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遺言者が認知症?-「遺言能力」と遺言書の有効性

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遺言が無効になれば争族は免れない

生前に遺言を遺すにしても、本人の意思が法的に認められなければ遺言は有効とはならない。そのためには、遺言の中身を誰もが理解できるような内容にして、なおかつ遺言内容の結果で起こる状況を作成時点で理解・推測できる能力が必要になる。

要は、物事に対してしっかりした判断ができる意思能力が必要なのである。これを「遺言能力」という。

 

遺言内容にある本人の意思が法的に認められないというのは、たとえ、形式的には遺言書が有効であっても、本人に「遺言能力がない」と判断され、無効とされることを意味する。

せっかく故人が生前に遺言書を遺したにもかかわらず、「遺言能力がないため無効」と判断されてしまっては、相続人同士の間に不要な争いの種が増えるだけだ。

 

とはいえ、どんな遺言書であっても相続人のうちの誰かが「この遺言は無効だ」と訴えを起こさない限り、無効にはなりえない。

現実的には、当事者同士で争いになっただけでは効力に影響はなく、白黒をつけようとするなら、最終的には裁判になってしまうのだ。

 

民法の規定する「遺言能力」

「遺言能力がある」とする判断基準は、民法で決められている。つまるところ、「遺言能力がない」と判断される人は、以下の民法の各規定に合わない人だ。

民法第961条(遺言能力)
15歳に達した者は遺言をすることができる。

民法第963条(遺言能力)
遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

民法第973条(成年被後見人の遺言)
2.成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。

 

まず、15歳という年齢で既に「遺言能力がある」と判断されていることに、驚きを感じる人もいることだろう。

民法では、未成年であると「契約」が発生する行為は「親権者の同意」が必要とされているのだが、遺言は、未成年であっても15歳に達していれば可能としているのだ。それは、亡くなった後に効力を発揮するのが特徴の遺言であるがため、未成年であっても、その権利は保護されて然るべきと考えられているからである。

読み書きもままならない歳の子供であれば流石に判断能力うんぬんとはならないが、“15歳ともなれば自身の意思を書き記す能力に不足はない”との考えのもと、そこに線引きがなされているのだろう。

※蛇足だが、少年法は満14歳を一つの区切りとしている。14才未満の子どもの行為は、刑事責任年齢に達していないとの判断のもと、「犯罪」として扱われることはない。

 

さて、やはり遺言能力の有無で問題となるものの多くは、963条や973条に該当するケースだ。

認知症精神障害がある人は、疾病による判断能力の程度によって「成年被後見人」、「被保佐人」、「被補助人」に分かれるが、「成年被後見人」だけは原則として遺言能力はないとされている。

因みに973条2項の内容の言わんとしていることは、“遺言能力のない「成年被後見人」が、一時的に判断能力が回復している場合に遺言を遺そうとするならば、医師2人以上の立会いのもと、法律証拠にすることに則って遺言することが可能である”ということである。

 

遺言作成前に医師の診断を

一般的に考えて、遺言を遺す人のほとんどは“高齢者”だと思われる。個人差はあろうが、判断能力の低下や認知症の心配をしなければならなかったり、あるいは認知症の兆候がすでに出始めているケースもあったりする。

自身が世間一般に言われる“高齢者”に該当する年齢に達してから遺言を作成しようとするならば、遺言能力の有無は主観で決めるのではなく、法律で証明しなければならないことを知っておいた方がよい。「最近、物忘れをしやすいが、このくらいなら問題ないだろう」との慢心が、自身の死後に、親族間の“争族”の火種となってしまいかねないからだ。

 

自身の遺言能力を法的に証明するには、まず、医師の診断を受けることである。

例え公証人や弁護士の助力を受けて遺言書を作成しようとも、受け答えに不自然な点がなければ遺言書作成がそのまま進んでしまうことがある。もし、後になってその時点から認知症であった可能性があると医師に判断されれば、遺言書は無効になり、無駄になってしまう。

医師の診断を受けて自身に遺言能力が有ることを確認してから、公証人や弁護士といった専門家のアドバイスを基に遺言書を作成すれば、それが客観的かつ法的な証明となるのだ。

 

なお、万が一、医師に“認知症”や“認知症の疑いあり”と判断された場合、遺言能力の有無は症状の度合いや診療録(カルテ)等で判断されることになるが、診療録(カルテ)を開示するか否か等は弁護士等と相談してみるのがいいだろう。

すでに家族に付き添われないと医師の診断を受けられないほどで、明らかに認知症だとわかっていても、遺産相続のためには医師の診断書はあって然るべき。

相続人のうちの誰かが、遺言者を唆して自分に都合のイイ遺言を書かせてしまったとしても、その診断書が、「当時の遺言者に遺言能力がなかった」ことを証明する重大な証拠となるためだ。

 

本記事は、2016年01月14日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
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