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返還請求に国税が”No” サッポロ極ZERO騒動

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これまでの”極ZEROショック”の経緯

国内ビール大手一角のサッポロホールディングス(非上場)が、糖質ゼロ・プリン体ゼロをウリにする”サッポロ 極ZERO”を発売したのは2013年6月のこと。

当初は税金の安い第3のビール分野として売り出し、非常に好調な出荷を誇っていたものの、ここに国税庁が「待った」をかける。

酒税法におけるビールの分類は、原材料のうち主に”麦芽又は麦の量”を基準に、ビール発泡酒(発泡酒は麦芽重量に応じて2段階の税率がある)・その他の発泡性酒類(いわゆる第3のビール等)の4区分に分けられ、それぞれで税率が異なっている。

参考記事:サッポロの極ZEROショックに見る酒税の仕組み

 

国税当局は2014年1月、「製造方法等を勘案するとサッポロ 極ZEROは第3のビールには該当しない可能性がある」と指摘した。

”サッポロ 極ZERO”は第3のビールとしてその税率を基に価格設定をして売り出したものの、これが第3のビールと認められなければ、ビール類で最も安い税率が適用されなくなる=納めるべき酒税が高くなる=それまでの”サッポロ 極ZERO”の価格を維持できなくなる。

この指摘に慌てたサッポロ側は”サッポロ 極ZERO”の製造を一旦中止し、”ビール350mlに課される税額77円”と”第3のビール350mlに課される税額28円”の差額分の酒税、約115億円(それまで販売していた2億本分に相当)を”自主的”に追加納税した。

これが2014年5月のことで、その2ヶ月後の7月、サッポロは製造方法をリニューアルした”サッポロ 極ZERO”を見直して発泡酒として再発売する。

そして、年が明けて今年1月26日、サッポロは”サッポロ 極ZERO”の製造方法を社内検証した結果、「間違いなく第3のビールに該当」していたことに確証を持ち、”自主的”に追加納税した115億円の返還を国税当局に求める

その求めに対して、4月28日、サッポロに国税当局から書面による回答があった。国税当局の回答は「No=返還しない」という内容だったそうだ。

 

国税は返還しない理由を明らかにせず

事の経緯をメーカーであるサッポロ側視点で時系列にまとめると以下の通りだ。

2013年6月:第3のビール”サッポロ 極ZERO”発売

2014年1月:ヒット商品となって2億本を売り上げていた”サッポロ 極ZERO”に対し、国税当局が「サッポロ 極ZEROは第3のビールに該当しない可能性がある」と指摘

2014年5月:”サッポロ 極ZERO”の製造販売を一旦停止し、差額分の酒税約115億円を自主的に追加納税

2014年7月:”サッポロ 極ZERO”を発泡酒として再発売

この間に当初の製造方法を社内検証

2015年1月:社内検証の結果、当初の”サッポロ 極ZERO”が間違いなく第3のビールに該当していたことを確証し、追加納税した115億円の返還を国税に求める

2015年4月:国税から「返還しない」と回答がある

なお、国税当局はサッポロに対して、「返還しない」理由を明らかにしていないという。「守秘義務があり、個別の案件には答えられない(引用元:読売新聞)」のだそうだ。

 

問題は長期化するか?早々の幕引きとなるか?

国税当局が返還請求にゼロ回答したことを受けた、識者やネットの声を総合すると、概ね”理由なしに返還しないと答えた国税”を非難する意見が多いようだが、一部には「国税から指摘を受けたサッポロが勝手に追加納税して自爆しただけ」等との見解も見受けられる。

一連の経緯だけ見ると、確かにそうとも言えなくもないのかもしれないが、相手は国税だ。

指摘を無視して後になって莫大な追加納税を命じられれば相当な痛手となるし、不服を申し立てて裁判に移行すれば事態の決着までに長い時間を要する。

仮にその間も第3のビールとしたまま”サッポロ 極ZERO”の製造販売を続け、万一、裁判で国税の言い分が正しいとの判断がでれば、その間に増えた販売本数分も加わり、更に巨額の納税義務が生じてしまう。

そこでサッポロ側は、そういったリスクを最小限に抑えるために、自主的に追加納税したうえで、”サッポロ 極ZERO”を発泡酒に早急にリニューアルして再販し、社内検証を行ってから、改めて更正の請求を行ったわけだ。

※更正の請求とは、税率や計算を誤って過大に納めてしまった税額を更正するよう求める手続きのこと。更正の請求は、納税者の正当な権利。

 

今後の対応についてサッポロは「外部の専門家や弁護士と協議のうえ対応を検討する」としていて、国税当局と同社の争いの長期化を予想するメディアも少なくない。

ただし、問題が長期化すればするほど、サッポロ側には相応の費用負担がかかろう。

 

リニューアルして発泡酒として再発売した”サッポロ 極ZERO”の売り上げは少なくとも昨年段階では好調であったようで、4月22日には”サッポロ 極ZERO”を冠したチューハイ商品を投入する等、サッポロが一連の騒動を逆手にとって、ブランディング効果を如何なく利用しているようにも窺える。

また、第3のビールの増税が従前から税制改正の俎上にあがっていることを鑑みれば、発泡酒へのリニューアルは、これを先読みして先手を打った可能性がある。

サッポロが本件については”泣き寝入り”して、早期の幕引きを図る可能性も少なくはなさそうだ。

 

参考記事:
サッポロの極ZEROショックに見る酒税の仕組み
酒税法改正で第3のビールは値上げ必至に

 

本記事は、2015年05月08日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
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