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酒税法改正で第3のビールは値上げ必至に

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日本の酒税は高い

政府自民党税制調査会が、ビール(麦酒)にかかる酒税の税率を引き下げ、一方で低価格路線が人気を得ている”第3のビール”にかかる税率を引き上げることで、ビール系飲料の種類間に存在する税率格差を縮小する方向で検討を始めた」と各報道機関が報じている。

 

バブル崩壊以来続く長きにわたる景気低迷によって、ビールの消費量は減少傾向にある。
ビールの消費が減少を始めた頃、メーカーがビールを買わなくなった理由を消費者に聞くと、口を揃えて「高くて手が出なくなった」と答えたそうだ。

 

日本は世界各国と比較しても、お酒にかかる税金=酒税が高いと言われている。

例えば、物価が高いと言われる香港で日本国内大手メーカーの主力ビールを購入すると、本稿執筆時点(2014年10月28日現在)の為替レートで換算して、500ml缶1本あたりで概ね100円前後だ。

日本で買えば300円程(ディスカウントショップでまとめ買いすればもう少し安く買える場合もある)する「スーパードライ」や「一番搾り」の500ml缶が「100円程度」で買えるのだ。

超破格に思えるその値段は、香港が2008年2月に酒税を完全撤廃したがために成し得ている。
つまり、ビール500mlあたりに対して110円の酒税をかける日本に対して、香港はその部分をゼロに抑えることができるので、低価格を実現できているのだ。

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第3のビールが登場した経緯

ここで、巷で「第3のビール」と呼ばれるビール系飲料が登場した経緯を説明しておこう。

ビールの消費量が減少傾向を示すずっと以前から、各メーカーはビールとジュースの混合飲料(合成ビールや模造ビールと呼ばれていたそうだ)等の開発を進めていたものの、主力のビールの地位を揺るがすような商品は中々誕生しなかった。

当時のビール系の酒税は、「ビール」とそれよりも税率が低い「発泡酒」という2つの区分けになっていたそうで、早くからその安い税率に目を付けてシェア拡大を図ろうとしたメーカーもあったという。

そして、1990年代半ば頃になると、消費者が「景気低迷」を本格的に意識し始め、ポツポツと「ビール風味飲料」分野にヒット商品が出始め、ビールよりも価格が安い発泡酒市場が形成され始める。
1998年には、同分野で出遅れ気味であったキリンビールが発売した発泡酒「麒麟淡麗生」が爆発的ヒットを記録。正真正銘のビールと比較して「味が薄い」「コクが足りない」等といった、それまでの発泡酒の敬遠理由を克服した同商品の寄与により、発泡酒市場は市民権を得て拡大した。

 

これに勢いづいて各メーカーともに発泡酒市場のシェア拡大にやっきになり、ビール類市場シェアにおける発泡酒のシェアは2003年4月に48%にも達したそうだ。
だが、翌5月1日の酒税法改正によって、全盛期を迎えていた「発泡酒」の酒税率は引き上げられた

すると、今度は、各メーカーが新市場における「二匹目のどじょう」を狙って、酒税法改正によって細分化されたビール類市場の、最も税率が安い「その他の発泡性酒類」に該当する商品の開発にやっきになった。

こういった経緯で生まれたのが、「極ZERO(現在は発泡酒に分類:詳細は以下のリンク参照のこと)」や「金麦」、「のどごし生」等といった、最近のビール類飲料の花形である「第3のビール」である。

参考記事:サッポロの極ZEROショックに見る酒税の仕組み

 

ビールの酒税率を下げて、第3のビールを引き上げる

発泡酒よりもさらに価格が安い第3のビールもじわじわとシェアを拡大し、今では「庶民の味方」を代表する商品となっている。

ただ、改めて背景を振り返ると、一連の流れは税率を決める政府と各ビールメーカーの不毛な「いたちごっこ」ともとれる。
消費者は「ビールが飲みたかった」のに高くて手が出なくなり、発泡酒を楽しむようになったもののこちらも増税となってしまった。そこでやむなく、さらに安いビール風味のアルコール飲料である第3のビールに落ち着いているわけだが、このような慣行は税収減につながる国政にとっても、「本音はビールが飲みたい」消費者にとっても、負の連鎖でしかない。

自民党税制調査会の野田会長も「本来あるべき姿から言うと、ちょっと違う」とコメントしている。

 

これを是正しようというのが、「ビールの税率引き下げと、第3のビールの税率引き上げ」案である。

 

法改正は低価格志向の消費者が反発しかねない

現在の酒税法に定められているビール類の酒税率は以下の通りだ。

 

ビール ※1 1キロリットル当り:22万円(=350ml当り77円)
発泡酒 ※2 1キロリットル当り:17万8,125円(≒350ml当り62円)
発泡酒 ※3 1キロリットル当り:13万4,250円(≒350ml当り47円)
その他の発泡性酒類 ※4 1キロリットル当り:8万円(=350ml当り28円)

 ※1:発泡性酒類に該当
※2:麦芽重量が水以外の原料の25%以上50%未満でアルコール10度未満のもの
※3:麦芽重量が水以外の原料の25%未満でアルコール10度未満のもの
※4:第3のビールはここに該当

 

このように、不毛ないたちごっこの結果として、ビールと第3のビールの税率格差が2.75倍もあれば、店頭価格も相応に開いてしまう。
ビールの消費量が減少を続ける一方、低価格ビール風味飲料のシェアが拡大するのは至極当然と言えるし、メーカーが“売れる”第3のビール開発に注力するのも自然なことだと言える。

毎日新聞によれば、「自民党内では”税率の低さを狙って新商品を開発する慣行は改めるべきだ”との批判が拡大」していたという。

 

年末に決定される2015年度税制改正大綱に向けた酒税法改正案では、まず「発泡酒」と「第3のビール」を統合した上で税額を引き上げる方針だそうだ。
併せて「全体の税収が変わらないようにするため、ビールの税額については引き下げる方向(読売新聞報道)」だというが、要するに第3のビール等の低価格商品は価格が底上げされることを意味しているため、消費者にとっては「はい、そうですか」と二つ返事できないだろう。

メーカーにとっても、開発・販売戦略の大幅な見直しが必要となるうえ、現在の「売れ筋」の値上げを強制されることとなる。

 

なお、日経新聞は、「自民党税制調査会などはビールの減税で消費者の理解を得られるとみているが、第3のビールと発泡酒の価格が上がれば低価格志向の消費者が反発を強めかねず、見直し作業が難航する可能性もある」と指摘している。

同類のビール系飲料で大きな税率格差が存在していて、これを是正しようという考えには大いに賛同できる。
ただ、なんとかして、低価格帯のビール風味飲料の税率をそのままに維持しながら、ビールの税率のみを下げることができないものだろうか。

 

参考記事:
サッポロの極ZEROショックに見る酒税の仕組み
競馬払戻金に「宝くじ式課税」案浮上
低迷する住宅市場と相続税改正のハナシ
自動車取得税の代替で自動車燃費課税導入へ

 

本記事は、2014年10月29日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
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