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遺言~「相続させる」と「遺贈する」という記載方法の違い~その②

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「相続させる」と「遺贈する」の実務上の違い

 それでは、相続手続という実務上の点において「相続させる」と「遺贈する」とはどのような違いがあるのでしょうか。

【登記の際の登録免許税】
 不動産を相続した場合の登記手続にかかる登録免許税が異なります。

 「相続させる」遺言による所有権移転登記の場合、登録免許税の金額は、当該不動産の固定資産税評価額の1000分の4となります。

 「遺贈する」遺言による所有権移転登記の場合、登録免許税の金額は、当該不動産の固定資産税評価額の1000分の20となります。

 もっとも、相続人に対する遺贈の場合、遺贈を受ける者が相続人であることを証明する書類(戸籍謄本等)を添付して登記申請を行うことにより、「相続させる」遺言の場合と同様に1000分の4の税率となるため、登録免許税については実際上の差異はないでしょう。

 

【登記の際の必要書類】
 法律的な効果において当然に相続が発生するのか(「相続させる」)、贈与手続が必要となるのか(「遺贈する」)に対応して、登記の際の必要書類が変わってきます。

 「相続させる」遺言の場合、被相続人の死亡と同時に当然に「相続させる」遺言を受けたものが対象となる財産を取得するため、所有権移転登記手続も当該相続人が単独で行うことができます。

 一方「遺贈する」遺言の場合、「相続させる」遺言のように当然に財産取得の法律的な効果が発生せず、被相続人の死亡によって一旦相続人全員の共有に属した財産について遺贈を受けた者(受贈者)に贈与するという形になります。

 そのため不動産を取得した相続人以外の他の相続人全員と共同で所有権移転登記申請をしなければなりません。共同で所有権移転登記申請をすることになるため、相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書などの書類が必要となり、相続人の一部に非協力的なものがいる場合には大変手続が難しくなります。

 

【農地の場合】
 取得させる不動産が農地の場合、「相続させる」遺言では、農地法による知事の許可が不要ですが、「遺贈する」遺言のうち特定遺贈による場合には、農地法3条によって農業委員会又は県知事の許可を受けないと、農地を取得することができず、所有権移転登記をすることができません。

農地法第3条(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)
農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合及び第五条第一項本文に規定する場合は、この限りでない。(以下省略)

 

【借地権・借家権の移転】
 例えば、土地や建物を被相続人が賃貸しており、これを相続人が承継する場合、「相続させる」遺言の場合、賃貸人の承諾は不要です。一方で、「遺贈する」遺言の場合、借地権・借家権を承継取得するためには原則として賃貸人の承諾が必要となります。

 

「相続させる」遺言のメリットが大きい

 以上を見ると、相続による権利承継、特に不動産の所有権移転登記の点において「相続させる」遺言に大きなメリットがあります。

 記載方法としては細かいかも知れませんが、「相続させる」と「遺贈する」では大きく効果が異なってきます。遺言書を作成する際にはぜひご留意ください。

 

遺言~「相続させる」と「遺贈する」という記載方法の違い~その①へ

 

参考記事:
相続のルール ~法定相続人の確定~
相続のルール ~相続分~
相続のポイント ~単純承認・相続放棄・限定承認~
相続のポイント ~戸籍の調べ方~
相続のポイント ~遺産分割の4種類の手続~
相続のポイント ~遺言の方式~

 

本記事は、2015年10月19日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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