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高齢者が降車時に骨折-これって自動車事故?

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自動車事故と自動車保険と運行起因性

2010年11月のある日、当時83歳の高齢女性がデイサービスセンターの送迎車に乗って帰ってきた。

送迎車が女性自宅前の”平坦な場所”に停車すると、デイサービスセンターの職員が当該女性の手を引いて送迎車のステップに誘導し、そこからそのままアスファルトの地面に降ろしたところ、骨粗しょう症を患って骨が脆くなっていた当該女性は弾みで右大腿骨を骨折する重傷を負ってしまった。

本来であれば、ステップと地面との間に適度な高さの踏み台を置いて高齢者を送迎車から降車させていたのに、その日は職員が横着してその手間を省いてしまったようだ。

結果、女性はその事故から1年半程の入通院を強いられ、2012年3月に症状固定と診断された。その2年後の2014年7月、女性は亡くなっている。

※症状固定とは、それ以上治療を続けても症状の改善が期待できないと判断される状態を表す、保険業界で使われる用語のこと。完治ではなく、症状固定と診断されることは、身体に後遺障害が残ってしまっていることを意味する。

 

女性が利用していたデイサービスセンターは送迎に利用していた車を被保険車両として、三井住友海上火災保険と搭乗者傷害特約付きの自動車保険契約を締結していた。

デイサービスセンター側が契約していた搭乗者傷害特約は、被保険車両の自動車事故に起因して搭乗者が傷害を負った場合に治療費等の損害を補償する保険であり、傷害の結果、後遺障害が残ってしまった場合は後遺障害保険金を支払う-という旨が定められていた。

 

送迎車の運行に起因した事故ではない

女性側は女性が亡くなる1年前の2013年7月、この搭乗者傷害特約に基づいて後遺障害保険金の支払いを求めていたが、女性が亡くなってしまったため、女性の相続人であるご子息が同保険金の支払いを求め、保険会社を相手取って提訴。

一審・二審は原告である女性親族側の請求が棄却されていたものの、親族側は上告し、訴訟の舞台は最高裁判所に移っていた。

事故は平成22年11月に発生。当時83歳の女性を業者が自宅に送った際、業者側が踏み台などを用意していなかったため、降車した女性が着地の衝撃で右足を骨折した。女性の家族が業者が加入していた自動車保険の適用を求めて、三井住友海上火災保険を提訴。1、2審はいずれも請求を棄却した。(引用元:2016年3月4日付け産経新聞)

2016年3月4日、最高裁判所第二小法廷が上告審判決で下した判断は、一審・二審同様、親族側の請求を退けるもので、これにより保険会社側の勝訴が確定した。

 

一審・二審同様、この事故が”送迎車の自動車事故”に起因するものではなく、デイサービスセンターの職員が安全注意義務を怠ったことに起因した事故であったことを、最高裁も裁判官全員一致の判決理由としている。

”送迎車の運行”に関わって起きたのではなく、危険のない”平坦な場所”に停車してから起きてしまった事故であり、かつ第三者のミスが主因の事故であるため、搭乗者傷害特約が定めるところの”自動車事故”ではないと判断。

よって当該女性は、この事故によって大腿骨を骨折し、後遺障害が残ってしまったとはいえ、三井住友海上火災保険との保険契約に基づく、後遺障害保険金等の請求権を有しているとはいえない-というわけだ。

※女性側は、搭乗者傷害特約に基づいて、女性の入通院費用として保険金50万円を受け取っていたが、三井住友海上火災保険側は不当利得返還請求権(民法第703条)に基づいてその50万円についても返還を求めて反訴していた。

 

”ただし、二審までの早急な決め付けには問題アリ”

当然といえば当然のようにも思える判決ではあるが、”ただし”である。

判決文には、「本件事故が本件センターの職員が安全配慮義務を怠ったことから発生したものであるとして直ちに本件における運行起因性を否定しており、この点の説示に問題はあるが、結論自体は是認することができる」とある。

”結論(=判決)はこうなったが、二審(=原審)までが「悪いのは安全配慮を欠いたデイサービス職員」であって、「保険契約車両の運行に起因したものではない」と早急に決め付けているのは、いささか問題がある”と指摘しているのだ。

判決は、今回の女性のけがは車の運行と関係がないとする一方、「第三者が関われば車の事故とは言えない」としてきた保険会社の支払い基準については「直ちに『関係がない』とはならない」とも指摘。車の事故に関係するかをめぐって、保険会社の支払い対象をより広くとらえる判断で、今後の保険金支払いに影響する可能性がある。(引用元:2016年3月4日付け朝日新聞)

 

この一文によって、”似たようなケースが起きてその責任所在で意見が食い違ったとしても、今回の最高裁判例をもって安易に判断を急ぐことのないよう”釘を刺した格好となっている。

似たようなケースであっても、詳細状況次第では保険事故扱いになり得ることもある-とうわけだ。

 

本記事は、2016年03月18日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
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