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AI(人工知能)の発達と法律家の未来

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マイクロソフト社のAIチャットロボット

 機械学習やディープラーニングといったキーワードとともにAIの研究が再び注目されています。自ら学習し、判断することを特徴としたよりAIの研究が進んでいるようです。

※今回は、自ら学習し判断する最近のAI研究の発達のなかで、法律と法律家の役割はどのように変わっていくのかということを現代の弁護士の立場から勝手に想像した内容になっています。筆者の参照文献として「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの」松尾豊(角川EBUP選書)など。

 

 今年のAI関連ニュースのなかでは、マイクロソフト社の開発したAIチャットロボット「Tay」がヘイト発言を学習して使用するようになったために開始後16時間で停止したというものです。

マイクロソフトは3月23日(米国時間)、新たな人工知能(AI)チャットロボット「Tay」を開始した。「人間と対話すればするほど賢くなるロボット」としてだ。しかし、開始してから16時間後の24日、Tayは停止された。問題発言を乱発したからだ。
 
(引用元:2016年3月25日付けWIRED「マイクロソフトのAI、ヘイト発言を「学習」して停止」

 

 「Tay」はユーザーとのチャット対話を通してコミュニケーションを学習していくAIロボットでしたが、“ヘイト発言をコミュニケーションで使用してはならない”といった人間社会における道徳・倫理(一部は法律となっています)を規範として持っていなかったばかりにヘイト発言を行うようになってしまったのではないでしょうか。

 

アシモフのロボット三原則は規範たりえるか

 AIが人間のような、または人間を超える学習能力と判断能力を身につける未来の世界では、AIが人間にとって有益なものとして社会に溶け込むために、AIが備えるべき一定の規範が必要にならないでしょうか。

 

 SF作家のアイザック・アシモフはその著作のなかでロボット三原則を示しました。

~ロボット三原則~
1.ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
2.ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
3.ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

 

 ロボット三原則は、ロボットの行動規範の一つとなり得るものですが、法律家の立場からするとより具体的な規範に落とし込む必要があるように思います。

 例えば、第一条の「危害」や「危険」の解釈の幅はありそうです。

 物理的な「危害」「危険」に限定されるのか、医療・治療に伴い身体侵襲行為とはどのように区別するのか、ロボットの行為と人間に及ぶ「危害」の因果関係をどこまで含めるのか、あらゆる可能性のある「危険」を看過してはならないのか、など具体化の余地は多いように思います。

※もちろん、現在の法律や判例で示された規範においても、一定程度具体的事情に応じた解釈・判断の範囲を残していますが、私たちの行動と判断の自由を確保するために、合法・違法が予測可能な程度の具体性を示すことが意識されています。

 

未来の法律家の一つの役割

 法律は、現在の社会を反映した人間が共存していくためのルールという側面も持っています。法律家は法律の知識と思考方法を使って社会の問題を予防・解決する専門家です。

 私たち法律家は、AIが普及する未来において、AIが人間社会に溶け込むための具体的な規範を設定し、これをAIに学習させる教師の役割や、AIの判断を事後的に評価する役割などを果たすこともできるのではないでしょうか。

 先にあげたAIチャットロボット「Tay」のように、AIに必要とされる規範の問題の片鱗はすでに顕れているように考えます。今後AIの能力が強化され活動領域が拡大するにつれて、AIに必要とされる規範は多くなり、その重要性も増してくるように思います。

 私自身、そのような未来も予想しつつ、社会の役に立つ仕事ができるよう研鑽を積んでいきたいと考えています。

※AIに要求される規範について、ある程度のコンセンサスが形成されていけば、AIに関して製造物責任における「通常有すべき安全性」や、瑕疵担保責任における「瑕疵」などの解釈も定まってくるのではないでしょうか。なお、AIが自立的な判断をするとしても、法的な責任主体ではないため、AIの判断や行動については製造業者や所有者等の自然人・法人が責任主体になるでしょう。どのような場合にAIの判断・行動について自然人・法人が責任を負うかということが問題となる場合もあるのではないでしょうか。

 

本記事は、2016年09月20日公開時点での情報です。個々の状況によっては、結果や数値が異なる場合があります。特別な事情がある場合には、専門家にご相談ください。
ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。


この記事のアドバイザー

yoshida 吉田秀平

弁護士

上場企業の総務・法務を担当した経験を活かして、中小企業、ベンチャー企業、スタートアップの支援をさせて頂きたく思っています。訴訟になる前に、リスクが顕在化する前に、低コストで高い効果の予防法務サービスを提供することが目標です。

  • 所属:しぶや総和法律事務所

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