸物件に関するガイドラインができたり、裁判に至ったケースの判例が豊富になってきたことから、ある程度の基準ができつつあるが、それでも貸主と借主の間で退去時の敷金返還と原状回復費用を巡ってトラブルになるケースはなくならない。

 

「敷金」と「原状回復費用」とは

敷金も原状回復費用も、国の法律で取り決めされているものではなく、不動産業界の業界ルール・慣行で建物賃貸借契約に記載されている事項だ。

敷金とは、家賃の滞納や基準以上の建物破損などがあった時の損害を埋める目的で、契約時に借主が貸主や不動産業者に預けておく費用である(通常、居住用の賃貸物件なら賃料の2ヵ月分、事務所用の賃貸物件なら賃料の半年分~1年分ほど)。もちろん、退去時に借主に非のある損害が一切なければ、借主に全額返還されることになる。

 

原状回復費用とは、「原状回復=元に戻す」ために掛かる費用を指すが、そうは言っても借主は賃貸物件を“借りた当時とまったく同じ状態に戻す”義務を負うわけではない。経年劣化や通常の使用方法での損耗(日照による障子紙やガラスの変色・ひび割れ、壁の張り紙の鋲跡など)については仕方ないことであり、これらの回復について借主は責を負わないのだ。

ただし、もし、寝タバコでつけた焦げ跡やクロスのヤニ、剥がせない張り紙、故意につけたような傷など、借主が著しく損害を与える行為を賃貸物件にしていた場合は、借主の責任となり、退去時に敷金から元に戻すための費用=原状回復費用を差し引かれることとなる。

 

なお、敷金返還と原状回復費用については、平成10年に国土交通省住宅局(当時の建設省)が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を作成している(平成16年、平成23年に再改訂、再々改定)。

詳しくは以下のURLを参照していただきたい。
参考サイト:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

 

「敷金・礼金0物件」と「東京ルール」とは

「敷金で揉めるなら、いっそのこと最近よく目にする“敷金・礼金0物件”を借りれば問題ないのでは?」と思うかもしれない。

確かに“礼金0”はうれしい限りだ。ただし、あわせて“敷金0”となっていても実際には入会金・保証金・会費・家財保険・仲介手数料・事務手数料等、結局は様々な条件・名目をつけてオカネを取られるか、退去する時にクリーニング代などと要求される金額があると思っていた方がよい。

さらには、訳あり物件で入居率が悪いために“敷金・礼金0”を入居の呼び水としているケースも考えられる。例えば、建物が古くて部屋が狭い、日当たりが悪い、騒音がある、入居者に問題があるなど、何らかの原因もあるかもしれないため、その意味でも“敷金・礼金0”物件には用心に越したことはなかろう。

※礼金とは、物件の賃貸契約を締結した際に借主が貸主にお礼の意味を込めて支払うオカネのこと(一般的に家賃の1か月分)。主に東京を中心とする関東地方の不動産業界の慣行だが、その他地域にも名前が違うだけで似たようなシステムは存在する。例えば、関西圏では敷金・礼金の代わりに、保証金・敷引きシステムがある(関東の敷金に相当する保証金から、予め入居時に一定金額が差し引かれる=敷引き=関東の礼金に相当)。

 

敷金については、例えば東京において「東京ルール」というのがある。地域ごと・業者ごとに曖昧さの残る敷金について、明確な線引きを示すものである。この東京ルール、具体的には、平成16年10月施行の「東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例」(賃貸住宅紛争防止条例)というガイドラインを指す。

当該ガイドラインでは、宅建建物取引業者が借主に書面を交付し、退去時の原状回復と入居中の修繕の費用負担の原則、実際の契約の中で借主の負担となる具体的な内容の説明を義務付けている。ただし、あくまで東京都都市整備局がまとめた、トラブル防止・回避のためのガイドラインであり、法的拘束力はない。

参考サイト:東京都都市整備局「賃貸住宅紛争防止条例」

 

敷金返還と原状回復はシビアなオカネの問題である。

退去時のトラブルを防止・回避するためには、物件を貸す側や仲介する不動産業者がガイドライン等を遵守するのはもちろんのこと、借主側も業者任せにすることなく、自らが契約者の一方であることを認識し、賃貸契約内容をしっかりと確認しなければならない。

もし、敷金や原状回復費用以外でも、契約内容に腑に落ちないことがあれば、契約締結前にその旨を相手方に伝え、その問題が解決して納得してから判を押す。それが契約というものであり、ここを“なぁなぁ”にして入居を急ぐケースに限って、後で「そんな話は聞いていなかった!」-なんてことになるのだ。

 

本記事は、2015年11月26日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

prof Kasiko編集部

編集チーム

  • 所属:Kasiko


新着記事
公式Facebookページ 公式Facebookページ
誰に何と相談していいかわからない方へ
050-7576-0762
[日本法規情報]
  • 平日10:00~20:00
  • 土日祝終日、受付のみ対応

誰に何と相談していいかわからないあなた。
私達が相談相手探しのお手伝いをいたします。

無料相談・全国対応 050-7576-0762 お電話ボタン